著者
八木 隆徳 坂上 清一 渡辺 也恭 高橋 俊 小路 敦
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究報告 = Research bulletin of the National Agricultural Research Center for Hokkaido Region (ISSN:13478117)
巻号頁・発行日
no.199, pp.13-23, 2013-03

ススキの分布北限域に近い北海道札幌市において,夏期の刈取りがススキ型草地の種組成と地上部重の推移に及ぼす影響を10年間調査した。隔年もしくは毎年の夏期の刈取りによりクマイザサが抑圧され,ススキの優占が維持できた。出現種数(26種/30m2,5.1‐7.7種/m2)は国内他地域のススキ草地に比べ低いこと,刈取りにより光環境が改善されても種数および種多様度指数の増加はみられないことが示された。ススキのみの現存量は処理間差が小さく,120-300gDM/m2程度であった。隔年の刈取りにおいても現存量が減少する傾向にあるため,長期的に利用するためには利用強度を隔年の刈り取りよりもやや軽くする必要があるものと推察された。
著者
小花和 宏之 早川 裕弌 坂上 清一
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.29-38, 2021-09-25 (Released:2022-06-15)
参考文献数
15

空撮写真から3次元モデルを作成する際に、Domingと呼ばれるモデル全体の歪みが発生することが知られており、計測精度の低下が問題となっている。そこで本稿では、RTK(real time kinematic)-GNSS(global navigation satellite system)を搭載したUAV(unmanned aerial vehicle)の使用、カメラ角度、データ処理方法、およびGCP(ground control point)の配置と、Doming発生程度および鉛直精度との関係を検討した。その結果、カメラの角度を傾けるほどDomingおよび鉛直誤差低減効果が大きく、カメラ位置精度をRTKに最適化することで、GCPを使用しなくてもDomingの発生をほぼ完全に抑えることが可能であり、さらにレンズ歪みモデルのRTK最適化により鉛直誤差も2 cm以内に低減可能なことが示された。なお、慣行の非RTK-UAVにGCPを組み合わせる方法でも、計測範囲中心にGCPを配置することで、極めて高いDomingおよび鉛直誤差低減効果が得られることが確認された。以上より、省力性や運用効率等を考慮した場合、RTK-UAVの使用、カメラ角度-70度、写真測量ソフトウェア(Agisoft Metashape)上の処理における「XMPカメラ位置精度の利用on」、「カメラアライメントの追加補正on」、GCP不使用の組み合わせが最適だと考えられた。
著者
井出 保行 林 治雄 下田 勝久 坂上 清一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.157-162, 1999-07-31
被引用文献数
8

牛糞による種子散布がケンタッキーブルーグラスの繁殖に及ぼす影響を明らかにするため,牛に経口給与されたケンタッキーブルーグラス種子の回収率およびその発芽率を他のイネ料牧草との比較で検討した。さらに,ケンタッキーブルーグラスが優占する放牧草地(草地試験場山地支場)において,糞中種子の種類およびその粒数の季節的な変化を調査した。ケンタッキーブルーグラス,オーチャードグラス,ベレニアルライグラスの種子を体重260-273kgの黒毛和種育成牛に経口給与すると,草種に関係なく,種子は給与後24-48時間に最も多く排出され,72時間までに総排出量の80-90%が排出された。給与種子の回収率は,ケンタッキーブルーグラス>べレニアルライグラス>オーチャードグラスの順に高く,回収された種子の発芽率はケンタッキーブルーグラスが最も高かった。草地試験場山地支場内にあるケンタッキーブルーグラス便占放牧草地では,確認された19草種の内,7草種の種子が翼中から検出され,ケンタッキーブルーグラスの種子が最も多く含まれていた。ケンタッキーブルーグラスの翼中種子は7月上旬から8月中旬にかけて観察され,7月中旬に含有量が最も多かった。
著者
井出 保行 林 治雄 下田 勝久 坂上 清一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.163-169, 1999-07-31
被引用文献数
4

ケンタッキーブルーグラスが優占する放牧草地(草地試験場山地支場)において,ケンタッキーブルーグラスの開花,結実および糞中種子の季節的な動態を調査した。また,菅平牧場では,ケンタッキーブルーグラスの糞中種子による既存群落(ササ型草地)内への侵入実態を調査した。草地試験場山地支場内の調査放牧草地では,ケンタッキーブルーグラスの開花は6月の中旬に始まり,6月下旬にはその大半が結実した。糞中種子は,7月上旬から8月中旬にかけて検出され,7月中句にはその数および発芽率がピークに達した。これらの結果より,牛糞による種子散布が可能な期間は,開花から4週目以降の約1ヶ月間と推察された。菅平牧場における調査牧区では糞塊中にシバ種子が最も多く含まれていたが,糞中種子によってササ型草地内に侵入した植物の中ではケンタッキ-ブルーグラスの平均被度および出現頻度が最も高かった。また,シバを除く侵入植物の被度と糞塊の被度との間には有意な正の相関関係が認められた。これらの結果より,糞中種子による植物の侵入および定着には,糞の分布や糞中種子数だけではなく,侵入後に起こる既存植生や他の侵入草種との競合過程が問題になると考えられた。