著者
遠藤 信英 度会 正人 堀部 秀樹
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.311, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例>18歳女性。<既往歴>15歳の頃より近医心療内科に自ら通院。2回の自殺企図の既往があった。<現病歴>2006年4月9日、インターネットにてジギタリスの毒性を知り、花屋でジギタリスの鉢植えを購入し、その葉20枚を煮て、煮汁を服用した。服用直後から嘔気があり嘔吐を続け、症状が持続するため翌日当院救急外来を受診した。受診時身体所見は、意識清明・血圧99/59mmHg・脈拍数55回/分・経皮的酸素飽和度97%であった。心電図では_II_・_III_・aVfとV4-6に盆状ST低下を認め、2:1房室ブロックを中心に、WenckebachやMobitz2型2度ブロックといった多彩な不整脈を呈していたため入院管理とした。<入院後経過>ジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ128ng/ml,5.33ng/mlと正常値上限の5倍程度まで著明に上昇していたが、心エコー検査にて心機能は正常で心不全兆候はなく、肝腎機能は良好であり、モニター心電図にてlong pauseなどの危険な兆候が見られなかったことから保存的治療で経過を見ることとした。入院中は心電図モニターによる監視下のもと、補液治療を行った。入院時から2:1房室ブロックは持続していたが、特に危険な不整脈を誘発することなく経過し、第4病日頃から、それまで2:1房室ブロックで50台ほどの脈拍数であったものが1:1でつながり始めるようになった。第7病日頃には伝導が2:1となることはなくなり、1:1伝導で脈拍数が100ほどの洞性頻脈になった。その後は脈拍数も70ほどへ低下し、嘔気もとれ経口摂取も十分可能になったため第10病日退院した。第7病日の時点でジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ38.4ng/ml,1.75ng/mlであった。<まとめ>自殺企図にてジギタリスの葉を大量摂取した一例を経験した。本症例では不整脈の増悪・急変に備えペースメーカーなどの緊急処置も考慮していたが、健康若年者であったことから良好な転帰をとったと考えられる。