著者
塩崎 宏子 石津 綾子 須田 年生
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.3-12, 2018

<p>加齢は,クローン性造血(clonal hematopoiesis)という現象をもたらす。加齢により,遺伝子変異に伴うクローン造血の存在が観察されるようになるが,血液学的異常が認められない場合はCHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential)と称されている。近年のゲノム解析より,その原因となる特定の遺伝子変異も明らかになっている。CHIPは高齢者において高頻度となり,やがて造血器腫瘍発生の引き金となる。すなわちこのクローン性造血は造血器腫瘍のリスクを上げ,そのリスクはクローン性造血のないグループと比較すると10倍にも増加する。造血幹細胞の老化および腫瘍化のメカニズムが徐々に解明されつつあり,老化細胞を除去する(senolysis)効果も確認され,幹細胞老化の分野においては,今後の臨床応用が期待される。</p>
著者
山口 裕也 山縣 元 平瀬 伸尚 塩崎 宏 桑野 晴夫 渡辺 次郎
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.70-75, 2006 (Released:2006-12-08)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

症例は83歳男性.心窩部のつっぱり感を自覚し当科受診.血中膵酵素の増加とCTにて膵全体のソーセージ様腫大を認め,自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)が疑われ入院となった.ERCPでも膵体部を中心に主膵管の狭細化を認めAIPが強く疑われたが自己抗体,IgG,IgG4の増加を認めず確診にいたらなかった.一旦退院となるも退院2日後より排便困難が出現し再入院.大腸内視鏡で直腸の狭窄と粘膜の浮腫を認め,CTでは膵腫大に加え新たに腹水を認めた.直腸生検にて異型リンパ球の粘膜内浸潤を,また腹水中にも異型リンパ球を認めたため可溶性IL-2レセプター(sIL-2R)を測定し3,183U/mlと高値を確認,悪性リンパ腫と診断した.化学療法(THP-COP)にて膵腫大,膵管狭窄は改善し腹水は一旦消失したが,その後短期間のうちに治療抵抗性となり呼吸不全にて死亡した.
著者
塩崎 宏子 星野 茂 押味 和夫 溝口 秀昭 続木 千春 肥田野 信 森 茂郎
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.374-378, 1984
被引用文献数
7 12

Neoplastic angioendotheliosisは血管内控に異常細胞が栓塞し,主に皮膚および中枢神経系の症状をきたすまれな疾患である,現在,本邦の3例を含め, 20例足らずの報告があるにすぎず,生前の診断が困難で有効な治療法が確立されていない.われわれは,皮膚症状を呈した本疾患に,多薬併用療法を行ない,寛解を得た症例を経験したので報告する.症例は64才,女性.主訴は発熱,下肢の紅斑および浮腫.現病歴は入院6ヵ月前より,めまい,悪心,意識消失発作,下腿の紅斑.浮腫,汎血球減少症,レイノ-現象が徐々に進行し,全身状態の悪化を伴つた.入院時現症では,眼底の出血および白斑,甲状腺腫大, 1横指の脾腫,腋窩リンパ節腫大を認めた.入院時検査成績では,汎血球減少症,単球の増加および単球類似の異型リンパ球増加, LDHの増加, CRP陽性, T<sub>3</sub>の減少とrT<sub>3</sub>の増加, BMGの増加が認められた.皮膚病変部の生検からneoplastic angioendotheliosisと診断した.本疾患では,従来試みられてきたステロイドホルモンや抗生物質が無効であることが多く,生検にて認められた血管内異常細胞が,悪性リンパ腫の腫瘍細胞に類似したものであることより,悪性リンパ腫に用いられるサイクロホスファミド,アドリアマイシン,ビンクリスチン,プレドニゾロンの多薬併用療法すなわちCHOP療法を施行したところ,寛解を得た.本報告では特にneoplastc angioendotheliosisの治療に関して文献的考察を加えた.