著者
江渡 浩一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.489-501, 2012-10-01 (Released:2012-10-01)
参考文献数
24
被引用文献数
2

ユーザー生成コンテンツの世界には多種多様なコンテンツが存在しており,中にはユーザーが創意工夫によって新技術を開発し,独創的なシステムを作り上げたものもある。そのような事例の中には研究として高く評価しうる内容が含まれていることもあるが,従来は研究者コミュニティーとの接点は薄く,埋もれた存在となっていた。そこで,ユーザー参加型という理念を基本とした新しい学会「ニコニコ学会β」を立ち上げ,プロフェッショナルとアマチュアが共に研究発表を行う場を作り上げた。2011年12月に第1回のシンポジウムを開催し,2012年4月には第2回のシンポジウムを開催した。本稿では,背景と理念,および開催したシンポジウムの概要について解説する。
著者
江渡 浩一郎 高林 哲 増井 俊之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.5-11, 2004-11-11
参考文献数
10
被引用文献数
4

メーリングリストはグループ・コミュニケーションにおいて一般的であるが,送られたメールは通常はユーザが保持するだけであり共有されない.また送られたメッセージを編集してまとめることはできない.WikiWikiWeb(Wiki)はWeb上で情報を編集・共有するための柔軟で使いやすいシステムであるが,通常は編集履歴を保持せず,また誰が編集したのかはわからない.本論文では,この両者の長所を統合した新しいグループ・コミュニケーション・システムqwikWebを提案する.qwikWebは,メールを送信するだけで新しいメーリングリストを作ることができ,同時に対応するWikiサイトが作成される.全てのメールはWikiページとして蓄積され,通常のWikiページと同じように編集できる.ユーザは特別な管理を必要とせずに,メーリングリストとWikiの両方の機能を同時に活用することができる.
著者
沢田 洋平 江渡 浩一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.208, pp.27-32, 2008-09-09
被引用文献数
1

様々なWebページの構造情報を,不特定多数のユーザの集合知によって収集・利用する手法(SITEINFO方式)を提案する.これにより,多種多様なWeb上の膨大な情報を,外部のアプリケーションから柔軟に利用できるようになる.インターネット上の誰でも編集可能なデータベース(wedata)の構築・運用を行い,SITEINFOを利用するアプリケーション(Auto Pagerize)を開発し,1年7ヶ月で821件の構造情報を収集することができた.本論文では,SITEINFO方式の基本思想,システムの実装,運用によって得られた知見について述べる.
著者
江渡 浩一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.1127-1133, 2011-08-15

建築家Christopher Alexanderによって提唱された建築設計手法パターンランゲージは,建築業界において大きな反響を巻き起こしたにもかかわらず,定着しなかった.後に,Kent BeckとWardCunninghamという2人の研究者によってソフトウェア業界へその方法論が導入され,結果として,デザインパターン,アジャイルソフトウェア開発,Wikiなどといった成果として花開いた.本稿では,パターンランゲージの誕生から現在のソフトウェアパターンへの応用に至るまでの歴史を概観する.
著者
江渡 浩一郎 土井 裕人
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.666-675, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

筆者らはユーザー参加型研究の場として2011年11月にニコニコ学会βを立ち上げ,所期の5年間の活動期間を終えて次の段階に移行することになった。この間,全9回の総計・約65万人がインターネットで視聴した大規模なシンポジウムを開催して科学技術コミュニケーションに新展開をもたらした。中でも特筆すべきはニコニコ学会βが共創型イノベーションを創出する場となったことである。それを実現する方法論がアンカンファレンスとハッカソンなどといった共創型イベントであり,日常的なマインドから参加者を解放して新たなアイデアを生み出すことに成功している。以上のようなニコニコ学会βの成果は,「共創的科学技術イノベーションの推進」として第5期科学技術基本計画に反映され,文科省の参考資料に取り上げられることとなった。筆者らはニコニコ学会βを先駆的事例として,共創による科学技術イノベーションを今後よりいっそう積極的に後押ししたいと考えている。
著者
江渡 浩一郎 沢田 洋平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

我々は、多数のデータを利用者が登録・編集可能にする集合知データベース「Wedata」を構築・運用している。ユーザはWebサイトの構造情報などのデータを抽出・登録し、日々変化する情報を統一的な手法で操作可能となる。現在125種類、総数41,000件以上のデータが登録されており、2010年12月に2427万件のアクセスを得ている。本論文では、Wedataの構築・運用及び利用状況についてまとめる。
著者
平林 幹雄 江渡 浩一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.29-37, 2007-03-15

