著者
甘佐 京子 長江 美代子 土田 幸子 山下 真裕子
出版者
滋賀県立大学人間看護学部
雑誌
人間看護学研究 (ISSN:13492721)
巻号頁・発行日
no.9, pp.99-105, 2011-03

背景 精神疾患,なかでも統合失調症については,精神病未治療期間(以後DUP : duration of untreatedpsychosis)が長いほど回復までに時間を要し,再発率も高いといわれている。そこで, DUPを少しでも短縮し,早期に医療に繋げていくこと(早期介入)が重要である。統合失調症の前駆症状(暴力・攻撃性・強迫症状・抑うつ等)は,好発年齢とされる10代後半から20代前半より,さらに2~4年前に出現すると言われており,日本では中学生の時期にあたる。中学校おいて,こうした前駆症状はしばしば問題行動ととらえられるが,早期の医療的介入が必要である。 目的 精神疾患が疑われる生徒に対し,学校現場ではどのような対応がなされているのか。その現状と,早期介入に向けての課題について検討する。 方法 1)研究参加者 : A県内において中学校養護教諭の経験のある女性4名。 2) 方法 : 面接は半構成面接とし「生徒に見られる問題行動」,「問題行動を呈する生徒に対する対応」,「養護教諭の役割」および,「対応する上で障害となるもの」などについてインタビューを実施。 3 )分析方法 : 質的記述的分析。 結果 養護教諭の語りから抽出された問題行動には,統合失調症の前駆症状と共通する,「攻撃的な態度・暴言」「過度の自己アピール」「集中力の無さ」「落ち着きの無さ」や,より病的な「強迫的行動」や「目つきの変化」「不可解な行動」が見られた。養護教諭は,それが病的なものか,発達上の問題なのか,正常な域での反抗なのかの判断に迷っていた。また,独自で対応する場合と,担任をはじめとする学校内で組織的に対応・判断する場合があった。対応する上で問題になることとしては「保護者との関係」があり,「保護者の思い・考え」を優先しなければならなかった。また,家族以外の要因としては,教員間の連携,中でも「担任教員との関係」「教員の理解(知識)の無さ」や,組織内で「養護教諭に対する理解の不足」があった。 結論 学校現場において問題行動は増加しており,その対応には養護教諭のみならず全教員が苦慮していることが伺える。精神疾患に対する偏見は根深いものがあり,保護者・教員ともに正しい知識を持つことが必要である。早期介入を行うためには,養護教諭を中心として,問題行動を呈する生徒に対応するシステムを構築する必要がある。
著者
長江 美代子 土田 幸子
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
日本赤十字豊田看護大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Toyota College of Nursing (ISSN:13499556)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.83-96, 2013-03-31

精神障がいを持つ親と生活している子どもの生活と成長発達への影響について、統合的文献検討研究の手法を用いて探求した。29 件の対象文献のほとんどは母親の影響に焦点を当てているが、父親のアルコール・薬物乱用による家族機能の破綻が養育環境を悪化させていた。子どもの成長発達に関する研究報告で共通しているのは、子どもにとって、親が病気であることを知りその病気を正しく理解することが不安を軽減し、生きやすくすることにつながるということであった。しかし現状では大人は子どもに事実を隠し、子どもが聞きたくても聞けない状況をつくりだしていた。親の精神障がいが子どもの成長発達に与える影響は、精神障がいの親の直接的な養育態度のみならず、夫婦関係、他の家族員の健康、経済的状況など、間接的な要因を考慮して捉える必要がある。また、このような親子を孤立させないように、社会と繋ぎ、子どものレジリエンスを活性化できる支援が必要である。
著者
船越 明子 アリマ 美乃里 郷良 淳子 田中 敦子 土田 幸子 土谷 朋子 服部 希恵 宮本 有紀
出版者
三重県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、児童・思春期精神科病棟に入院中の子どもに対して、エビデンスに基づいた効果的な看護ケアを提供するための看護援助ガイドラインを開発することである。看護ケア実施時の困難、疑問点について自記式質問紙調査を行い、ガイドラインに含むべきクリニカルクエスチョンを抽出した。文献検討と臨床家へのヒアリング調査を行い、クリニカルクエスチョン毎にエビデンスを整理し、『児童・思春期精神科病棟における看護ガイドライン 児童・思春期精神科病棟の看護 基本のQ&A』を作成した。