著者
尾形 凡生 植田 栄仁 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.251-259, 1995-09-15
被引用文献数
3 10

数種類のジベレリン生合成阻害物質がウンシュウミカンの着花促進に及ぼす効果について調査した.<BR>1. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびCCCを秋期 (1986年10月末~12月末) に3回散布したところ, パクロブトラゾールおよびウニコナゾールーP処理が翌春の着花数を有意に増加させた.<BR>2. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびGA<SUB>3</SUB>を冬期 (1992年12月19日~1993年3月10日) に散布処理した. パクロブトラゾールでは, 1月10日および1月30日, ウニコナゾール-Pでは1月30日, プロヘキサジオン-Caでは, 12月20日~1月30日の処理によって有意な花数増加が得られた. GA3は各処理時期とも着花を著しく抑制し, とくに1月10日処理における着花抑制効果が高かった.<BR>3. 1993年1月30日にパクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの100,300,1,000および3,000ppm溶液を散布したところ,パクロブトラゾールでは100~1,000ppm, ウニコナゾール-Pでは100ppm, プロヘキサジオン-Caでは300~1,000ppm処理で花数の増加効果が認められたが, このうちパクロブトラゾールの100ppm処理区では着蕾後の落花 (果) が発生した.<BR>4. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの1,000ppm溶液を1993年1月10日~2月20日に1~3回散布したところ, いずれの薬剤でも3回処理が最も効果的で, 1,2回処理でも花数は増加する傾向にあった.<BR>
著者
尾形 凡生 蓮川 博之 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次 岩垣 功 奥田 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.245-253, 1996-09-15
被引用文献数
3 10

トリアゾール系ジベレリン(GA)生合成阻害物質によるウンシュウミカンの着花促進効果を生理的に説明するため,栄養器官内のGA<SUB>1</SUB>,GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性の季節的消長ならびにパクロブトラゾール処理および収穫時期がウンシュウミカンの内生GA活性に及ほす影響について調査した.<BR>1,発育枝の葉中におけるGA<SUB>1</SUB>活性は,7月26日から9月26日にかけて高まり,翌年の1月28日にかけて減少した後,3月24日には再び高くなった.GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性は,これとはほぼ逆の変化を示し,9月26日に最も低く,GA<SUB>20</SUB>では11月29日にGA<SUB>19</SUB>様物質では1月28日に最も高くなった.腋芽中の各GAの動態は葉とほぼ一致した.<BR>2,2月1日にパクロブトラゾール1,000ppm溶液の葉面散布を行ったところ,着花数が増加するとともに,3,4月における葉中のGA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性が低下した.しかし,GA<SUB>1</SUB>活性には影響が認められなかった.<BR>3,ウンシュウミカン成木に対して,10月中旬に果実を全収穫する早採り区と,その2か月後に収穫する晩採り区を設けたところ,早採り区の方が晩採り区に比べて,翌春の着花量が多かった.処理樹の内生GA活性は,早採り区の11月末および1月末におけるGA<SUB>20</SUB>様活性が晩採り区に比べ低くなった.<BR>以上の結果より,パクロブトラゾール処理は,活性型GAではなくその前駆物質の含量を低下させるが,これは着花数の多い早期収穫樹の内生GAの反応と一致しており,パクロブトラゾールの着花促進効果を裏付けるものと考えられる.
著者
塩崎 修志
出版者
大阪府立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

実験1.ポリアミンの処理方法の検討 塩基態および塩酸塩態ポリアミンの花振るい抑制における効果の差違を検討したところ,プトレッシンとスペルミジンでは効果に差違は無かったが,スペルミンは塩酸塩態の方が抑制効果は高かった.巨峰を用いて,プトレッシン,スペルミジンおよびスペルミンの2種あるいは全てを混用して花振るいに及ぼす影響を調査したところ,いずれの組み合わせにおいても着粒率は増加せず,果粒重量にも影響しなかった.また,茎葉を含め花房にポリアミンを噴霧処理した場合においても,巨峰の着粒は処理により促進されなかった.実験2.ポリアミンがブドウのエチレン代謝に及ぼす影響 ブドウの葉を用いて,試験管内での葉からのエチレン放出に及ぼすポリアミン処理の影響を調査したところ,塩基態ポリアミンは有意に葉からのエチレン発生を抑制した.また,抑制効果はスペルミジンとスペルミンでは3mMの濃度で高かったのに対してプトレッシンは5mMの濃度で高く,エチレン発生抑制効果の最適濃度がそれぞれ異なることが明らかとなった.花房にプトレッシンを処理した場合においても,花房からのエチレン発生は有意に抑制された.なお,果粒中のエチレンの前駆体であるアミノサイクロプロパン1カルボン酸は常法では分析できなかった.ブドウ果粒には分析を妨げる供雑物が多く含まれるため,これらの供雑物を除くことのできる新たな手法が必要であると考えられる.実験3.ブドウ花粉の発芽に及ぼすポリアミンの影響 デラウェアと巨峰の花粉を用いて,試験管内での花粉発芽におけるポリアミンの影響を調査したところ,巨峰においてはポリアミンは花粉発芽に影響しなかったが,巨峰に比べ花粉稔性の低いデラウェアでは培地へプトレッシン処理により花粉発芽が促進された.また,高温下や発芽に必要なホウ酸無添加培地上での花粉の発芽に対しても培地へのポリアミン添加は発芽を促した.また,開花前にポリアミンを処理した花から採取した花粉は無処理花粉に比べて発芽率は高かった.以上から,落果を助長するエチレンの発生抑制と花粉発芽促進による受精促進がポリアミンによるブドウの着粒促進効果の要因と推察された.
著者
卓 小能 塩崎 修志 尾形 凡生 堀内 昭作
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.664-669, 2002-09-15
被引用文献数
1

当年生の野生種のエビヅルと栽培品種の'キャンベル・アーリー'および'巨峰'実生を用いて, 巻きひげの着生と葉の形態的変化の関係を調査した.用いた全てのブドウにおいて, 巻きひげ着生前の葉の葉序は144°の螺旋状を呈し, 巻きひげ着生後は180°の互生であった.Galetの指標による巻きひげ着生前後の葉の形態的差異は, いずれのブドウにおいても認められなかった.巻きひげ着生前の葉縁鋸歯数は発育に伴って増加し, 巻きひげ着生節位の葉の葉縁鋸歯数はエビヅル, 'キャンベル・アーリー'および'巨峰'実生でそれぞれ26.1, 27.5, 28.8であった.巻きひげ着生後の葉縁鋸歯数は, 'キャンベル・アーリー'と'巨峰'では漸増したのに対し, エビヅルの増加は非常に緩慢であった.また, 実生の発育に伴って鋸歯角度が小さくなり, 鋸歯間裂刻が深くなった.葉脈間の裂刻の深さは'キャンベル・アーリー'と'巨峰'では巻きひげの着生前後で差が認められなかったが, エビヅルでは巻きひげの着生後に深くなった.