著者
石合 純夫 横田 隆徳 古1川 哲雄 塚越 廣 杉下 守弘
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.259-264, 1990 (Released:2006-07-06)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

側頭葉後下部の出血性脳梗塞により,漢字の失書をきたした症例を対象とし,書取り不可能な漢字の視覚認知と書字動作に障害がないかを明らかにするため,写字過程の詳細な分析を行った。書取り可能な漢字と不可能な漢字から,字画数が一致するように選んだ28字の写字過程をアイカメラで記録した。手本の平均注視時間と平均注視回数は,書取り可能な漢字と不可能な漢字の間で差がなかった。また,平均書字時間も差がなく,写字過程における筆順の誤りは,書取り可能・不可能な漢字とも1文字ずつであった。以上より,書取り不可能な漢字であっても,手本を見て書くべき漢字がわかった場合には,ただちに自分の字体で正しく書き下すことができることが明らかとなった。このことは字画数が多いほど,また,習得学年が高いほど漢字の失書が重度となる点とともに,側頭葉後下部損傷による漢字の失書が,漢字の想起障害による可能性を示唆するものと考えられた。
著者
小田嶋 奈津 松永 高志 古川 哲雄 塚越 廣
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.231-236, 1990-06-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
14

発病1年7ヵ月後に一側上肢の粗大振戦様の激しい不随意運動の出現を認めた橋出血の1例について報告した.この不随意運動は運動時と姿勢時に認められ, 表面筋電図では上腕二頭筋と上腕三頭筋で2~3Hzの高振幅, 相反性の律動的群化放電を認め, 同時に躯幹筋や胸鎖乳突筋にも小さな群化放電を認めた.本例の不随意運動は活動時振戦に属するが, 運動時, 姿勢時とも振幅が極めて粗大で, あまりにも激しい動きであった.MRIでは一側橋被蓋部のみに病巣が確認され, 不随意運動の責任病巣を考える上で興味ある症例と考えた.