著者
野中 大輔 脇田 哲郎
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka Graduate School of Education Division of Professional Practice in Education (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.101-108, 2022-03-22

本研究は、学級担任の学級活動(1)に関する実践的指導力向上に寄与する教員研修の在り方を究明することを目指し、学級会デジタルコンテンツを活用した教員研修を実施し、効果を検証した。研究では、実践的指導力を自己評価する質問紙として学級会セルフチェックシートを開発した。その開発過程では、質問紙のデジタル化や探索的因子分析を実施し、教員研修において学級会デジタルコンテンツがより効果的に活用できるようにした。公立小学校2校で教員研修を実施した結果、参加者の研修満足度が高く、学級会デジタルコンテンツについても好意的な意見が多く見られた。また、教員研修後に約半年のコンテンツ視聴期間を設けたのち、再度実施した実践的指導力の調査では「自治性マネジメント」因子が有意に向上していた。このことから、本研究で実施した教員研修の効果が示唆されたものと考察した。
著者
脇田 哲郎
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
no.10, pp.103-110, 2020-03-10

本研究は, 2019年3月と同年12月に訪問したエジプト国ルクソール地方とカイロ市,ハルガダ市の特別活動(以下,特活(TOKKATSU))を中心とする日本式学校 (以下,EJS(Egyptian Japanese Schools))で実施された特活セミナーと授業研究会,保護者セミナーから見えてくる導入の現状と課題を整理し,今後のEJSの在り方を探ってみようとするものである。ルクソールのEJSで行われた特活セミナーでは,マスタートレーナー(以下,MT)から,基本を押さえた指導を受けていることが分かった。ただ,学級会や学級指導の授業は教師主導型の授業が行われており授業改善の課題も見えてきた。また,カイロ市やハルガダ市のEJSでは,保護者を対象にした土曜授業やセミナーが開催され,EJSの良さを広く紹介しようとするEJSの努力も伺える。その結果,保護者にはEJSの教育的な効果が認識されてきている。現在,40校のEJSでの教育を一般の公立学校に広げていくには,教員の意識改革や公立学校への一般化などの課題も見えてきた。
著者
盛合 真央
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka Graduate School of Education Division of Professional Practice in Education (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.155-163, 2021

本研究では,児童の聴くことの課題を踏まえ,能動的に聴く力を育成するために,聴くことの階梯とそれに基づく実践が必要と考えた。そこで,児童が「自身の聴き方」を自覚し,新たな聴き方を他者と共に探究しながら獲得することにつながる階梯と具体事例について追究した。その過程で,児童は「自身の聴き方」に対して無自覚であることや,自身の考えを伝えることに意識が集中し,「他者の聴き方」の特性を見出すことに意識が向かないことが分かった。今後,客観的に他者の聴き方を捉える手がかりを児童と共有する学習やツールの開発,教師が意図的に児童の聴く姿を価値づけることが必要である。また,本研究で導出した「児童の聴き方自覚を促すチェックリスト」の児童の自己評価を基に,児童個別の聴き方カルテを作成し,児童一人一人の聴く実態に応じた教育実践につなげていきたい。
著者
坂井 清隆
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 = Bulletin of University of Teacher Education Fukuoka Graduate School of Education Division of Professional Practice in Education (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.73-84, 2021

本小論は,今次改訂の理念を教育実践レベルで具体化を目指す教育方法について検討を行うことを目的とする。具体的には,教育実践研究において通常使われる PDCA サイクルに対して,近年ビジネス界で注目されている「OODAループ」の教育実践への適用可能性を追求するものである。 本研究では,教育実践にOODAループ取り入れた場合,「ビジョンの設定」と「動機付け・育成」,そして「意思決定」という3つの機能が同時並行的に駆動することによって,教師の単元展開における実践的力量を高めていることがうかがえた。ビジョンの設定には,「どんな成果(outcome)を出すか」という方針を固め,学習者をどのように日々の教育実践に生かすかといった意思決定の具体や,単元展開に対して洞察力や構想力をもち,その教師・その学習者ならでは学習内容を創り出す意識の芽生えを詳細に捉えることの重要性を見出すことができた。
著者
比樂 憲一
出版者
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻
雑誌
福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 = Bulletin of Fukuoka University of Education Graduate School of Education Division of Professional Practice in Education (ISSN:21860351)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.119-126, 2015-03-23

本研究では,小学校 4 年「もののあたたまり方」の学習において,概念生態系の視点を援用することで, 単元前後の学習者の概念の実態を分析した。そして,実践した授業が,「もののあたたまり方」における科学的な概念の適用者数および受容者数を増加させ,それ以外の概念の適用者数および受容者数を減少させる上で,効果的であることを明らかにした。また,その 効果をもたらした要因として,本実践における以下の 2 点が挙げられることが示唆された。 (1) 単元学習前に,物質の状態の特徴に関する情報を先行して与えた後,もののあたたまり方を捉えさせる。(2) 水および空気のあたたまり方(対流)の指導において,あたたまり方の過程と結果を明確 にして捉えさせる。ここから,学習者の科学的な概念構成を促すために,必要な情報を先行的に導入したり, 自然の事物・現象や自然についての考えを時系列で具体的に表現させたりする指導の重要性が示された。