- 著者
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垣田 裕介
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.3, pp.41-55, 2016
2015年4月から実施されている新たな生活困窮者自立支援制度は,生活保護受給に至っていない生活困窮者に対する包括的・個別的支援を目的としており,支援方法の中心に現金給付ではなく支援サービス給付を置いている点に特徴がある。新制度の実施主体である地方自治体は,制度の事業や関連資源をいかに組み合わせて対処するかを選び取っていくこととなり,事業推進の企画力や,総合相談や就労支援等の実行力が問われている。本稿では,新制度の実施に先立って2013〜14年度に実施されたモデル事業における自治体の取り組み事例等にもとづき,生活困窮者の実像,具体的な支援の内容や結果,自治体が直面する諸課題などを明らかにする。その際,マクロの制度を実際に対象者の生活やニーズに機能させる,社会政策の実質化のプロセスとして,自治体での運営(メゾ)や個別的なケースの支援実践(ミクロ)のレベルを射程に入れて分析や論点提起を行う。