著者
唐 成 張 誠
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.3-24, 2021-12-15 (Released:2022-01-07)
参考文献数
36

本論文は,家計負債が急速に拡大している中国において,家計の金融行動を決定する重要な要素の1つである金融リテラシーと家計の借入行動の関係を明らかにするものである。具体的には,CHFSデータを用いて金融リテラシーが実際の家計負債にどのような影響を及ぼしているかについて,負債目的(経営負債・消費負債・住宅負債)に注目して実証分析を行った。本論文の主なファインディングは以下のとおりである。(1)世帯主の金融リテラシーが高いほど,家計は負債を持つ傾向にある。他方,金融リテラシーが低いほど,過剰負債を負う可能性がある。(2)住宅負債に対しては,金融リテラシーは有意な影響を与えないことが示唆されるが,それは中国の住宅ローン市場が非競争的であるためである。(3)消費負債に対しては,金融リテラシーが強い正の影響を及ぼしているが,これは消費者金融市場が競争的であるためであり,家計の金融リテラシーが大きな影響を与えていると思われる。
著者
加藤 弘之 陳 光輝 厳 善平 日置 史郎 梶谷 懐 宝劔 久俊 唐 成 中兼 和津次 丸川 知雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、中国長江デルタの農村地域を対象として、企業の集中・集積、農地の流動化と不動産開発、出稼ぎ者の流入と定着の実態を、独自に収集したミクロデータの計量的分析を通じて明らかにした。また、空間経済学の手法に基づき、地理情報つき企業データを利用して産業集積地図を作成した
著者
陳 光輝 加藤 弘之 中兼 和津次 丸川 知雄 唐 成 加藤 弘之 梶谷 懐 大島 一二 陳 光輝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

個票データの利用や収集が容易ではない中国,かつその内陸部農村地域の調査を,四川省社会科学院農業経済研究所の協力を得て行い,同省江油市農村地域206戸×3年,同小金県農村158戸×3年のパネルデータ(3年間継続調査できたのは前者が142戸,後者は127戸)を構築した.中国内陸農村地域の成長・発展は沿海や都市部に比べて伸び悩み,利子補填融資,財政支援,雇用創出等の貧困支援策のほか,現在は「新農村建設」政策が打ち出されている.そうした環境下の住民行動を「開発のミクロ経済学」を理論ベースとして分析し,以下の知見が得られた.1.山間部にある小金県は貧困世帯が多いが,政府からの移転所得は必ずしも貧困家庭のほうが多くを受けとっておらず,貧困支援策がうまく機能していない可能性を示唆している.2.所得水準の低い小金県のほうが道路,電気,水道・水利,医療施設といったインフラの現状に対する満足度は低く,整備を望む度合いが高かった.3.小金県の農業は,より恵まれた江油市のそれに比べて土地生産性が低く,得られる所得も低いが,それ以上に小金県は出稼ぎを含む非農業所得がめだって小さい.4.小金県の出稼ぎが少ない理由として,土地利用権の保障や農家間で土地を貸し借りする制度が十分でなく,出稼ぎのリスクが大きくなっていることが考えられた.5.天候不順などの収入低下ショックに直面した場合,江油市農家は貯蓄の取り崩し,小金県農民は親戚・友人からの借り入れに頼る度合いが大きかった.6.教育の収益率は有意であった.