著者
嘉納 英明
出版者
名桜大学環太平洋地域文化研究所
雑誌
環太平洋地域文化研究 = Pacific Rim Studies (ISSN:24357510)
巻号頁・発行日
no.2, pp.45-54, 2021-07-09

本研究は,義務教育未修了者(昭和7年生~昭和12年生)の女性を対象に学齢児童生徒期における学校教育との関係についての聞き書きを分析したものである。彼女らは,沖縄戦によって学業が中断され,学校教育を受ける機会を剥奪されたばかりではなく,戦後は,混乱期の沖縄社会の中で,家族を支えるために学校教育を断念し働かざるを得なかった状況にあった。小学校及び中学校の義務教育を十分受けていないために,低学歴・低収入の中で生活に困難を抱える者もいれば,偶発的に基地従業員,あるいはバス会社の社員として雇用された者の生活は比較的安定した。だが,社会生活を営む中で,読み書きの能力を含む社会的スキルの未熟さを痛感し,義務教育を受けたいとする"学び"への渇望は常に持ち続けていた。それが,沖縄県の義務教育未修了者支援事業(学び直しの事業)への参加理由であった。
著者
嘉納 英明 竹沢 昌子 Kano Hideaki Takezawa Masako 名桜大学人間健康学部 Faculty of Human Health Sciences Meio University
出版者
名桜大学総合研究所
雑誌
名桜大学総合研究 (ISSN:18815243)
巻号頁・発行日
no.23, pp.23-31, 2014-03

沖縄県N市の被保護母子世帯の母親は,後期中等教育以降の教育機会を受けることが少なく,20代前半から婚姻関係に入り,子どもを複数名(平均2.9名)出産する傾向にある。また,結婚生活は長続きせず(平均7.4年),経済的困窮に留まりがちであるという実像が浮き彫りになった。一方,N市の生活保護ケースワーカーは,被保護母子世帯の子どもの悩みやストレスの有無,教育支援ニーズについて,十分に把握できていないことが明らかになった。とはいえ,日常的に被保護母子世帯と関わっている生活保護ケースワーカーや子どもの自立に向けた支援を行う社会支援員は,被保護母子世帯の経済力の問題,学習環境の問題,子どもの低学力の問題,学校不適応の問題,貧困の連鎖の問題等について認識しており,また危惧していた。この視点は,生活保護行政の立場からの見解であるが,あながち,被保護母子世帯の子どもの教育支援ニーズと無関係ではないと考えられる。M大学の教職履修生は,このような生活保護行政の見解に賛同し,被保護世帯の子どもへの学習支援をスタートさせた。今後,子どもの教育支援ニーズをより一層明らかにするために,さらに調査を進めていく必要がある。Single mothers on welfare in N city, Okinawa Prefecture, Japan, tend to have had fewer opportunities for higher education, become involved in marital relationships by their early 20's, and bear more than two children (2.9 average). Moreover, their marriages do not last for a long time (7.4 years average), and they are prone to remain in poverty. Welfare workers in N city have not perceived precisely the educational support needed by the children of single-mother households, their worries, or their stresses. However, some caseworkers who assist single-mothers and their children on a daily basis and a social supporter who guides children toward independence do recognize their financial problems, poor educational environment, declines in academic performances, school maladaptation, and chain reactions caused by poverty. Although these perceptions were given by caseworkers who are in welfare administration, they may reflect educational support needed by the children of single-mothers. M University students studying in teacher-training course endorsed the caseworkers' views and started volunteering as teachers for those children on welfare. In order to elucidate the needs of educational support more clearly, further investigation and research are necessary.
著者
嘉納 英明
出版者
名桜大学総合研究所
巻号頁・発行日
no.28, pp.149-155,

日本の人口減少問題に対する政策として海外からの移民の受け入れについて議論され始めている。移民の受け入れ政策は、日本社会の急速な多文化状況を生み出し、文化摩擦の懸念も指摘されている。一方、日本を多文化共生社会にするためには、教育を「多文化共生教育」として再構築することが急務であるとの指摘は説得的である。