著者
坂本 純一
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究 (ISSN:2189969X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1, 2021-01-21 (Released:2021-01-23)
参考文献数
27
被引用文献数
1

カナダの公的年金制度は大きく2 つの部分から成り立っている。ひとつは1952 年に導入された老齢保障制度 (OAS) と呼ばれる非拠出制の定額年金である。もうひとつは被用者や年収が一定以上ある自営業者などに適用される報酬比例年金で、ケベック以外の事業所に適用されるカナダペンションプラン (CPP) とケベックの事業所に適用されるケベックペンションプラン (QPP) がある。これらは1966 年 に導入された。OAS にはCPP/QPP が導入された際に、所得保障補足年金 (GIS) が付加された。CPP とQPP は完全に通算可能で、制度改正については連携することが確認されている。 わが国の公的年金制度は、まず報酬比例年金が創設され、それから国民皆年金になったが、カナダの場合は国民皆年金が最初で、そのあと報酬比例年金が導入された。そして、その際、報酬比例年金給付が無い者、もしくは低い者にはGIS が支給されることとなり、このことによってカナダの高齢者の貧困率は低い。 1980 年代からカナダの経済は不振に陥り、市場原理主義的なマネタリストの影響のもとに、一時、 社会保障制度は拡大路線から縮小路線に切り替わり、所得の高い年金受給者のOAS 年金を削減する措置 (clawback) が出てきたが、2007-8 年のリーマンショックによりマネタリストの影響が薄らぐと、この金融経済危機による高齢者の引退後の所得の落ち込みを防ぐために2016 年にCPP/QPP の給付水準の改善を行った。 本稿では、OAS が創設されるまでのいきさつや、CPP/QPP 導入の経緯、ベビーブーマーの引退とともに人口高齢化の見通しが厳しくなるなかで導入されたCPP/QPP の1998 年の財政規律、2016 年の CPP/QPP の給付改善に触れながら、カナダの公的年金制度の歴史を概観する。
著者
稲垣 均 松井 隆則 小島 宏 加藤 潤二 小島 泰樹 藤光 康信 黒川 剛 坂本 純一 野浪 敏明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.692-696, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
17

症例は62歳の女性で,2000年1月直腸癌にて低位前方直腸切除術の既往がある.2000年11月より血清CEAの上昇傾向を認めていたが,画像診断上再発所見を認めず,経過観察されていた.その後も血清CEAは上昇を認め,2001年8月CTにて膵体部に腫瘤を認めた.2001年10月当科を紹介された.孤立性膵腫瘍であり,他に転移を認めないことから,膵体尾部脾合併切除術を施行した.腫瘍は7×4cm大で,組織学的に中分化腺癌の像を呈し,直腸癌の転移と診断した.術後,5-FUとisovorinの化学療法を開始し,2003年7月現在,血清CEAの軽度上昇を認めるが,画像上明らかな再発所見を認めず,外来通院中である.大腸癌膵転移は極めてまれであり,その切除の報告例は検索しえた範囲内で,自験例を含めて14例に過ぎない.長期生存例の報告もあり,孤立性で他に転移巣を認めない場合には,積極的に手術を行うべきと考えられた.