著者
坂井 清隆
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka Graduate School of Education Division of Professional Practice in Education (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.73-84, 2021

本小論は,今次改訂の理念を教育実践レベルで具体化を目指す教育方法について検討を行うことを目的とする。具体的には,教育実践研究において通常使われる PDCA サイクルに対して,近年ビジネス界で注目されている「OODAループ」の教育実践への適用可能性を追求するものである。 本研究では,教育実践にOODAループ取り入れた場合,「ビジョンの設定」と「動機付け・育成」,そして「意思決定」という3つの機能が同時並行的に駆動することによって,教師の単元展開における実践的力量を高めていることがうかがえた。ビジョンの設定には,「どんな成果(outcome)を出すか」という方針を固め,学習者をどのように日々の教育実践に生かすかといった意思決定の具体や,単元展開に対して洞察力や構想力をもち,その教師・その学習者ならでは学習内容を創り出す意識の芽生えを詳細に捉えることの重要性を見出すことができた。
著者
坂井 清隆 サカイ キヨタカ SAKAI Kiyotaka
出版者
西南学院大学大学院
雑誌
西南学院大学大学院研究論集 (ISSN:21895481)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.157-170, 2015-08

近年、日本におけるシティズンシップ教育に関しては、全国規模の研究会等が立ち上がり、多くのシティズンシップ教育関連の著作物が刊行されるなど、我が国の現状に合った理論研究や実践研究が進んでいる。特に実践研究では、小・中学校での社会科の時間や高等学校での公民科(特に「現代社会」「政治・経済」)での実践が多数報告されている。しかしながら、シティズンシップ教育実践の先行研究の多くは、中学校、高等学校での授業の教授書および単元の試案レベルでの概要を示したり構想レベルのカリキュラムが紹介されたりしている段階6)である。また、小学校でもいくつかの実践が紹介されてはいるが、十分な単元開発がなされているとは言えず、学習者の具体的な姿を通してシティズンシップ(市民性)がどのように育成されたか明確に示した研究は見当たらない。そこで、本研究では、これまでの研究動向を踏まえ、小学校6年生での単元開発(政治分野)を行い、その実践事例の分析・検討を通してシティズンシップの育ちを具体的な子どもの姿で明らかにすることを目的とする。なお、本研究では、日本における多様なシティズンシップ教育へのアプローチを踏まえ、シティズンシップを「社会的責任を自覚し、社会的事象を多面的にとらえながら、地域・社会に積極的に関わろうとする資質」と定義し、政治学習において単元開発した事例に対して実践分析を試みる。