著者
塩沢 健一
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.2_203-2_224, 2009

In a "yes or no" type referendum, people are forced to choose "all or nothing" on a specific issue. However, voting for "yes" or "no" may not be the optimal behavior for those who have neutral attitude toward the issue. In this paper, I analyze the degree to which the choice set of "yes or no" is adequate for referendums and the degree to which referendums can work as a policy-making device for discovering the "will of the people." The data is based on a mail survey conducted in Iwakuni City of Yamaguchi Prefecture.   Although Iwakuni voters "disapproved" of transferring extra forces from an-other base to Iwakuni by an overwhelmingly large margin in the referendum, respondents were divided when I asked them a question that included a choice that considering the financial benefits brought about by presence of U.S. forces. The case of Iwakuni suggests that the "will of the people" cannot be settled with a single balloting and that using a referendum is not necessarily the most appropriate approach when an intermediate solution is available.
著者
塩沢 健一
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.125-137,174, 2004-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

住民投票とその後の選挙で投票結果にズレが生じる「民意のねじれ」とも呼ぶべき現象がしばしば起こるのは何故か。これまで一般的には,「政策か人か」という投票対象の違いなどによるものと考えられてきた。だが,こうした解釈は「民意のねじれ」の一部分を説明しているに過ぎない。そこで本稿では,両者の年代別投票率の違いに着目した。両者を比較すると,若い層ほど住民投票での投票率が高く,また「反対」傾向も強い。徳島市の住民投票では通常の選挙の傾向とはやや異なり,40代の投票率が最も高く,20代と70代以上が最も低かった。こうしたデータを基に,住民投票と選挙では各年齢層による投票参加の傾向が異なることもまた,「民意のねじれ」に一定の影響を与えている可能性が高いことを明らかにした。以上の分析結果から,最後に,住民投票で若年層の投票参加が高まる要因などについての仮説を提出する。
著者
塩沢 健一
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度の研究においては、市庁舎整備をめぐり5月20日に住民投票を実施した鳥取市に着目し、投票日の約1週間後より、郵送調査を行った。市の有権者3,000名を対象として実施した結果、1,189件の有効回答を得た。本調査の当初の目的は、「平成の大合併」により誕生した広域自治体における「民意」のあり方について、本研究課題の初年度に長野県佐久市で実施した意識調査との比較も交えながら、検討を加えることにあった。そうした観点からは、佐久市のケースと同様に、旧鳥取市と旧町村部とで、有権者の投票行動の傾向に一定の差異のあることが明らかとなった。他方、鳥取市の住民投票では当初から、2つの案から一方を選ばせる設問形式や争点提示の仕方に疑問の声が上がっていたが、住民投票で過半数の支持を得た「耐震改修案」が、その後の検証の過程で「当初案では実現不可能」と結論付けられ、市が計画していた新築移転案の対案として耐震改修案を提示した議会の説明責任が問われる状況となった。そうした経緯を踏まえて分析を試みたところ、住民投票を実現させた議会に対する有権者の「信頼」が、耐震改修案への投票と相関のあることが明らかとなった。すなわち、庁舎整備をめぐる「実質的な選択」という側面においては、鳥取市の投票結果に正統性があるとは言い難い。このように、鳥取市の事例は、住民投票における議会の「議題設定」という観点から見て、重要な教訓を残したと言える。その点において、本年度の研究の成果は、当初の計画において想定していた以上に、貴重なものとなったと言える。