著者
長谷 耕二 河村 由紀 田久保 圭誉 松田 幹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

申請者はこれまで、絶食時にはパイエル板の免疫応答はシャットダウンされ、抗原にまだ暴露されていないナイーブB細胞は骨髄へ移行して再摂食時までリザーブされる事実を見出している。このようなパイエル板の絶食応答は、免疫応答に伴うエネルギーコストを削減する上で重要であるとともに、胚中心細胞の消失による免疫記憶のリセットといった副次的作用をもたらす。本研究では、主に絶食-再摂食モデルを用いて、栄養シグナルによる免疫制御機構や腸管-骨髄連関を担う分子群の同定を試みる。さらに絶食により自己免疫に関わる免疫記憶をリセットすることで、自己免疫疾患における新たな治療法の確立を試みる。
著者
荒牧 英治 久保 圭 四方 朱子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.23, pp.1-6, 2014-07-25

言語能力は人生における経験の結晶であり,加齢によって損なわれることがないとされる.しかし,その一方で,文法能力など,一部の能力の加齢による低下が示されることもある.このように,老化と言語能力の関係については不明な点が多い.この原因は,次の 2 つによるところが大きい.まず,研究対象である高齢者から大規模なデータを得るのが困難であること.次に,言語はさまざまな能力の総体であり,調査ごとに測っている言語能力が異なることである.そこで,本研究では,Web 上の文章を利用する.まず,50 代から 80 代の高齢者や小中学生,第二言語習得者,認知症患者のブログや作文を集めた.また,測定に関しては,語彙に関するものや構文に関するものなど,さまざまな指標を用いた.この結果,高齢者は,使う言葉の種類が減る可能性があること,さらに,難易度の高い言葉から使用頻度が減ることが明らかになった.この知見を応用することによって,老化や認知症の早期発見の可能性があり,今後の応用が期待される.Preceding study claims that one's language abilities develop over long period of time and improve with age. On the other hand, some study reports that some parts of language abilities, such as grammatical ability, show some decrease in elder people. Since one's language ability is often shown as the aggregation of multiple human abilities, it is difficult to solely extract his/her language ability out of his/her written texts. This study, thus, analyzes texts by using multiple linguistic measures. The corpora cover school students (children attending primary to junior high school, age 6 to 15 years old), elders (age 50 to over 80 years old), Japanese as the Second Language learners, and a dementia patient (Alzheimer type). As a result, this study shows that the lexical richness decreases, and difficult vocabularies tend to be especially lost from elders. This study also displays the possibility of detecting dementia in its early stage.
著者
大久保 圭介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.91.19401, (Released:2020-09-15)
参考文献数
75

Issues concerning caregiving behavior in attachment theory have been overlooked, even though it is an essential factor of the theory. In this paper, we reviewed previous studies on caregiving to explore why there is a lack of research and to determine future directions. To begin, based on research pertaining to parent-child relationships and intimate adult relationships, we defined caregiving in the context of attachment theory. In addition, we outlined the idea of a behavioral system and an internal work model (IWM) that can become a basis of research, or a process of formation and development of the caregiving system and the IWM, including the problems to be investigated in future studies. Then, some problems in the research of intergenerational transmission of attachment and intimate adult relationships were suggested as the reason why the research on caregiving behavior has been delayed in attachment theory. Moreover, it was also indicated that the proximate occurrence mechanism of caregiving behavior was not clarified as a cause. We suggest a new model and some future directions.
著者
久保 圭 クボ ケイ
出版者
大阪大学日本語日本文化教育センター
雑誌
大阪大学日本語日本文化教育センター授業研究
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-31, 2014-03-31

日本語には、似た意味をもつさまざまな言葉がある。たとえば、「誤りを直すJという意味をもつ日本語のサ変名詞には、修正、是正、訂正、改鼠などがある。しかし、その意味的なニュアンスや用法(どのような対象における誤りを直すのか、など)は一律ではなく、すべて異なっていると考えられる。これは、上記に挙げた類義語がすべて同じ意味をもつのであれば、これほど多様な表現は必要ないと考えられるためである。上記のような類義語の使い分けの習得に関心を寄せる留学生は少なくないように感じられる。しかし、日本語の言語直感をもたない彼らにとって、その学習は困難をともなうものであるため、類似した意味の言葉を教授する際には、効果的な説明を準備しなくてはならないだろう。本論文では、日本語学習者に向けた教育の現場において、類似した意味をもついくつかの語の意味と使い分けを説明する際に、大規模コーパスから得られる、各類義語の共起関係に関する調査データの活用が有効であることを示唆する。
著者
小和板 仁 平沼 淳史 浅海 祐介 井口 暁洋 高橋 裕司 齊藤 哲也 大久保 圭子
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.275, 2011

