著者
高山 憲之 鈴村 興太郎 青木 玲子 玄田 有史 小椋 正立 小塩 隆士 土居 丈朗 原 千秋 臼井 恵美子 清水谷 諭
出版者
公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2010-04-21

近年、年金をはじめとする世代間問題が緊急性の高い重大な社会問題の1つとなっている。本研究では、くらしと仕事に関するパネル調査等、各種の実態調査を実施して世代間問題の内実を的確に把握した一方、経済理論を駆使して世代間問題の本質をえぐりだした。そして世代間対立を世代間協調に転換するための具体的アイデアを提示した。
著者
土居 丈朗 別所 俊一郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.311-328, 2005 (Released:2022-07-15)
参考文献数
36
被引用文献数
4

地方債は,地方税,地方交付税交付金や国庫支出金とともに,国と地方の財政関係の一環として運営されている。地方債の元利償還金は地方交付税交付金額算出の基礎となる基準財政需要額の算定に影響を与え,地方交付税を通じた異時点間・地域間の所得再分配が明示的に行われている。本稿では,とくに地方交付税交付金を通じた元利償還金の補塡による財政移転に着目する。本稿の目的は,元利償還への補給の規模を明らかにするとともに,このような措置が地方政府の行動に与えた効果について計量的に分析することにある。そのために,これまで利用されることの少なかった基準財政需要の内訳のデータを用いた分析を行った。地方交付税交付金を通じた明示的な地方債の元利補給については,その規模が近年では交付税交付金の30%,公債費支出の40%をこえる規模に達していることが示された。また,このような元利補給が地方債発行を誘導していることが示唆された。
著者
土居 丈朗
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.15-29, 2012-04

我が国の税制改革論議の中で, 消費税増税とともに, 法人課税が国際的にみて負担が重いとの議論がある。しかし, 消費税の増税と法人税の減税という政策パッケージは政治的に受け入れられないとの見通しもある。その背景には, 消費税は主に消費者が負担し, 法人税は主に法人(関係者)が負担するとの直感があるが, これは法人税の転嫁と帰着の問題であり, 学術的な研究の裏づけが明確に示されないまま主張が展開されているように思われる。こうした現状から, 本稿では, 法人税負担の転嫁と帰着について, 客観的な分析を可能にする動学的一般均衡理論を構築した上で, シミュレーション分析を試みた。本稿で採用したパラメータの値の下では, 法人税の負担は, 短期的(1年目)には約10~20%が労働所得に帰着し, 約80~90%が資本所得に帰着するが, 時間が経つにつれて労働所得に帰着する割合が高まり, 長期的には100%労働所得に帰着することが示された。また, 資本分配率, 割引率, 資本減耗率などによって, 法人税負担の帰着の時間的経過が影響を受けることも示された。The incidence of corporate income tax is both an old and a new problem in public economics. In this paper, we utilize the dynamic general equilibrium model to analyze the incidence of the burden of corporate income tax and explain the intertemporal incidence. By building a dynamic macroeconomic model, we are able to analyze not only the instantaneous incidence of corporate income tax but also consider the intertemporal incidence. This dynamic macroeconomic model includes households' maximization of lifetime utility and firms' profit maximization.We implement a simulation based on the dynamic macroeconomic model with plausible parameters, and measure the incidence of corporate income tax on labor income.In the short run (for the first year), the incidence on labor income is approximately 10-20% and roughly 80-90% on capital income. In the long run, however, the burden borne by labor income gradually increases to 100%.論説