著者
高山 憲之 鈴村 興太郎 青木 玲子 玄田 有史 小椋 正立 小塩 隆士 土居 丈朗 原 千秋 臼井 恵美子 清水谷 諭
出版者
公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2010-04-21

近年、年金をはじめとする世代間問題が緊急性の高い重大な社会問題の1つとなっている。本研究では、くらしと仕事に関するパネル調査等、各種の実態調査を実施して世代間問題の内実を的確に把握した一方、経済理論を駆使して世代間問題の本質をえぐりだした。そして世代間対立を世代間協調に転換するための具体的アイデアを提示した。
著者
深尾 京司 宮川 努 川口 大司 阿部 修人 小塩 隆士 杉原 茂 森川 正之 乾 友彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

無形資産推計を含む新しい日本産業生産性(JIP)データベース等を完成させ、OECDやEU KLEMSなど海外組織と連携しながらサービス産業生産性の決定要因を分析した。その結果、近年のサービス産業における労働生産性停滞の主因が人的・物的資本蓄積の著しい低迷や人材の不活用、市場の淘汰機能の不足にあることを明らかにした。また医療、教育、建設、住宅等のアウトプットの質を計測する手法を開発し、非効率性の原因を探った。4つのテーマについて主に以下の分析を行った。①統括・計測:サービス産業の生産性計測と生産性決定要因の分析、各産業の特性を考慮した上での非市場型サービスの質の計測、ミクロデータによる生産性動学分析、②生産と消費の同時性:応募時に計画した、余暇とサービス消費の不可分性を考慮した効用関数の推計、③資本蓄積:産業レベルの無形資産データの作成とそれを利用した分析、および無形資産と有形資産間の補完性の分析、④労働・人的資本:教育や医療サービスが労働の質を高めるメカニズムの研究と、個人の生産性計測、サービス購入と労働供給の関係の分析。これらの具体的な成果は、下記に纏めた。深尾京司編(2021)『サービス産業の生産性と日本経済:JIPデータベースによる実証分析と提言』東京大学出版会、423頁;第1章深尾他、第2章深尾・牧野、第3章宮川・石川、第4章川口・川田、第5章森川、第6章阿部・稲倉・小原、第7章杉原・川淵、第8章乾・池田・柿埜、第9章小塩他、第10章深尾他、第11章中島、終章深尾。
著者
小塩 隆士 浦川 邦夫
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.42-55, 2012-01

幸福感や健康感など主観的厚生は,自らの所得水準だけでなく他人の所得との相対的な関係によっても左右されると考えられる.本稿では,この「相対所得仮説」が日本においてどの程度当てはまるかを大規模なインターネット調査に基づいて検証する.具体的には,性別・年齢階級・学歴という3つの個人属性に注目して合計40の準拠集団を定義し,自らの所得と準拠集団内の平均所得との差が幸福感・健康感・他人への信頼感とどのような関係にあるかを調べる.さらに,最後に通った学校の同級生の平均年収の推計値との比較など,主観的な相対所得の重要性についても検討する.推計結果は全体として相対的所得仮説と整合的だが,(1)女性は男性と異なり,本人所得ではなく世帯所得の格差を気にしていること,(2)健康感や他人に対する信頼感は幸福感より相対所得,とりわけ準拠集団の平均所得を下回る状況に敏感に反応すること,などが確認された.
著者
小塩 隆士 宮尾 龍蔵
出版者
公益財団法人 NIRA総合研究開発機構
雑誌
NIRAオピニオンペーパー
巻号頁・発行日
vol.45, pp.1-6, 2019

現在の日本社会が直面している、低成長・人口減少という転換期を乗り越えるためには、整合性のある政策を実施することが必要不可欠である。しかし、公表されている政府試算を見るだけでは、経済社会の望ましい将来像を描き、その実現に必要な政策を整合的な形で検討することは極めて難しい。内閣府が公表している「中長期試算」では2028年度までの経済財政状況の展望を示しているが、歳出内容や、個別歳出の性質に応じた抑制の程度について明示的に議論されていない。また、内閣官房など4府省による「社会保障見通し」も、その裏付けとなる財政の展望が示されていない。厚生労働省の「年金の財政検証」では、2115年度までの年金財政を検証しているが、それと密接な関係にある財政や社会保障全体の展望は示されていない。本来であれば、財政や社会保障全体について、その将来像や持続可能性の分析が一体的に行われなければならない。そこでわれわれが政府の経済前提を用いて将来の財政状況を試算したところ、政府の債務残高対名目GDP比は上昇を続け、財政収支の長期的な持続可能性が十分に確保されていないことが明らかとなった。中長期的な社会保障制度の見直しを検討する上で、今の政府の各試算では不十分であり、マクロ経済や財政状況に与える影響を定量的に分析し、長期的な視野で整合的に議論することが不可欠である。