著者
河合 秀樹 大野 淳 岩下 由佳 横井 朋子 中尾 彰宏 山本 順一郎 前田 伸治 坂野 章吾 尾崎 行男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1212-1218, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
19

症例は68歳, 男性. 2008年8月ころより下腿浮腫, 2009年4月に入り浮腫増強, 発熱, 労作時息切れを認め, 同月下旬, 当院内科初診. 著明な心嚢水および両側胸水を認め, 同日精査加療目的で入院. 入院後, 胸腔・心嚢穿刺そのほか, 各種精査行うも原因不明. 採血にて抗核抗体1,280倍, 抗DNA抗体300倍など, 膠原病を示唆する所見を認めたが, 臨床的には非典型的であった. 診断的治療目的で抗生物質, 次いで, 抗結核薬を投与するも奏効せず, 感染性漿膜炎は否定的と考えた. 各種検査結果と臨床経過より, 稀な疾患ではあるが高齢発症ループスの可能性が高いと考え, ステロイド投与を開始したところ, 徐々に症状改善し, 心嚢水, 胸水とも減少を認めた. 各種精査を行っても原因のはっきりしない漿膜炎にたびたび遭遇するが, その中に本疾患が潜在している可能性があると考えられる.
著者
河合 秀樹
出版者
室蘭工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

固液混相流や固気混相流における最適な攪拌・混合法を見つけることは, 化学装置やバイオリアクタ, あるいは鉄鋼炉の設計等において重要な指針を与える. 本研究では攪拌混合が比較的緩やかなTaylor vortex flow(TVF)に注目し, 微生物などの増殖率の増加効果や濾過装置への応用を視野に入れた流れの解析に主眼をおいた. TVFは単純な装置であり, 乱流へも段階的に遷移する(スペクトル遷移)ため, カオス混合など, せん断力に弱い微生物や細胞の効果的な混合法の開発に大きく発展すると思われるが, 未解明な点も多い.本研究では, アスペクト比が小さく(Γ=3), 上下境界端効果を有するTVFを用いて, その固液混合特性を可視化法, 並びに超音波流速分布計測法を用いて解析した. この結果, 渦モードによってカオス混合への遷移状況が大きく異なり, 渦自身が自励振動する場合や, 渦と渦の界面が振動する場合など, そのメカニズムが大きく異なることが明らかになった.また, このTVF装置を利用した光合成微生物増殖用バイオリアクタを試作し, 培養実験を行った. 光合成微生物が強いせん断流れによって破壊された場合の定量的な検出法を開発し, これを用いてTVFの効果を調べたところ, Re=30,000までの速い流れでも微生物は破壊されることなく順調に増殖した. ただし, Re>60,000では細胞破壊が検出される場合が観察され, 不安定な挙動を示した.
著者
河合 秀樹 阿保 七三郎 北村 道彦 橋本 正治 泉 啓一 天満 和男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.2424-2427, 1994-11-01
被引用文献数
7

食道癌術後の後縦隔経路再建胃管に発生した潰瘍により大量出血を来し, ショック状態に陥った患者に対し胃管切除術を施行することにより救命しえた症例を報告する. 患者は72歳の男性で1988年6月1日, 食道癌根治術を施行され, 術後に計80Gy の頸部, 縦隔T字照射を受けている. 再発の兆候も見られず順調に経過していたが, 術後3年7か月後に突然下血, 吐血し, ショック状態となったため, 緊急入院し内視鏡を施行, 再建胃管に発生した潰瘍からの出血と判明し内視鏡的止血およびバルーンによる圧迫止血を試みるも止血できず胃管切開直視下縫合による止血術を2回施行するも再出血を来したため3回目の手術で開胸下に胃管切除術, 頸部食道皮膚瘻, 空腸瘻造設術を施行しようやく止血しえた. 患者は6か月後に有茎結腸による胸壁前食道再建術を受け現在経口摂取訓練中である. 本症例では術後の照射および酸分泌能の残存が潰瘍形成に関与していたものと考えられる.