著者
⼭⼝ 徹 眞⽥ 昭平 隅本 倫徳 堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第40回ケモインフォマティクス討論会 山口
巻号頁・発行日
pp.O8, 2017 (Released:2017-10-19)
参考文献数
4

薬剤の安定性試験に際し、分解反応に対する理論的な予測データを得られれば有⽤である。本研究では、アスピリンの加⽔分解反応に対し理論的解析と⾃由エネルギーを⽤いた反応速度論シミュレーションを⾏った。B3LYP/6-311+G(d,p)//B3LYP/6-31G(d)レベルの反応解析の結果、アスピリンは⽔2 分⼦によるプロトン移動を介してΔG‡=27.2 kcal/mol で分解されると計算された。これを⽤いた反応速度論シミュレーションの結果、温度37℃、湿度42%条件下での6 ヶ⽉⽬の分解率の実測値0.083%に対し、計算値0.091%と⾮常に良い⼀致を得た。また、湿度30〜100%での広い範囲のシミュレーションを実施し、温度60℃、湿度30%条件下でも実測値と⾮常に良い⼀致を得た。
著者
堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.2B08, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
5

合成経路設計システムにより創出される経路は、①多くの場合前駆体の合成が合成困難、②多段階合成では、合成経路の数が発散する、③提案合成反応は標的分子を主生成物として与えない可能性がある、などの理由により標的分子の合成を保証しない。①はSAスコアを計算することで、②はin silicoスクリーニングと実験の組み合わせにより解決できる。本研究では、③について、RDkitを用いて可能性のある反応を予測し、それらについて理論計算を行うことにより、どれが主反応であるかを決める手順を作成することを試みた。これは、複数の生成物が予想される反応では、単にTS構造を求めるだけでは不十分で、最も低い活性化自由エネルギーを与えるTS構造を求めて比較することで始めて、主生成物がどれであるかを判定できることによる。開発された手法をEne反応に対して適用し、主生成物が何であるかについて予測できる可能性が示された。
著者
堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.42-45, 2015

我々は研究や分子化学教育の現場における量子化学計算結果の利用を容易にするため、理論計算結果を集めたデータベース(QMRDB)の構築を行ってきた。このシステムは、WebブラウザとPostgreSQLを使用し、php言語で記述され、ネットワークを介してどこからでも容易にアクセスが可能である。分子名やキーワードによる検索だけではなく、OpenBabelを用いた構造検索機能も実装している。このデータベースの利用を促すためには、データ数増加やそれらの正確性を担保することは重要である。その目的で、データ登録作業の効率向上を目指したWebブラウザベースのプログラム開発をおこなった。更に、QMRDB中データを反応記述子で関連付けることにより、遷移状態データベース(TSDB)も構築している。このデータベースは、TOSP等の合成経路設計システムが網羅的に発生する合成経路で目的化合物が合成できるかどうか検証を行う理論計算(in silicoスクリーニング)を支援するために利用される。
著者
堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第40回ケモインフォマティクス討論会 山口
巻号頁・発行日
pp.O12, 2017 (Released:2017-10-19)
参考文献数
4

我々は、これまで開発を行ってきた遷移状態データベース(TSDB)を活用して合成経路の評価を行う手法(in silico スクリーニング)を適用する研究で、東京大学船津教授を代表研究者とするCREST プロジェクトに参加している。我々のサブプロジェクトでは、遷移状態データベースに採録されている遷移状態構造をテンプレートとし、その構造中の3 つの原子を指定することにより置換基の異なる系における遷移状態候補構造を作成する。この方法により、短時間でのTS 構造計算が可能となり、その結果として多反応の可能性評価を可能としている。反応の類似性の検索には、OpenBabel 及びgWT プログラムを用いている。本研究では、CREST プロジェクトを実施するうえで新たに開発した関連プログラム、TSDB の現状とサブプロジェクト間の関連プロジェクトについて報告する。
著者
前山 恵璃 隅本 倫徳 堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.74-77, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
9