【目的】<BR>片麻痺患者の中には非麻痺側への重心移動に抵抗を示し、立位や歩行、トランスファーが困難な症例を経験することがある。本症例も非麻痺側への重心移動時に抵抗を示した。Pusher現象とは症状が違い、視覚アプローチにより非麻痺側への重心移動に抵抗が軽減した一症例を経験したので報告する。<BR>【方法】<BR>79歳男性。意識レベルE4V5M6/GCS。左視床・頭頂葉など多発脳出血により右片麻痺を呈した。Brunnstrom Stage:V-V-V。表在・深部覚ともに軽度鈍麻。高次脳機能障害として空間認知障害などが見られた。坐位での非麻痺側への重心移動は抵抗がなかったが、立位では抵抗が見られた。本症例は坐位・立位において正中位にても左に傾いていると自覚症状があった。視覚・空間認知の評価に対して指鼻指試験及び閉眼立位保持(以下閉眼)、開眼立位は2つの方法(以下開眼鏡なし、開眼鏡あり)にて各条件において体重計を用い左に荷重してくださいと促した時の左下肢荷重量を測定した。また立位にて恐怖感があることから、上記の各条件下での恐怖感をNumerical Rating Scale(以下NRS)にて10段階で評価した。さらに網本らの使うPusher重症度分類を参考にした。<BR>【結果】<BR>Pusher重症度分類0点。指鼻指試験陰性。体重55kg、静止立位での左下肢荷重量30kg、閉眼での荷重量35kg、開眼鏡なしでの荷重量38kg、開眼鏡ありでの荷重量42kg。NRSにて閉眼7/10、開眼鏡なし6/10、開眼鏡あり5/10であった。<BR>【考察】<BR>本症例は左視床・頭頂葉出血により右片麻痺、高次脳機能障害を呈しADL能力の低下を認めた。視床・頭頂葉は上下肢からの情報や前庭からの情報などを統合して空間的に姿勢を保持するための機能があると言われている。結果より本症例は視覚認知は保たれていると思われる。坐位・立位にて正中位でも左に傾いているとのことから、姿勢空間認知に障害があり、非麻痺側への重心移動で抵抗を示したと思われる。諸家の報告ではPusher現象は同部位の障害で出現することがあると報告があるが、本症例ではPusher現象は見られない。Pusher現象を有する症例のアプローチとして視覚アプローチがあるが、症例の中には視覚により症状を増強させるという報告がある。本症例に鏡を使用したところ、結果から視覚アプローチが有効であったと思われる。これは鏡を使うことで姿勢を視覚的に捉えやすくなり、フィードバック機構が働いたためではないかと考え、本症例には視覚アプローチが有効であったと思われる。
著者
宮久保 圭祐
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.628-629, 2017-12-20 (Released:2018-06-01)
参考文献数
4
著者
大久保 圭介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.281-291, 2018
被引用文献数
4

<p>The Caregiving System Scale (CSS: Shaver, Mikulincer, & Shemesh-Iron, 2010) was recently developed measure designed to assess the individual differences in the caregiving internal working model. The purpose of the present study was to translate the CSS into Japanese (CSS-J) and evaluate its validity and reliability. To accomplish this, we conducted four studies. In Study 1 (<i>n</i> = 600), we translated the CSS and replicated its two-factor model based on confirmatory factor analysis. After that, in Study 2 (<i>n</i> = 315), we examined the correlations between the CSS and other variables for criterion-related validation. In Study 3 (<i>n</i> = 229), we determined that previous helping success or failure experiences influenced a person's current anxiety and avoidance levels, as measured by the CSS-J. In Study 4 (<i>n</i> = 31), we examined the test-retest reliability of the CSS-J among some participants from Study 3. The results of these four studies confirmed the validity and reliability of the CSS-J. We concluded that the CSS-J is useful for studying the various aspects of helping and attachment theory.</p>
著者
大久保 圭介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17211, (Released:2018-05-25)
参考文献数
30
被引用文献数
4

The Caregiving System Scale (CSS: Shaver, Mikulincer, & Shemesh-Iron, 2010) was recently developed measure designed to assess the individual differences in the caregiving internal working model. The purpose of the present study was to translate the CSS into Japanese (CSS-J) and evaluate its validity and reliability. To accomplish this, we conducted four studies. In Study 1 (n = 600), we translated the CSS and replicated its two-factor model based on confirmatory factor analysis. After that, in Study 2 (n = 315), we examined the correlations between the CSS and other variables for criterion-related validation. In Study 3 (n = 229), we determined that previous helping success or failure experiences influenced a person’s current anxiety and avoidance levels, as measured by the CSS-J. In Study 4 (n = 31), we examined the test-retest reliability of the CSS-J among some participants from Study 3. The results of these four studies confirmed the validity and reliability of the CSS-J. We concluded that the CSS-J is useful for studying the various aspects of helping and attachment theory.
著者
大久保 圭介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.14, (Released:2018-05-18)
参考文献数
26

