著者
長沢 浩平 山内 保生 横田 英介 仁保 喜之
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.246-252, 1990-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18

結核菌は宿主の免疫系に何らかの影響を及ぼしうることが知られている.そこで全身性自己免疫疾患の代表である全身性エリテマトーデス(SLE)の病態が,結核の罹患によって変化するか否かを検討した.昭和54年より同63年までの10年間に当科に入院したSLE患者213名のうち結核に罹患したのは5名(2.2%)であった.このうち3名は結核罹患により, SLEの病態に大きな変化はみられなかった(2名:不変, 1名:軽度悪化).これに対し,比較的重症の粟粒結核に罹患した2名のSLE患者では,結核発症3~6ヵ月の間に尿蛋白およびRA-Tの陰性化,抗核抗体および抗DNA抗体価の低下など明らかなSLEの改善がみられた.このSLEの軽快はSLEに対する治療や自然経過によるものではなく,結核罹患による影響と考えられた.このように,重症で全身に結核菌が播種されるような粟粒結核では, SLEの病態が改善することもありうることが示唆された.
著者
尾﨑 牧子 西山 記子 二宮 早苗 土手内 靖 谷松 智子 西山 政孝 西﨑 隆 藤﨑 智明 横田 英介
雑誌
松山赤十字病院医学雑誌 (ISSN:03853888)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.67-73, 2010-12

症例は62歳、男性。交通事故に伴う膵損傷による後腹膜膿瘍により炎症が持続していた。2007年10月5日、Hb5.3g/dlの貧血に対して赤血球濃厚液2単位を輸血した。輸血開始20分後、多量の発汗と手背・足背に発赤を認めた。下顎呼吸となり、意識消失、呼吸が停止、脈は触知せず、心電図はPEA(無脈性電気活動)となった。直ちに輸血を中止し、心マッサージと気管内挿管、エピネフリン、塩酸ドパミン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム投与にて蘇生した。2日後、再度赤血球濃厚液2単位を輸血した。開始35分後、発赤・熱感が出現し、血圧低下と、頻脈を認めた。輸血後、総IgE量およびトリプターゼが上昇しており、アナフィラキシーショックと診断した。これら2本の赤血球濃厚液は、副作用を認めなかった過去の製剤とは異なるメーカーの血液バッグ、および白血球除去フィルターを使用しており、特に白血球除去フィルターの膜材質が異なっていたことから、この膜材質が原因と考えられたが、確定はできなかった。以後の赤血球輸血32単位は、すべてこの膜材質以外の製剤を洗浄して輸血し、副作用を認めなかった。(著者抄録)
著者
柏戸 佑介 吉田 健志 押領司 健介 鎌田 一億 水木 伸一 横田 英介
雑誌
松山赤十字病院医学雑誌 (ISSN:03853888)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.69-74, 2013-12

trisomy 8の出現に伴って腸管ベーチェット病様の病態を呈したと考えられる骨髄異形成症候群の一例を経験した。手技的に止血困難な大腸の潰瘍性病変に対してadalimumab(ADA)の投与を行い、潰瘍性病変の改善傾向と下部消化管出血の改善を認めた。腸管型ベーチェット病に対するADAの有効性は報告されているが、骨髄異形成症候群に合併したベーチェット病に対するADAの投与報告はない。最終的には感染症で死亡したが、治療反応性を認めており、選択肢の一つとして検討可能と考えられた。(著者抄録)
著者
大久保 智恵 藤崎 智明 横田 英介 川崎 啓祐 大城 由美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2598-2600, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
3

Whipple病は放線菌近縁のグラム陽性桿菌Tropheryma whipplei(T. whipplei)感染により多彩な臨床症状を生じる全身感染症である.1907年の1例目の報告以来,世界各地から1,000例程度の報告があるが,中年以降の白人例が多く,本邦からの報告はまれである.当科に原因不明の遷延性下痢・低蛋白血症のため入院し,十二指腸生検の病理所見からWhipple病と診断し,抗菌化学療法で劇的な改善を認めた1例を経験した.Whipple病は抗菌薬がない時代は致死的疾患であったが,現在は抗菌療法で治療可能である.しかし,現在でも診断,治療が遅れると予後不良となるため,本邦においても留意すべきと考え報告する.