著者
内田 英二 木本 理可 塚本 未来 神林 勲
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.255, 2022 (Released:2022-12-22)

就寝前にスマートフォンなどの電子機器使用を制限することにより睡眠関連物質であるメラトニン分泌量が増加して入眠に好ましい効果を示すことが知られている。本研究では就寝前の電子機器使用に関する介入を行い、使用制限が起床時主観的睡眠感と自律神経系活動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。被験者は健康な大学生19名(男性9名、女性10名)として、連続した5日間における就寝前1時間の電子機器使用制限期間、対照とした連続5日間の非制限期間それぞれの条件下における測定に参加した。睡眠評価としてピッツバーグ睡眠調査票(PSQI-J)および起床時睡眠感調査(OSA-MA)の質問紙調査、自律神経系活動の評価として加速度脈波測定器(TAS9VIEW)を用い自律神経バランス測定を実施した。PSQI-Jは初回測定開始時、OSA-MAは各測定期間中の起床時に記入させ、自律神経系活動はHFを副交感神経、LF/HFを交感神経の指標として各測定期間の前後に測定した。また測定期間中のスマートフォン、パソコンなどの電子機器使用時間についても併せて確認した。電子機器の使用時間は制限条件下で約50分程度短くなったが有意差は認められなかった。睡眠の時間的変数では、睡眠時間はいずれの条件も平均で約6.8時間であり条件間の差はみられなかったが、就床および起床時刻の中間点を示すmidpointが制限条件下で約30分有意に早まっており(p<0.05)、睡眠相が前進している状況が確認された。起床時睡眠感調査では制限条件下における起床時眠気因子(p<0.01)、疲労回復因子(p<0.05)が有意な高値を示した。自律神経系活動に関しては非制限条件下でHFの低下傾向とLF/HF の増加傾向が観察された。これらの結果から就寝前1時間の電子機器使用制限は睡眠感および自律神経系活動に好ましい影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
堀本 佳誉 粥川 智恵 古川 章子 塚本 未来 大須田 祐亮 吉田 晋 三和 真人 小塚 直樹 武田 秀勝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1180, 2012

【はじめに】 脳性麻痺(以下CP)児は乳児期に、健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていることが報告されている。健常児の場合、DNA損傷修復能力は発達とともに高まることが示されているが、乳児期以降のCP児に対する研究は行われておらず、発達による変化が見られるかどうかが不明である。また、一般的に健常成人では、過負荷な運動が過剰なDNA損傷を引き起こす。さらに加齢とDNA損傷修復能力には関連性があり、修復できないDNAの蓄積が老化を促進する。CP児は、臨床的に見て加齢が早いと言われてきたが、「生涯にわたる非効率で過負荷な運動による過剰なDNA損傷」と「運動量の不足によるDNA修復能力の低下」が悪循環し、修復できないDNAの蓄積速度が健常者より早くなるために、早老となっている可能性が高い。DNA損傷修復能力を高めるためには、定期的で適度の運動量が必要であるとされている。このためCP児のDNA損傷修復能力を高めるためには、過負荷な運動にならないように、慎重に運動量の決定を行う必要がある。DNA損傷修復能力という視点から、CP児の最適な運動量・頻度を判断し、早老を予防するための研究基盤を確立することを目的に、今回は安静時のCP児のDNA損傷修復能力の解明に焦点を絞り研究を行った。【方法】 対象は、学齢期の脳性麻痺児12名(13.8±4.3歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名、Gross Motor Function Classification レベル1 4名、レベル2 2名、レベル3 6名)とした。脳性麻痺児と学年、性別が一致する健常児12名(14.8±4.4歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名)を対照群とした。DNA損傷修復能力の指標として、尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(以下8-OHdG)濃度の測定を行った。測定には早朝尿を用いた。尿中8-OHdG濃度の測定にはELISA法による測定キット(日本老化制御研究所)を用いた。また、尿中クレアチニン濃度を測定した。8-OHdG濃度をクレアチニン濃度で割り返し、クレアチニン補正を行った。 統計学的検討にはR2.8.1を用いた。シャピロウイルク検定を行い、正規分布が確認された場合はt検定、確認できなかった場合はマンホイットニーの検定を行った。危険率は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者と保護者に対し、書面・口頭にて本研究への協力を要請した。本研究への協力を承諾しようとする場合、書面および口頭にて研究の目的や方法などを説明し、対象者・保護者に質問などの機会を十分与え、かつそれらに対して十分に答えた上で文書にて同意を得た。本研究は千葉県立保健医療大学倫理委員会の承認を得た上で実施した。【結果】 脳性麻痺群の8-OHdG濃度は11.4±2.0 ng/mg CRE、健常群は8.2±0.9 ng/mg CREであった。シャピロウイルク検定の結果、正規分布は確認できなかった。2群間の比較のためにマンホイットニーの検定を行ったが、有意な差は認められなかった。【考察】 Fukudaらは、本研究と同様にDNA損傷修復能力の指標として尿中8-OHdG濃度の測定を行い、脳性麻痺児は乳児期に健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていると報告している。Tamuraらは健常児の尿中8OHdG濃度の測定を行い、発達に伴い尿中8-OHdG濃度が低下することを示している。乳児期のCP児で、尿中8-OHdG値が高値にであったのは、一時的に強い酸化ストレス下にあるのか、何らかの原因でDNA損傷修復能力が低いのか、それとも両方が原因であるのかは不明である。今回の結果では、同年代の健常児と比較し、有意な差は認められなかった。このことより、脳性麻痺児は乳幼児期には一時的に強い酸化ストレス化にあるか、DNA損傷修復能力が低いため尿中8-OHdG濃度が高値を示すものの、その後健常児同様に発達に伴いDNA損傷修復能力が高まることにより尿中8-OHdG濃度が低値となり、健常児と有意な差を認めなくなったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 今後、運動負荷量の処方を尿中8OHdG用いて決定できるかどうかの研究や、DNA損傷修復能力を向上させるための適切な運動負荷量の処方を検討するための研究、CP者の加齢のスピードを遅くするための運動負荷量の処方のための、基礎資料となる点で意義のある研究であると考える。謝辞;本研究は、本研究は科学研究費補助金(若手 スタートアップ 2009~2010)の助成金を受けて実施した。