著者
塩﨑 大輔 橋本 雄一
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.1-6, 2021-05-12 (Released:2021-05-21)
参考文献数
9

本研究はスキーリゾート開発が著しい北海道倶知安町のひらふ地区を対象とし,開発の経緯を施設建設によって概観した後,各施設に関する土砂災害の危険性を空間的に検討することで,スキーリゾート開発と災害リスクとの関係を明らかにした。 そのために建築確認申請計画概要書から作成したデータベースで開発を年代別に分析し,当該地区の土砂災害リスクを国土数値情報の災害関連情報とあわせて検討した。ひらふ地区の開発はバブル崩壊前後と2000 年代後半に拡大した。特に海外からの不動産投資が急増した2000 年代後半からの開発では,スキー場に近接した施設建設の適地が不足したことにより,バブル期の開発に比べ,その開発範囲は河川沿いの急傾斜地にきわめて近い場所まで広がっていた。ここには高級コンドミニアムなど比較的規模の大きい建築物が複数立地しており,近年の観光施設集積地の縁辺部における大型開発が,土砂災害の危険性を高めていた。これらの結果から,対象地域では好景気の時期に開発が進んでいることや,開発の時期が新しいほど土砂災害の危険性が高い場所で施設建設が行われていることが明らかになった。