全文検索システムの転置索引を実現するにあたり,テキストデータからN-gram法によって切り出したトークンを検索キーにする手法が広く用いられている.この手法には,言語中立性や再現率の完全性という利点がある反面,索引ファイルのサイズが肥大化して空間効率が悪化するという欠点がある.検索の際にクエリから切り出した各トークンが対象文書のテキスト内でも連接しているかどうかを判断するためには,索引ファイル内にトークンの文書内での出現位置を記録しておくことが必要となるが,この位置情報が索引ファイルの肥大化の一因となっている.本稿では,N-gram法の欠点である索引ファイルの空間効率を改善する手法として,N.M-gram法を提案する.N.M-gram法では,各トークンの文書内での位置情報のかわりに後続のトークンのハッシュ値を用いることによって,N-gram法の利点である言語中立性や再現率の完全性を保持したまま,空間効率を改善することができる.When constructing inverted index for full-text search system, using N-gram is very popular for tokenizing text data of target documents. Although the method has many advantages like language neutrality and perfect recall ratio, it has also shortage that the index file becomes large. The tokens extracted from documents tend to be enormous. The system needs to record each offset of tokens into the index file because the offset is used for checking adjacency of tokens. The index file tends to be large because of the offset. In this paper, we describe N.M-gram method, which improves space efficiency of N-gram. The method uses hash values of succeeding tokens instead of offset in each document. The method can improve space efficiency without losing advantages of N-gram.
著者
江渡 浩一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.41, pp.11-18, 2007-05-11

WikiWikiWeb (Wiki)は、1995年にウォード・カニンガムによって開発された Web 上の情報共有システムである。Wiki は建築家クリストファー・アレグザンダーによるパターンランゲージの概念から考え出されたシステムであり、利用者が設計に参加できるようにするという目的が存在していた。また、同じ出発点を持つ方法論として XP (エクストリーム・プログラミング)があり、両者は目的設定において非常に近い関係にある。本論では、ウォード・カニンガムが Wiki を作り上げた経緯を出発点とし、どのように Wiki が発展していったのかを概観することによって、Wiki が本来持っていた目的とは何かを明かにすることを試みる。WikiWikiWeb (Wiki) is an information sharing system on the Web developed by Ward Cunningham in 1995. Wiki is derived from pattern languages proposed by Christopher Alexander, a building architect. The original goal of Wiki is helping users participate in design processes. The XP (Extreme Programming), a methodology for software development, also has similar backgrounds and goals. In this paper, I describe the history of Wiki and try to confirm the original goal of Wiki.
著者
平林 幹雄 江渡 浩一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.78, pp.215-222, 2006-07-13
被引用文献数
1

全文検索システムの転置インデックスを実現するにあたり,テキストデータからN-gram法によって切り出したトークンを検索キーにする手法が広く用いられている.この手法には,言語中立性や再現率の完全性という利点がある反面,検索対象の文書群から抽出するトークンの数が膨大になるために,転置インデックスのサイズが肥大化して空間効率が悪化するという欠点がある.検索の際にクエリから切り出した各トークンが対象文書のテキスト内でも連接しているかどうかを判断するためには,転置インデックス内にトークンの文書内での出現位置を記録しておくことが必要となるが,この位置情報が転置インデックスの肥大化の一因となっている.本稿では,N-gram法の欠点である転置インデックスの空間効率を改善する手法として,N.M-gram法を提案する.N.M-gram法では,各トークンの文書内での位置情報のかわりに後続のトークンのハッシュ値を用いることによって,N-gram法の利点である言語中立性や再現率の完全性を保持したまま,空間効率を改善することができる.When constructing inverted index for full-text search system, using N-gram is very popular for tokenizing text data of target documents. Although the method has many advantages like language neutrality and perfect recall ratio, it has also shortage that the inverted index becomes large. The tokens extracted from documents tend to be enormous. The system needs to record each offset of tokens into inverted index because the offset is used for checking adjacency of tokens. The inverted index tends to be large because of the offset. In this paper, we describe N.M-gram method, which improves space efficiency of N-gram. The method uses hash values of succeeding tokens instead of offset in each document. The method can improve space efficiency without losing advantages of N-gram.
著者
江渡 浩一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.496-498, 2017-05-15
著者
江渡 浩一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_140-2_157, 2012-04-25 (Released:2012-05-20)

グループによる共同作業を支援するシステムとして,メーリングリストとWikiを統合したコラボレーションシステムqwikWebを実装した.本システムは,人々が一般的に利用する電子メールをコミュニケーションの媒体として用い,そこにコラボレーションのためのシステムとしてWikiを組み合わせることによって,知識の集約・構造化をシームレスに行えるようにした.本論文では,コラボレーションシステムに関わる背景から,設計,実装に係る知見を述べる.
著者
江渡 浩一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.489-501, 2012

