著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 城野 靖朋 島田 雅史 大塚 彰
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.15-19, 2013-03-31 (Released:2015-03-08)
参考文献数
22
被引用文献数
3

「目的」近年,足趾の不接地状態である「浮き趾」に関する報告を散見する。常態化した足趾の接地状態の不良は知覚や運動,身体機能などに影響を及ぼす可能性があるため,本研究では浮き趾と足趾運動機能,姿勢制御能力の関連について検証する事を目的とした。「方法」本研究では地域在住の高齢者30 名を対象に足趾接地状態の評価を行うとともに,足趾筋力,足趾ジャンケン,Functional reach test(以下,FRT)距離,およびFRT 時の足底圧について検証した。「結果」足趾が全て接地している対象と比較し,足趾の接地状態が不良な対象では,FRT 距離およびFRT 時の足趾荷重量が低値を示し,Center of Foot Pressure(以下,COFP)軌跡の後方偏移を認めた。また,これらの対象では足趾筋力が低値を示し,足趾屈曲(足趾ジャンケンのグー)が困難であった。「結論」これらの結果から,浮き趾がある対象では足趾屈曲方向への運動機能および足趾屈曲筋力が低下していることが示唆された。また,足趾の屈曲筋力や運動機能が低下している浮き趾者では,重心前方移動時に足趾を床面方向に押圧・固定する力が低下することが予測され,前足部における支持基底の狭小化や不安定化からFRT距離およびCOFP軌跡の前方移動量が短縮した可能性が考えられた。本研究結果より,浮き趾を有する高齢者では姿勢制御能力や足部機能が低下している可能性が示唆され,足趾の接地状態の把握が対象者の身体機能を予測する一助になる可能性が考えられる。また,今後は浮き趾に対する評価方法や介入方法についてさらに検討を進める必要がある。(理学療法の臨床と研究 22:15-19,2013)
著者
池田 耕二 田坂 厚志 粕渕 賢志 城野 靖朋 松田 淳子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11782, (Released:2020-09-19)
参考文献数
37

【目的】熟達理学療法士(以下,PT)の経験学習プロセスから成長を促す経験と学習内容を明らかにし,そこからPT に対する経験学習支援方法を示唆すること。【方法】対象は熟達PT3 名であった。方法は質的研究の手法と松尾の経験学習プロセス解明の枠組みを用いた。【結果】熟達PT はキャリアの初期に「障がいを有した患者の社会参加に向けた実践経験」から〈人とのかかわりや社会・生活に対する実感〉を,初期~中期に「予期できぬ否定的な経験」から〈医療の厳しさ〉等や「重度患者を基本的理学療法で改善した経験」から〈基本的理学療法技術の有効性〉等を,中期~後期に「実習生や新人に対するサポート経験」から〈自己内省による知識・技術の整理〉等や「多職種連携による介入経験」から〈コミュニケーション〉等を学習していた。【結論】熟達PT の成功を促す経験に焦点化し経験を積ませることは,PT の経験学習支援につながると考えられる。
著者
城野 靖朋 金井 秀作 後藤 拓也 原田 亮 藤高 祐太 谷出 康士 長谷川 正哉 大塚 彰
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.533-537, 2013-08-20

〔目的〕本研究の目的は,運動課題と認知課題の二重課題練習において,注意に関する指示の影響を明らかにすることである.〔対象〕健常成人60名を対象とした.〔方法〕二重課題練習で注意を運動課題に向ける条件,認知課題に向ける条件,注意の指示を与えず自由選択できる条件,練習を実施しない条件を設定し,練習前後の各課題パフォーマンスを評価した.〔結果〕dual-taskの運動課題パフォーマンスおよび高難易度運動課題パフォーマンスは,練習期の注意配分を自由に選択できる条件で向上した.〔結語〕健常成人を対象にした本研究では,注意の指示を与えない二重課題練習が,運動課題パフォーマンス向上に効果的である可能性が示唆された.<br>
著者
神里 巌 城野 靖朋 粕渕 賢志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.385-388, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
15

〔目的〕近年,固有感覚の重要性が指摘されている.固有感覚機能には末梢に存在する固有感覚受容器の働きが重要な役割を持つが,固有感覚受容器からの求心性の情報が大脳皮質に伝わることが重要である.本研究では脳の運動錯覚を惹起することのできる振動刺激に着目し,振動刺激が膝関節固有感覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.〔対象および方法〕健常26膝の,①安静,②振動刺激,③等尺性筋収縮前後の膝関節位置覚を測定した.関節位置覚は膝関節屈曲90°から角速度0.25°/secで屈曲し,105°での測定誤差角度を測定した.振動刺激部位は大腿四頭筋遠位複合腱部とし,周波数は90 Hzとした.各介入前後および条件間での比較を行った.〔結果〕振動刺激介入後および筋収縮介入後は測定誤差角度が小さくなり(p<0.05),固有感覚の向上がみられた.〔結語〕局所への振動刺激による運動錯覚は膝関節固有感覚を向上させることが示された.
著者
城野 靖朋 金井 秀作 後藤 拓也 原田 亮 藤高 祐太 谷出 康士 長谷川 正哉 大塚 彰
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.47-51, 2013 (Released:2013-10-08)
参考文献数
21

本研究では運動課題にタンデム立位保持課題,認知課題にストループ干渉課題を用いて,各課題パフォーマンスが受ける二重課題干渉効果について検討した。健常成人60名を対象とし,タンデム立位保持課題を重心動揺で評価し,ストループ干渉課題を正答数で評価した。それぞれ単一課題で評価した後,同時遂行課題で評価した。二重課題干渉効果で運動課題パフォーマンスは向上し,認知課題パフォーマンスは低下した。このことから本研究の課題設定では,運動課題の高いパフォーマンス発揮のために,多くの注意資源は必要でないことが示唆された。