- 著者
-
近藤 雄一郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
- 雑誌
- 日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第72回(2022) (ISSN:24367257)
- 巻号頁・発行日
- pp.339, 2022 (Released:2022-12-22)
本研究は女子選手を対象としてアルペンスキー競技回転種目における競技成績に応じた急斜面区間における滑走の特徴を明らかにすることを目的とした。分析対象レースは第92回宮様スキー大会国際競技会女子回転競技1本目であった。分析対象者は、1本目競技を完走し、大きな減速を伴う失敗のなかった20名であり、1-7位の者を上位群、8-15位の者を中位群、16位以下の者を下位群とした。分析対象区間は、全53旗門のうち12-29旗門目までの急斜面区間(12-20旗門目を急斜面上部、20-29旗門目を急斜面下部)とした。分析項目は、タイム分析、滑走ライン分析、スキー操作分析であった。タイム分析の結果、各分析対象区間で上位群と下位群、中位群と下位群に有意な差が認められた。また、ターン後半に該当する旗門通過後にストックを突くまでの平均所要タイム及び雪煙の上がっている平均タイムで上位群と下位群の間に有意な差が認められた。滑走ライン分析の結果、上位群と比較すると中位群は旗門上部の滑走ラインが旗門に近く旗門下部でターン弧が膨らむ滑走ラインとなる傾向があり、下位群は旗門通過後の山回りが深く旗門から離れた滑走ラインとなる傾向が明らかとなった。スキー操作分析の結果、特に急斜面下部において、上位群はゲートセッティングに応じてスキー先端の方向付けをコントロールしているのに対し、中位群は多くのターンで旗門通過時にスキーの先端は斜面下方向を向いており、下位群は多くのターンで旗門通過時にスキー先端は次の旗門方向を向いていた。以上のことから、急斜面区間をより速いタイムで滑走するためには、エッジング時間を短くすることで除雪抵抗による減速を最小限に留め、ゲートセッティングに応じたスキーの方向付け及び旗門通過後の素早いストックワークによる切り換え操作によってタイムロスの少ない滑走ラインを維持して滑走することが求められる。