- 著者
-
坂井 南美
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2009
最近の研究で、低質量Class 0原始星近傍の化学組成に多様性があることがわかってきた。本研究では、その1つの典型であるWarm Carbon-Chain Chemistry(WCCC)天体に着目し、その起源と、Class I段階への進化について観測的に調べた。主な結果は以下のとおりである。まず、WCCC天体IRAS15398-3359の近傍に炭素鎖分子に恵まれる若い星なしコアLupus-1Aを発見した。もう一つのWCCC天体L1527にも同様の星なしコアTMC-1が存在することを考えると、この結果はWCCCが星形成時の速やかな収縮に起因していることを支持する。第2に、WCCC 天体L1527について、炭素鎖分子の分布をPdBI干渉計によって高空間分解能観測で調べた。その結果、炭素鎖分子の分布は原始星近傍に集中しており、CH_4の蒸発によってWCCCが引き起こされていることが確かめられた。さらに、原始星へ落ち込むガスの中にも炭素鎖分子が存在することがわかった。このことは、炭素鎖分子が原始惑星系円盤にもたらされる可能性を意味する。また、実際に進化の進んだClass I天体で、WCCCの進化形と考えられる天体を探したところ、実際にその候補をL1527の近傍に見出すことができた。本研究により、WCCC天体が原始惑星系円盤に向けてどのように進化するかという問題に対して、重要な知見を得ることができた。