著者
葛西 光希 木村 圭司
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.37-48, 2014-02-26 (Released:2014-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

日本でケッペンの気候区分を適用すると,東北から北海道にかけての地域で,温帯から亜寒帯の遷移帯がみられる。本研究では,この遷移帯付近に位置し,かつ比較的小さな範囲である北海道(北方領土は除く) を対象としてケッペンの気候区分を適用した。また,気候の面的な分布を見られるよう,気象台やAMeDAS観測所のデータより詳細な,1kmメッシュデータを用いて区分を行った。この結果,北海道の代表的な気候区とされている亜寒帯のDf(Dfa・Dfb・Dfc) 以外にも,温帯のCfa・Cfb・Cs* や,それにわずかながらDwb,寒帯のETと,さまざまな気候区が存在することが分かった。また,1971~2000年,1981~2010年の2期間について同様の解析を行い,気候区が変化した地域を明らかにした。2期間で生じたすべての気候区変化パターンをクロス集計により明らかにした。さらに,各変化パターンの代表メッシュを抽出し,気温や降水量のデータを用いて,変化が生じた理由を説明した。北海道において,ある気候区が変化するパターンとその逆方向の気候区への変化パターンが混在した地域が見られ,この地域は気候区の遷移帯であると判断できる。遷移帯において気候区が変化したメッシュ数を比較すると,温暖化の傾向を示すメッシュ数が多かった。北海道という比較的小さな地域でもケッペンの気候区分により気候変動の一側面が把握できたことから,小地域におけるケッペンの気候区分が有効性を持つ場合があることが確認された。
著者
成田 健一 三上 岳彦 菅原 広史 本條 毅 木村 圭司 桑田 直也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.403-420_1, 2004-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
33 30

新宿御苑を対象に夜間の冷気の「にじみ出し現象」の把握を主眼とした微気象観測を夏季約7日間連続して行った.緑地の境界に多数の超音波風速温度計を配置し,気流の直接測定から「にじみ出し現象」の把握を試みた.その結果,晴天かつ静穏な夜間,全地点でほぼ同時に緑地から流出する方向への風向の変化と約1°Cの急激な気温低下が観測された.にじみ出しの平均風速は0.1~0.3 m/sで,にじみ出し出現時にはクールアイランド強度が大きくなる.このときの気温断面分布には流出した冷気の先端に明確なクリフが現れ,その位置は緑地境界から80~90 mであった.このような夜間の冷気の生成に寄与しているのは樹林地よりも芝生面で,芝生面は表面温度も樹冠より低い.芝生面の顕熱流束は夜間負となるが,にじみ出し出現夜はほぼゼロとなる.すなわち,クールアイランド強度の大小と大気を冷却する効果の大小は,別のものと考えるのが妥当である.
著者
早坂 洋史 木村 圭司 工藤 純一
出版者
Japan Association for Fire Science and Engineering
雑誌
日本火災学会論文集 (ISSN:05460794)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-9, 2005 (Released:2011-03-16)
参考文献数
14

ロシア極東サハ共和国の森林火災傾向について気象データを基に検討した。最近の焼損面積の増加傾向は,気候変動に伴う気温の上昇,5~9月の降水量の減少,特に,日平均降雨量の半減傾向の影響が原因と思われた。この低降雨量条件下で,2002年に焼損面積約2.3万km2の大規模な森林火災がヤクーツク周辺で発生した。この大火災の経過を,衛星観測と気象計測とのデータを使って詳細に解析し,大火災となった原因について考察した。(オンラインのみ掲載)
著者
戸祭 由美夫 平井 松午 平川 一臣 木村 圭司 増井 正哉 土平 博 澤柿 教伸 小野寺 淳 財城 真寿美 澤柿 教伸 宮崎 良美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

幕末の蝦夷地には、ロシア帝国をはじめとする列強の進出に備えるため、幕府の箱館奉行所をはじめ、東北諸藩による陣屋・囲郭が軍事施設として沿岸各地に建設された。本研究は、そのような軍事施設を研究対象として、歴史地理学・地図学・地形学・気候学・建築学の研究者が共同研究チームを組んで、古地図・空中写真・数値地図・気象観測資料といった多様な資料や現地調査によって、とりわけ蝦夷地南西部に主たる焦点を当てて、それら軍事施設と周辺部の景観を3次元画像の形で復原した。
著者
木村 圭司 財城 真寿美 戸祭 由美夫
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.13-19, 2014-03-12 (Released:2014-09-30)
参考文献数
5

