- 著者
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小塩 隆士
浦川 邦夫
- 出版者
- 岩波書店
- 雑誌
- 経済研究 (ISSN:00229733)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.1, pp.42-55, 2012-01
幸福感や健康感など主観的厚生は,自らの所得水準だけでなく他人の所得との相対的な関係によっても左右されると考えられる.本稿では,この「相対所得仮説」が日本においてどの程度当てはまるかを大規模なインターネット調査に基づいて検証する.具体的には,性別・年齢階級・学歴という3つの個人属性に注目して合計40の準拠集団を定義し,自らの所得と準拠集団内の平均所得との差が幸福感・健康感・他人への信頼感とどのような関係にあるかを調べる.さらに,最後に通った学校の同級生の平均年収の推計値との比較など,主観的な相対所得の重要性についても検討する.推計結果は全体として相対的所得仮説と整合的だが,(1)女性は男性と異なり,本人所得ではなく世帯所得の格差を気にしていること,(2)健康感や他人に対する信頼感は幸福感より相対所得,とりわけ準拠集団の平均所得を下回る状況に敏感に反応すること,などが確認された.