著者
荒牧 英治 久保 圭 四方 朱子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.23, pp.1-6, 2014-07-25

言語能力は人生における経験の結晶であり,加齢によって損なわれることがないとされる.しかし,その一方で,文法能力など,一部の能力の加齢による低下が示されることもある.このように,老化と言語能力の関係については不明な点が多い.この原因は,次の 2 つによるところが大きい.まず,研究対象である高齢者から大規模なデータを得るのが困難であること.次に,言語はさまざまな能力の総体であり,調査ごとに測っている言語能力が異なることである.そこで,本研究では,Web 上の文章を利用する.まず,50 代から 80 代の高齢者や小中学生,第二言語習得者,認知症患者のブログや作文を集めた.また,測定に関しては,語彙に関するものや構文に関するものなど,さまざまな指標を用いた.この結果,高齢者は,使う言葉の種類が減る可能性があること,さらに,難易度の高い言葉から使用頻度が減ることが明らかになった.この知見を応用することによって,老化や認知症の早期発見の可能性があり,今後の応用が期待される.Preceding study claims that one's language abilities develop over long period of time and improve with age. On the other hand, some study reports that some parts of language abilities, such as grammatical ability, show some decrease in elder people. Since one's language ability is often shown as the aggregation of multiple human abilities, it is difficult to solely extract his/her language ability out of his/her written texts. This study, thus, analyzes texts by using multiple linguistic measures. The corpora cover school students (children attending primary to junior high school, age 6 to 15 years old), elders (age 50 to over 80 years old), Japanese as the Second Language learners, and a dementia patient (Alzheimer type). As a result, this study shows that the lexical richness decreases, and difficult vocabularies tend to be especially lost from elders. This study also displays the possibility of detecting dementia in its early stage.
著者
荒牧 英治 四方 朱子 冨井 美子 矢島 弘士
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-23, 2016 (Released:2017-05-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【背景】近年,多くの患者がSNSに参加し,彼らの体験を共有し,互いにサポートできる効果を期待しているが,その効果の検証は十分になされていない.本研究では,SNS参加者のうち,一定の利用がある患者とない患者について,QOLの変化を2時点に渡って調査し,積極的なSNS活動によって,QOLが好転するかどうかを調査した.【材料】LifePalette参加者27名について,積極的な活動を行うエキスパート患者(7名)と,行わない一般患者(20名)について,2014年7月と2015年3月の2点でSF36v2によるQOLの調査を行った.【結果】初回において,エキスパート患者は一般患者より社会的QOLが有意に低かった(p=0.04).2回目の調査では,一般患者の社会的QOLは有意に低下し(p=0.05),逆に,エキスパート患者の社会的QOLは有意でないものの僅かに上昇し,実験終了時には,一般患者とエキスパート患者の社会的QOLの有意差がなくなった.【考察】社会的QOLが低いユーザがエキスパート患者となっており,SNSに登録していても,活動を行わない場合,社会的QOLは低下する.これにより,SNSに入ったならば,SNS活動に積極的に参加することが,QOL低下を防ぐ一助となる可能性が示唆された.
著者
四方 朱子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.141-157, 2020-03-31

大江健三郎の初期短編の中に、「他人の足」(初出:『新潮』第54 巻第8 号、1957 年8 月)という脊椎カリエスの少年たちの物語があるが、このテクストは大江の文壇デビューの最初期に書かれているにもかかわらず、その後の大江小説の特徴を多く備えている。この短編を、その語り手が脊椎カリエス患者の当事者の一人称視点であることに注目し、分析することで、この短編が持つ複層的なゆらぎがもたらすリアリティを明らかにしたいと考える。
著者
荒牧 英治 久保 圭 四方 朱子
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2014-DBS-159, no.23, pp.1-6, 2014-07-25

言語能力は人生における経験の結晶であり,加齢によって損なわれることがないとされる.しかし,その一方で,文法能力など,一部の能力の加齢による低下が示されることもある.このように,老化と言語能力の関係については不明な点が多い.この原因は,次の 2 つによるところが大きい.まず,研究対象である高齢者から大規模なデータを得るのが困難であること.次に,言語はさまざまな能力の総体であり,調査ごとに測っている言語能力が異なることである.そこで,本研究では,Web 上の文章を利用する.まず,50 代から 80 代の高齢者や小中学生,第二言語習得者,認知症患者のブログや作文を集めた.また,測定に関しては,語彙に関するものや構文に関するものなど,さまざまな指標を用いた.この結果,高齢者は,使う言葉の種類が減る可能性があること,さらに,難易度の高い言葉から使用頻度が減ることが明らかになった.この知見を応用することによって,老化や認知症の早期発見の可能性があり,今後の応用が期待される.