近年、クリーンなエネルギーとして水素が注目されており、その有効利用のための脱水素及び水素付加反応を触媒する錯体が関心を集めている。藤田らは、ジオールの脱水素的ラクトン化反応を触媒するCp*Ir錯体(Cp*=η5C5Me5)を用いた1,2-ベンゼンジメタノール(3)の脱水素を伴うラクトン化反応について、2つの触媒サイクルを持つ機構を提案した。この機構では、最初にCp*Ir錯体より水が脱離した配位不飽和の錯体を生成する。しかしながら、これらの機構はエネルギー的に不安定な配位不飽和な触媒を活性種としている。Mizoroki-Heck反応について、隅本らは配位不飽和の構造を有さない触媒サイクルの検討を行い、配位飽和の活性種を見出した。本研究では、藤田らの見出した脱水素を伴うラクトン化反応について、配位不飽和及び配位飽和の触媒を活性種とする触媒サイクルについて理論計算を行い、比較検討を行った。
著者
堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.42-45, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
4

我々は研究や分子化学教育の現場における量子化学計算結果の利用を容易にするため、理論計算結果を集めたデータベース(QMRDB)の構築を行ってきた。このシステムは、WebブラウザとPostgreSQLを使用し、php言語で記述され、ネットワークを介してどこからでも容易にアクセスが可能である。分子名やキーワードによる検索だけではなく、OpenBabelを用いた構造検索機能も実装している。このデータベースの利用を促すためには、データ数増加やそれらの正確性を担保することは重要である。その目的で、データ登録作業の効率向上を目指したWebブラウザベースのプログラム開発をおこなった。更に、QMRDB中データを反応記述子で関連付けることにより、遷移状態データベース(TSDB)も構築している。このデータベースは、TOSP等の合成経路設計システムが網羅的に発生する合成経路で目的化合物が合成できるかどうか検証を行う理論計算(in silicoスクリーニング)を支援するために利用される。
著者
堀 憲次
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第37回情報化学討論会 豊橋
巻号頁・発行日
pp.O02, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
7

QMRDBは、WebベースでPostgreSQLを用いた量子化学計算に関するデータベースとして開発を行っている。分子名、キーワード検索に 加え、Open Babelを用いた構造検索も可能となっている。検索結果は、Webブラウザに埋め込まれたJSmolにより、キーワード等と共に表示される。本研究で は、保存するデータの形式を工夫することで遷移状態データベース(TSDB)の開発に応用したので、その詳細について述べる。
著者
堀 憲次
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究では、モデル化合物N-formylaziridine及びそのプロトン付加体に関して極限的反応座標(IRC)を含めた詳細な非経験的分子軌道(MO)計算を行い、1-アシルアジリジンの異性化反応機構を理論的に検討することを目的とした。これに関連して、N-formylaziridineと同じくアミド部分を有するアジリジン誘導体、1-(R)-α-methoxy-α-trifluoromethylphenyl-acetyl-(S)-2-methyl-aziridineにおいて実験を行い、MO計算結果と比較検討を行った。その結果以下のことが判明した。(1)強い求核種が存在しない反応条件では、低い活性化エネルギー(38.9kcal mol^<-1>)の遷移状態(TS)を経て反応は進行する。このTSを経る反応は、反応前後でアジリン環の不斉炭素の立体を保持するS_Ni機構であることが、IRC計算により確認された。(2)スキーム1に示す反応では、メチル基ヲ持つC-N結合が選択的に解裂する。このモデル反応えは、28.2kcal mol^<-1>、置換基の無いC-N結合の解裂には、39.8kcal mol^<-1> の障壁があると計算された。両者の結果は良い一致を示している。(3)強い求核種(本研究ではCl^-をモデルとした)によるアジリジン環の開環と線型中間体の生成反応の活性化エネルギー(14.0kcal mol^<-1>)は、S_Ni機構のそれに比べて小さいと計算された。従って、強い求核種の存在下では、線型中間体の生成がS_Ni機構に優先して進行する。しかしながら、カルボニル酸素による2回目のS_N2反応は、高い活性化エネルギーを有する(45.4kcal mol^<-1>)と計算された。この結果は、実測された最終生成物の遅い反応速度と良い一致を示している。