本研究の目的は恋愛関係における自分磨き(self-improvement)に対する相互影響性を検討することである。アタッチメント理論に依拠して,恋愛関係にある参加者に対して,アタッチメントとケアギビングの傾向を測定し,Actor Partner Interdependence Model (APIM)の枠組みで分析を行った。結果より,アタッチメント回避が自身の自分磨きの成果に与える影響に加え,アタッチメントとケアギビングが相手の自分磨きの成果に与える影響がいくつか示された。さらに,女性の自分磨きの成果に対しては,女性のアタッチメント回避と男性のケアギビング過活性の交互作用効果も示された。したがって,恋愛関係においては,自分磨きの成果は男女のアタッチメントとケアギビングの相互的な影響によって規定されると考えられる。
著者
荒牧 英治 久保 圭 四方 朱子
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2014-DBS-159, no.23, pp.1-6, 2014-07-25

言語能力は人生における経験の結晶であり,加齢によって損なわれることがないとされる.しかし,その一方で,文法能力など,一部の能力の加齢による低下が示されることもある.このように,老化と言語能力の関係については不明な点が多い.この原因は,次の 2 つによるところが大きい.まず,研究対象である高齢者から大規模なデータを得るのが困難であること.次に,言語はさまざまな能力の総体であり,調査ごとに測っている言語能力が異なることである.そこで,本研究では,Web 上の文章を利用する.まず,50 代から 80 代の高齢者や小中学生,第二言語習得者,認知症患者のブログや作文を集めた.また,測定に関しては,語彙に関するものや構文に関するものなど,さまざまな指標を用いた.この結果,高齢者は,使う言葉の種類が減る可能性があること,さらに,難易度の高い言葉から使用頻度が減ることが明らかになった.この知見を応用することによって,老化や認知症の早期発見の可能性があり,今後の応用が期待される.
著者
須田 年生 馬場 理也 石津 綾子 梅本 晃正 坂本 比呂志 田久保 圭誉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

造血幹細胞ニッチと幹細胞動態の研究、ならびに幹細胞におけるDNA損傷反応に関する研究を展開し、しかるべき成果を得て論文発表すことができた。幹細胞ニッチに関する研究に関しては、Integrin avb3 が周囲の環境に応じて、サイトカインシグナルを増強することを通して、造血幹細胞の維持・分化を制御することを示した(EMBO J, 2017)。造血幹細胞の代謝に関連した研究では、造血幹細胞が分裂する直前に、細胞内カルシウムの上昇を通して、ミトコンドリアの機能が活性化することを見出した。さらに、造血幹細胞分裂直前の細胞内カルシウムが上昇をカルシウムチャネル阻害によって抑制すると、① 造血幹細胞の分裂が遅延すること、② 分裂後の幹細胞性の維持(自己複製分裂)に寄与することを示した。また、in vivo において、造血幹細胞周辺のMyeloid progenitor(lineage-Sca-1-c-kit+)細胞が細胞外アデノシンが造血幹細胞の細胞内カルシウムの上昇やミトコンドリア機能の制御に関与することも確認した。さらに興味深いことに、Myeloid progenitorは、上記の細胞外アデノシンによる造血幹細胞の与える影響を増強していることも見出している(JEM in Revision)。造血幹細胞におけるDNA 損傷反応における研究では、Shelterinと呼ばれるタンパク複合体の構成因子Pot1aが、造血幹細胞のDNA損傷の防止に加えて、活性酸素(ROS)の産生を抑制し、造血幹細胞の機能維持に寄与することを新たに明らかにした(Nat Commun, 2017)。
著者
田久保 圭誉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

造血幹細胞(HSC)はニッチと呼ばれる特殊な微小環境で維持される。本課題ではHSCは骨髄内骨膜近傍領域において低酸素状態で細胞周期を静止期にとどめていることを見出した。また、こうした性質の維持のためには低酸素応答因子HIF-1alphaとその蛋白を破壊するために必要なE3 ユビキチンリガーゼVHLが必須であり、HIF-1alphaが失われるとHSC は老化してストレス耐性を失った。一方、VHL欠損でHSCの細胞周期がより静止状態になったことから、HIF-1/VHL制御系の精密な制御はHSC維持に必須であることが示された。
著者
高橋 京子 川瀬 雅也 東 由子 廣川 和花 宮久保 圭祐 江口 太郎 原田 和生 村田 路人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

博物学的生薬資料並びに医療文化財に基づくプロファイル情報は、実地臨床使用の根拠を有し、伝統医療の国際化に伴う材料天然物の有効性・安全性・均一性を担保できる標準化インデックスであることを示唆した。江戸・享保期の薬種国産化政策の実践例として育種・栽培されてきた大和芍薬を対象に、網羅的元素分析(メタロミクス解析)とγ線を利用したメスバウワー効果測定法を構築し、原料生薬の品質が漢方薬(当帰芍薬散)の臨床効果に反映することを明らかにした。