著者
横山 正博 堤 雅恵
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.39-55, 2020-02-28 (Released:2021-09-17)
参考文献数
36
被引用文献数
1

地域包括支援センターの専門職が地域ケア会議において,地域ケア会議の理解の促進や地域包括ケアシステム構築のための能力や意欲を身につけることができたかの成果を評価し,またその成果にはどのような要因が影響しているかを明らかにし,地域ケア会議の推進上の課題を探索することを目的とした. 高齢化率上位5県のすべての地域包括支援センターの地域ケア会議に参加したすべての専門職を対象とし,郵送留置自記式による無記名質問紙調査を行った.調査内容は,対象者の基本属性,地域ケア会議に対する基本的理解に関する質問,地域ケア会議に参加した所感に関する質問,地域ケア会議運営の阻害要因に関する質問および地域ケア会議で得られた成果に関する内容とした.回答結果を単純集計するとともに,地域ケア会議の成果に影響を及ぼしている要因を共分散構造分析により分析した. 地域包括支援センターの専門職は,個人的な地域ケア会議に対する準備を前提として,地域ケア会議の基本的理解をし,自己効力感をもつことで具体的な成果が得られるという認識の構造をなしていた. 地域ケア会議推進上の課題として,地域包括支援センターの専門職は,参加者の地域ケア会議に対する理解度を把握し,効果的に地域ケア会議の趣旨や議論する課題や意図を明確に事前に伝達する工夫が必要である.次に,地域のインフォーマルな人的資源の開発という視点をもって地域包括支援ネットワークの一員となり得る人に参加を呼びかけ,さらに地域住民の主体性を形成する意図をもって地域ケア会議に参加する必要がある.さらに,地域ケア会議の検討技術の向上のためには,熟練した専門職が教育的スーパーバイザーを担うことが必要である. 特に,地域ケア会議に対する自己効力感は地域ケア会議の成果を得るための必要不可欠な要因であることが示唆された.
著者
堤 雅恵 田中 マキ子 原田 秀子 涌井 忠昭 小林 敏生
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.65-71, 2007-03-20
被引用文献数
2

近年,高齢者ケアの現場において音楽,ゲーム,園芸などを手段としたアクティビティケアが頻繁に行われているが,その効果については未だ十分な検討が行われていない.本研究では,介護療養型医療施設に在住する認知症高齢者女性10名(平均年齢84.4±7.1歳,Barthel Index平均得点37.0±30.4点,HDS-R平均得点6.4±6.0点)を対象に,アクティビティケアを実施した日と実施しなかった日の9時から17時までの,携帯式行動量測定装置アクティカルを使ったエネルギー消費量測定による活動量およびタイムスタディによる対人交流時間の調査を実施し,アクティビティケアの効果を検討した,その結果,アクティビティケアが実施された日とされなかった日のエネルギー消費量は,それぞれ338.9±70.4kcalおよび344.0±86.4kcalであり,有意差は認められなかった.対人交流時間については,アクティビティケアが実施された日の対人交流時間の合計は137.9±45.0分で,実施されなかった日の対人交流時間96.1±40.4分と比較して有意に多かった(p=0.042).本研究結果から,アクティビティケアの実施が活動量の増加にはつながりにくいものの,対人交流の時間の確保につながることが示唆された.
著者
堤 雅恵
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.75-80, 2001-03
被引用文献数
1

日常生活援助を要するために施設に入所している高齢者では,おしゃれに対して消極的になる傾向が顕著である。社交性を高め,生活意欲を引き出す手段の一つに化粧がある。そこで,老人保健施設の入所者8名を対象に化粧を実施したところ,化粧によって対象者の日常生活が活性化した。対象者の化粧についての感想・意見では,年相応でありたいという高齢者自身の意識が根強いことがわかった。
著者
堤 雅恵 佐藤 広美 水田 久美子 山口 健二 好村 朋子 広瀬 春次
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
no.11, pp.23-27, 2007

近年、認知機能を維持したり、不安やストレスを解消したりする方法の一つとして、日記を書く習慣をもつことが推奨されている。しかしながら、仮に日記が高齢者にとって受け入れ難いものとして認識されているならば, 認知機能の維持やストレス解消のための方法とすることは困難であると考えられる。我々が検索した範囲では、高齢者の保健・看護の分野において日記に関する調査は見あたらず、高齢者における日記を書く習慣の実態は把握されていない。そこで今回、高齢者における日記を書く習慣の実態を把握するとともに、日記を書いている人と書いていない人との生活状況を比較した。その結果、多くの高齢者が日記を書く習慣を有しているという実態が明らかとなり、また、日記を書くことが外出や会話の頻度と関連している可能性が示唆された。