著者
堀尾 文彦 村井 篤嗣 小林 美里
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ビタミンC(VC)生合成不能のODSラットにVC無添加飼料を8日間与えた時期には欠乏症状は全く発症していないが、LPS誘発性敗血症を引き起こすと5.5%という極めて低い生存率であった。それに対して、最小必要量のVCの摂取は生存率を39%にまで上昇させ、ビタミンC摂取が敗血症防御効果のあることを初めて示した。さらに特筆すべきことは、最小必要量の10倍の高用量のビタミンC摂取は生存率を61%にまで改善させ、高用量VC摂取が敗血症に対して有効な防御手段であることを示した。このVCの作用は、LPSによる血中単核球でのTNFαおよびIL-1βの産生上昇の抑制によることを示唆する結果も得た。
著者
堀尾 文彦
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.267-274, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
32
被引用文献数
1

糖・脂質代謝異常症の原因遺伝子の同定と, 発症抑制する食事因子の探求とを目的とした。遺伝因子に関しては, マウス SMXA 組換え近交系統の中に高脂肪食誘発性2型糖尿病と脂肪肝を呈する SMXA5 系統を見出した。SMXA5 の原因遺伝子を同定するために高脂肪食摂取下で遺伝解析を行って, 糖尿病遺伝子座を第2番染色体に, 脂肪肝遺伝子座を第12番染色体に検出することに成功した。これらの遺伝子座を含む染色体部分置換マウスを作出して原因遺伝子の染色体上の存在領域を限局して, 糖尿病遺伝子については4つの候補遺伝子を, 脂肪肝遺伝子については1つの候補遺伝子を選抜した。食餌因子に関しては, コーヒー, 植物性タンパク質, キノコ由来ペプチドなどの糖尿病の発症抑制効果を見出した。コーヒーは, 2型糖尿病でのインスリン抵抗性を改善させて高血糖の発症を抑制すること, また膵臓β細胞の保護作用により1型糖尿病も抑制することを見出した。これらの成果は糖尿病・脂肪肝の新規の発症機構の発見と, 疾患を予防する食生活の構築に寄与するものである。
著者
堀尾 文彦 村井 篤嗣 小林 美里
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ビタミンCであるアスコルビン酸(AsA)の欠乏時には肝臓のヘムタンパク質であるシトクロムP-450(CYP)が減少し、薬物代謝能が低下する。しかし、このAsAの作用機構は明らかではなかった。本研究の結果、AsA生合成不能のODSラットのAsA欠乏時には肝臓のヘム分解の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現上昇が起こることを見出し、それに続いてCYP量の減少することを証明された。そして、AsA摂取下でもHO-1誘導剤投与が肝CYP量の減少させることを見出した。本研究により、AsA欠乏によりヘム分解が亢進して肝CYP量の減少をもたらすというAsAの新規な生理機能を提唱できた。