著者
江渡 浩一郎 土井 裕人
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.666-675, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

筆者らはユーザー参加型研究の場として2011年11月にニコニコ学会βを立ち上げ,所期の5年間の活動期間を終えて次の段階に移行することになった。この間,全9回の総計・約65万人がインターネットで視聴した大規模なシンポジウムを開催して科学技術コミュニケーションに新展開をもたらした。中でも特筆すべきはニコニコ学会βが共創型イノベーションを創出する場となったことである。それを実現する方法論がアンカンファレンスとハッカソンなどといった共創型イベントであり,日常的なマインドから参加者を解放して新たなアイデアを生み出すことに成功している。以上のようなニコニコ学会βの成果は,「共創的科学技術イノベーションの推進」として第5期科学技術基本計画に反映され,文科省の参考資料に取り上げられることとなった。筆者らはニコニコ学会βを先駆的事例として,共創による科学技術イノベーションを今後よりいっそう積極的に後押ししたいと考えている。
著者
土井 裕人
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.559-579, 2003-12-30 (Released:2017-07-14)

神義論の問題は古今東西の宗教思想に通底する大きな問題であり、古代ギリシアにおいても同様であったと考えられる。本稿は、プラトンの神義論を広い意味での受苦の問題として考察する。プラトンにおける神義論は、『法律』第一〇巻において、「神々は人間に配慮しない」という不敬虔な説に対する反論として見出される。この説は悪人の栄華を神々の無関心の証拠として挙げるため、万物に対する神々の配慮と、悪人の栄華が羨むに値しないことが説得としての反論によって示される。具体的には、神々の配慮として応報的な綻が工夫され、悪人は悪人同士で寄り合わされて傷つけ合うという罰を受けていることが述べられている。従来の解釈は、神義論的問題に対するプラトンの回答を、この一種の自動装置の提示と見てきた。しかし、プラトンの神義論にはそれ以上の拡がりがあるのではないか、というのが本論の主旨である。
著者
土井 裕人
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.85(2006-CH-071), pp.17-23, 2006-07-28

本報告が試みるのは,UML(Unified Modeling Language 統一モデリング言語)という手法により宗教思想のテキストをモデリングして図示し,比較研究に応用することである.UMLには不十分な点も少なくないが 統一的な表記法に基づく図示によって概念を共有し,違った立場の人々の円滑なコミュニケーションと問題解決を計る趣旨を持つ.これは思想研究などへの応用を考えた場合,興味深いものとなろう.