著者
坂井 南美 野村 英子 花輪 知幸 大橋 聡史 奥住 聡
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

特に若い原始星L1527について、化学診断を通したエンベロープ・円盤構造の同定、円盤のワープ構造の発見など、独自の手法による成果を挙げてきた。このような初期円盤構造は、原始惑星系円盤で捉えられているリングやスパイラル構造、また、系外惑星における軌道面の多様性の起源の端緒を捉えたものであり、より多くの初期円盤の観測でその一般性を検証することが求められる。数auスケールでの円盤構造の高分解能観測によりこの課題に応えるとともに、多波長観測により、ダスト成長を円盤構造形成過程との関係から解明する。これらを通し、"原始星進化の過程で、惑星形成がいつ始まるか"という問題を提起し、その大要を明らかにする。
著者
坂井 南美
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

最近の研究で、低質量Class 0原始星近傍の化学組成に多様性があることがわかってきた。本研究では、その1つの典型であるWarm Carbon-Chain Chemistry(WCCC)天体に着目し、その起源と、Class I段階への進化について観測的に調べた。主な結果は以下のとおりである。まず、WCCC天体IRAS15398-3359の近傍に炭素鎖分子に恵まれる若い星なしコアLupus-1Aを発見した。もう一つのWCCC天体L1527にも同様の星なしコアTMC-1が存在することを考えると、この結果はWCCCが星形成時の速やかな収縮に起因していることを支持する。第2に、WCCC 天体L1527について、炭素鎖分子の分布をPdBI干渉計によって高空間分解能観測で調べた。その結果、炭素鎖分子の分布は原始星近傍に集中しており、CH_4の蒸発によってWCCCが引き起こされていることが確かめられた。さらに、原始星へ落ち込むガスの中にも炭素鎖分子が存在することがわかった。このことは、炭素鎖分子が原始惑星系円盤にもたらされる可能性を意味する。また、実際に進化の進んだClass I天体で、WCCCの進化形と考えられる天体を探したところ、実際にその候補をL1527の近傍に見出すことができた。本研究により、WCCC天体が原始惑星系円盤に向けてどのように進化するかという問題に対して、重要な知見を得ることができた。