著者
堀川 直顕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.809-810, 2021-12-05 (Released:2021-12-05)
参考文献数
5

ラ・トッカータCERNでの実験に大学院生が単独出張滞在できるようになるまで
著者
堀川 直顕 三宅 和正 林 良一 福井 崇時 森 邦和 中西 彊
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1986

この研究はスピン偏極した陽子をつくり、高エネルギ-実験に利用することを一つの動機として原子状水素ガスの生成を目指した開発研究である。このため、いくつかの装置の製作、測定手段の開発を手がけ、原子状水素発生のテストに入る段階にきた。ここで、これまでの成果をまとめておく。(1)超伝導電磁石の冷却と励磁。最高6.4テスラを得、軸上磁場分布を測定。(2)磁場モニタ-用ホ-ル素子(Matsushita OHOO3)の低温での較正。(3)希釈冷却器の製作とテスト(ヘリウムー3ガスで0.4Kまで冷却)。(4)ヘリウムー3ガス循環精製器の製作とテスト。(5)冷却系、磁場強度等の自動モニタ系製作。(6)ラジオ波による水素ガスの放電効離条件のテスト。(7)原子状水素検出のためのボロメタ-の製作とテスト。ヘリウム超流動膜の消滅を示す信号を検出。(8)スピン偏極原子状水素をNMRで検出するための回路の製作。最終年度の報告が遅れたのは、上記の項目等を達成するのに時間がかかったためである。現状では希釈冷却器での水素解離は行っていないが、ガラスデュワ-中で超伝導磁石を冷やして励磁し水素ガス解離と検出のテストをくり返しており、希釈冷却器については機能向上のための改造を施している。今後の予定としては、(1)ガラスデュワ-中での原子状水素の確認、(2)希釈冷却器の希釈モ-ドテスト、(3)希釈冷却器内での原子状水素の貯蔵と検出、(4)ボロメタ-による密度測定、(5)ESR又はNMRによるスピン偏極度に測定、(6)マイクロ波による原子状水素ガスの取出し、等のテストに進んで行くことになる。なお、この研究と並行して高エネルギ-スピン実験も実行した。
著者
堀川 直顕
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.614-621, 1999-08-05
被引用文献数
1

1988年EMCグループが報告したCERNにおける実験結果はこれまでの単純なクォークモデルに基づく核子スピンの描像をうちこわし, QCD適用の是非まで議論を発展させる一大センセーションを巻き起こした. その後, 10年を経てCERNでのSMC実験, SLACでの一連の実験, およびDESYのHERMES実験によりクォークスピンの役割の輪郭がはっきりしてきた. また, この間得られたデータに対するQCD解析法の発展により信頼性の高い結論が導かれてきている. QCD的扱いの信憑性を検定する「Bjorken和則」も, 測定精度の向上から理論値との比較に信頼度が増した. ここでは, EMCが提起した「核子スピン問題」のおさらい, それを解き明かすため筆者らが実行したSMC実験の紹介, 得られた結果に対するQCD解析, それから導かれるクォータスピンの役割, 今後の研究の展望について紹介する.