ユーザー生成コンテンツの世界には多種多様なコンテンツが存在しており,中にはユーザーが創意工夫によって新技術を開発し,独創的なシステムを作り上げたものもある。そのような事例の中には研究として高く評価しうる内容が含まれていることもあるが,従来は研究者コミュニティーとの接点は薄く,埋もれた存在となっていた。そこで,ユーザー参加型という理念を基本とした新しい学会「ニコニコ学会β」を立ち上げ,プロフェッショナルとアマチュアが共に研究発表を行う場を作り上げた。2011年12月に第1回のシンポジウムを開催し,2012年4月には第2回のシンポジウムを開催した。本稿では,背景と理念,および開催したシンポジウムの概要について解説する。
著者
緒方 淳 後藤 真孝 江渡 浩一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.11, pp.41-46, 2007-02-09
被引用文献数
7

本稿では、ポッドキャストを検索できる Web サービス「PodCastle」を実現するための音声認識手法について述べる。ポッドキャストでは多様な内容が異なる環境で録音されており、多数の未知語を含む新たな話題も多いため、従来の音声認識システムで適切に認識するのは困難だった。この問題を解決するために、本研究では、Web 2.0 によって得られる様々なデータを用いることによって、継続的に、音声認識システムを改善していく。具体的には、各ポッドキャストの内容に応じた言語モデルの話題適応、Web 2.0 のサービスを通じた単語発音の自動獲得、PodCastle 上でのユーザが音声認識誤りを訂正した結果を用いた未知語の学習等を試みた。実際にポッドキャストを対象とした認識実験を行い、性能向上に有効であることを確認した。This paper describes speech recognition techniques that enable a web service "PodCastle" for searching podcasts. Most previous speech recognizers had difficulties dealing with podcasts because they include various contents recorded in different conditions and new topics with many out-of-vocabulary words. To overcome such difficulties, we continuously improve speech recognizers by using information aggregated on the basis of Web 2.0. For example, the language model is adapted to a topic of the target podcast on the fly, the pronounciation of unknown words is obtained from a Web 2.0 service, and out-of-vocabulary words are automatically acquired by analyzing user corrections of speech recognition errors on PodCastle. The experiments we report in this paper show that our techniques produce promising results for podcasts.
著者
江渡 浩一郎 高林 哲 増井 俊之
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.115(2004-HI-111), pp.5-11, 2004-11-11

メーリングリストはグループ・コミュニケーションにおいて一般的であるが,送られたメールは通常はユーザが保持するだけであり共有されない.また送られたメッセージを編集してまとめることはできない.WikiWikiWeb (Wiki) はWeb 上で情報を編集・共有するための柔軟で使いやすいシステムであるが,通常は編集履歴を保持せず,また誰が編集したのかはわからない.本論文では,この両者の長所を統合した新しいグループ・コミュニケーション・システムqwikWeb を提案する.qwikWebは,メールを送信するだけで新しいメーリングリストを作ることができ,同時に対応するWiki サイトが作成される.全てのメールはWiki ページとして蓄積され,通常のWiki ページと同じように編集できる.ユーザは特別な管理を必要とせずに,メーリングリストとWiki の両方の機能を同時に活用することができる.
著者
橋田 浩一 和泉 憲明 江渡 浩一郎 澤井 雅彦
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

センサの特性やデータ形式が異なる多様なデータを集合知に基づいて効率良く正規化する(センサデータを補正しデータ形式を統一する)仕組み(集合的標準化)と、個人が本人のデータを自ら蓄積・管理しサービス提供者に開示してサービスを受けるための個人のスマートフォンのアプリ(個人生活録)を用いて、個人のプライバシとサービス選択の自由を保証しつつ、空間放射線の被曝に関するリスクを管理するサービスについて述べる。
著者
江渡 浩一郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.1127-1133, 2011-08-15

建築家Christopher Alexanderによって提唱された建築設計手法パターンランゲージは,建築業界において大きな反響を巻き起こしたにもかかわらず,定着しなかった.後に,Kent BeckとWardCunninghamという2人の研究者によってソフトウェア業界へその方法論が導入され,結果として,デザインパターン,アジャイルソフトウェア開発,Wikiなどといった成果として花開いた.本稿では,パターンランゲージの誕生から現在のソフトウェアパターンへの応用に至るまでの歴史を概観する.
著者
江渡 浩一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.421-426, 2019-04-15

ニコニコ学会βは,2011年に発足した「ユーザ参加型研究」の世界の実現を目指した活動である.5年間の期間限定の取り組みであり,そこから多数の派生団体やイベントが生まれている.その背景として,市民科学や「暮しの手帖」の影響があり,一般市民による科学の歴史を踏まえ,現代のインターネット技術を用いたアップデイトを試みた.ユーザ参加型研究は,ユーザによるイノベーションの可能性を追及する「共創型イノベーション」へと発展した.現在では,第5期科学技術基本計画の共創的科学技術イノベーションや,欧州のオープンイノベーション2.0における産官学民の4重螺旋モデルなど,似通った概念が登場してきている.