現在の気象データを用いて,幕末期に北海道島内で東北6 藩が経営していた16 か所の蝦夷地陣屋周辺の冬季の気候の特徴を明ら かにした。冬季の気温については,道南部と東北地方北部との間に大きな違いはみられなかった。これに対して道東部の気温は,東北地方南部と比較して,平均気温でも最低気温でも5~10℃低い傾向が見られた。このことから,東北地方北部に本城をもつ津軽藩と南部盛岡藩が経営した道南の陣屋では,本城とほぼ変わらない気温のもとで越冬できた一方で,東北地方南部に本城をもつ会津藩や仙台藩が経営した道東の陣屋では,本城よりも低温下での厳しい越冬を強いられていたといえる。陣屋がおかれた場での冬型気圧配置時の北西季節風の風向風速に着目すると,日本海側の陣屋と道東の陣屋では冬型気圧配置による北西季節風(暴風雪)が直撃していた可能性が高い。建物周辺が尾根の風背側に位置する秋田藩の宗谷陣屋と南部盛岡藩の室蘭陣屋,北西季節風吹走時でも弱風になる地域に位置する仙台藩の白老陣屋はこうした暴風雪へ配慮した立地の陣屋であろう。
著者
葛西 光希 木村 圭司
出版者
The Hokkaido Geographical Society
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.37-48, 2014
被引用文献数
1

日本でケッペンの気候区分を適用すると,東北から北海道にかけての地域で,温帯から亜寒帯の遷移帯がみられる。本研究では,この遷移帯付近に位置し,かつ比較的小さな範囲である北海道(北方領土は除く) を対象としてケッペンの気候区分を適用した。また,気候の面的な分布を見られるよう,気象台やAMeDAS観測所のデータより詳細な,1kmメッシュデータを用いて区分を行った。この結果,北海道の代表的な気候区とされている亜寒帯のDf(Dfa・Dfb・Dfc) 以外にも,温帯のCfa・Cfb・Cs* や,それにわずかながらDwb,寒帯のETと,さまざまな気候区が存在することが分かった。また,1971~2000年,1981~2010年の2期間について同様の解析を行い,気候区が変化した地域を明らかにした。2期間で生じたすべての気候区変化パターンをクロス集計により明らかにした。さらに,各変化パターンの代表メッシュを抽出し,気温や降水量のデータを用いて,変化が生じた理由を説明した。北海道において,ある気候区が変化するパターンとその逆方向の気候区への変化パターンが混在した地域が見られ,この地域は気候区の遷移帯であると判断できる。遷移帯において気候区が変化したメッシュ数を比較すると,温暖化の傾向を示すメッシュ数が多かった。北海道という比較的小さな地域でもケッペンの気候区分により気候変動の一側面が把握できたことから,小地域におけるケッペンの気候区分が有効性を持つ場合があることが確認された。
著者
財城 真寿美 木村 圭司 戸祭 由美夫 塚原 東吾
出版者
北海道地理学会
雑誌
地理学論集 (ISSN:18822118)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.20-25, 2014-03-12 (Released:2014-09-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4

小氷期の末期にあたる江戸時代後期には,まだ気象庁による公式の気象観測が開始されていなかったため,気象庁のデータは当時までさかのぼることができない。一方で,幕末期の函館において1859~1862 年の4年間にわたり,ロシア領事館付のロシア人医師アルブレヒトが気象測器を使用した観測記録が残存していることが分かった。この幕末期の気象観測データは,現在の函館地方気象台のデータとは観測地点や観測頻度が異なるため,その差を補正するために気温データについて均質化を実施した。幕末期の函館の気温を20 世紀の函館地方気象台の気温と比較したところ,暖候期の低温と寒候期の高温傾向がみられた。その要因として,幕末期の観測地点が,現在より海洋性の性質を示すことから,海風の影響を受けやすかったと考えられる。また,幕末期の年平均気温は,函館の最近30 年間の平年値よりも約2.0℃低く,その寒冷な傾向は幕末期から20 世紀初頭まで継続していた。