著者
出口 恭代 松田 崇 神野 俊介 坂本 典子 蕨野 博明 真木 徹 廣田 智也
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2009 (Released:2010-04-21)

【はじめに】肩関節周囲炎は、有痛性の可動域制限と夜間痛が特徴である。今回、自己牽引で夜間痛を軽減できた症例を経験したので報告する。 【症例提示】60歳代男性。3年前に利き手の右肩痛を自覚、1年前より夜間痛が発生、運動時痛も悪化し整形外科を受診された。右肩関節周囲炎と診断され関節注射を受けたが軽減せず、半年後理学療法(以下PT)処方された。初期評価時は、夜間痛が毎晩生じ睡眠が中断され、腕をかかえて痛みに耐えている状態であった。部位は肩峰下と上腕骨前面に大別され、肩峰下の疼痛が特に強かった。圧痛は肩関節周囲すべての筋に認めた。自動運動時痛と可動域制限も強く、髪結いは困難、結帯動作は不可能、左腋窩に体温計を挟めなかった。職業のバス洗車も支障をきたし、趣味で続けていた野球も中断していた。 【治療経過】治療は週5回行い、筋スパズムを緩和し軟部組織や靭帯を伸張することで、除痛と可動域拡大を目指した。PT開始後6日目に自己牽引を指導した。方法はカルテンボーンのオートストレッチ法を参考にした。椅子坐位を取り左臀部に体重を移動する。右上肢を体側に垂らして座面の右端を握り、肘関節を伸展したままさらに手指屈筋に力を入れる。手指を支点に手関節背面が下がることで肩峰下が離解される。数日後、夜間痛で目覚めた際に自己牽引を行うとすぐに痛みを消失できると伝えられた。仰臥位のままベッド端を把持し引いても効果があると言われた。PT開始から20日で結帯動作や左肩への触知も可能となり、日常生活での運動時痛も消失した。睡眠中断も減り、夜間痛が生じても自己牽引で消失できる状態が約1月続いた。しかしその後、上腕骨に沿った夜間痛が多く出現し自己牽引でも軽減せず、現在もPT継続している。 【考察】夜間痛の発生原因は不明な点が多いが、肩峰下圧の上昇が関与しているとの報告が散見される。自己牽引で肩峰下滑液包が拡大し、圧を下げることができたと考えられた。この方法では特定部位の除痛効果しかなく根本的な治療とは言えない。しかし苦痛を緩和する自己調整法として有効ではないかと考えられ、今後さらに症例を重ね検討したい。
著者
森 啓輔 小西 有望 坂本 典子 山田 知子 江本 晶子 小向 翔 江口 由美子 山下 佳雄
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.465-470, 2019-03-31 (Released:2019-04-24)
参考文献数
10
被引用文献数
3

口腔衛生状態を良好に維持するためには,適切な湿潤状態を維持することが重要である。しかし,高齢者の多くは加齢による唾液分泌能低下,内科的疾患やその治療薬の副作用のため口腔乾燥症を発症している。高齢化に伴い,この口腔乾燥症患者は年々増加しているが,その多くは対症療法として口腔保湿剤を使用している。しかし,経済的な理由から保湿剤の適正使用ができていない場合も多い。今回,安価なグリセリンを主成分とした溶液が口腔乾燥症に対して応用可能であるかどうかを,鳥ムネ肉を検体として用いて基礎実験を行った。比較溶液としては蒸留水,市販の口腔保湿剤(バトラージェルスプレー®)を用いた。水分量は口腔水分計ムーカス®を用いて測定し,水分保持能力は水分量の変化率(処置前水分量-120分後の水分量/処置前水分量×100)と定義した。結果,鳥ムネ肉における120分後のグリセリン溶液群とバトラージェルスプレー®群では同等な水分保持能力を示した。また,グリセリン溶液濃度(12・24・36%)と水分保持能力には統計学的に有意な相関関係は認められなかった。 今回の実験結果から,グリセリン溶液は市販の口腔保湿剤と同等な水分保持能力を有することが判明した。グリセリンは安価なことから,経済面からも長期使用が可能な口腔保湿剤の一つになりうると考える。
著者
高橋 和弘 坂本 典子 岡田 正史 為近 義夫 石橋 大海
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.719-722, 2000-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
9

症例は57歳女性,1997年12月自己免疫性肝炎と診断され,以後プレドニゾロン維持投与で経過は良好であった.1998年7月下旬より,呼吸困難出現し来院,高度の肝機能障害を認めるとともに,胸部CTで肺野の間質性陰影の増強を認めた.間質性肺炎をともなった自己免疫性肝炎の急性増悪と診断し,メチルプレドニゾロン250mgより投与を開始したところ,速やかに呼吸困難は改善し,血液ガス,肝機能も正常化し,胸部CTの間質性陰影も消失した.自己免疫性肝炎と間質性肺炎の合併はまれであり,また自己免疫性肝炎の急性増悪にともなって間質性肺炎を発症するという興味ある経過をとったので報告する.