著者
増成 和敏
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.5_51-5_60, 2013-01-31 (Released:2013-03-14)
参考文献数
24

本論は,松下電器において真野善一が目指したデザインマネージメントについて,主として真野の発言,記述とヒアリング調査より,以下の内容を明らかにした。1) 真野は,様々な場面を利用して,経営幹部,関連部門に対してデザイン啓蒙の発言をした。2) 施策としては,デザイン協議会, デザイン研究グループを発足させ,初のデザイン方針発表会を開催した。3) 真野の施策はデザイン力強化とそのためのデザイン組織の一元化を目指したが,会社の理解を得ることは難しく,デザイナーは各事業部に分散した。4) 真野は,造形こそ主たるデザインマネージメントでありデザイン評価に繋がるとして取り組んだが,会社はデザイン組織マネージメントを求めていた。
著者
増成 和敏 石村 眞一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.33-42, 2009-07-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本論は,家具調テレビのデザイン成立過程を明らかにすることを目的として,テレビ受像機「嵯峨」に関し,主として文献史料調査より,以下の内容を明らかにした。1)広告記述で使用された「家具調」の表現が「家具調テレビ」のデザインを誘発する要因のひとつとなった。2)家具調の意味は,使われ始めた当初,和風,日本調と必ずしも一致するものではなかった。3)「嵯峨」は,特徴的なデザインと和風ネーミングの大量広告により,家具調テレビの典型となった。4)「嵯峨」の特徴は,張り出した天板,スピーカーグリル桟,本体と一体感のある脚,天然木の木質感表現である。5)「嵯峨」は,シリーズ展開されており,初代「嵯峨」とは差別化された多様なデザインが展開されている。
著者
増成 和敏
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2010

This paper summarizes the transition of TV design in Japan and the development of Kagu-cho style TV. When Japan imported the technology for TV from Western countries, they also imported designs. The consolet type with 4 detachable rounded legs, developed in the Western countries, became mainstream in Japan in the late 1950s. The Japanese console type in the 1960s had also 4 rounded legs but its design was not yet unique to Japan. In this period, the replacement demand constituted a large share of the demand for monochrome TV sets. Then, Kagu-cho TV was developed as a trigger for purchase. Behind the development of Kagu-cho TV in the mid-1960s was the modern Danish design. It was clear that Japanese Kagu-cho TV was not a follower of the American design considering the process of its birth. In newspaper ads at the time, the word “Kagu-cho” had been used before “Saga” was launched, and various manufacturers commercialized designs which expressed “Kagu-cho” style. The word “Kagu-cho” in the ads was one of the factors that created “Kagu-cho” design. At first, “Kagu-cho” didn’t necessarily mean Japanese style but later, “Saga”, whose name and design was Japanese style, was introduced with a big advertising campaign. The campaign created an image of Japanese style for Kagu-cho TV and made “Saga” its representative. The features of “Saga” were a projecting top board, speaker grille, the legs harmonized with the body and natural wooden texture. For the “Saga” series, various designs that differentiated from the 1st generation design were introduced. The design of “Saga” was influenced by “Asuka”. The reason why “Asuka” has an image of Japanese style is because the advertising campaign created an image in association with “Azekura-zukuri”, Japanese traditional structure. Considering the creation process of Kagu-cho TV in relation to design application, Sanyo Electric first applied patents for the design features that characterize “Saga”. Sanyo launched “Nihon”, a Kagu-cho style TV. This meant that behind the birth of Kagu-cho TV was the design trend at that period. To summarize, even though a design is created by an individual designer, the era and society is apparent in the background. Regarding TV sets, only the designs that were suitable for Japanese lifestyle survived among those brought in from the Western countries. Then Japanese manufacturers came to take into account design for product development and gradually Japanese unique design became more important. As a result, Kagu-cho TV emerged.
著者
永野 克己 増成 和敏
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.76-83, 2017

1987(昭和62)年に発売された携帯電話初号機は、通話用途中心の機器で重量は約900g である。以降、携帯電話は小型化と多機能化が並行して進む。通話に加え、メール、ウェブ、カメラ、テレビ、電子マネーなど用途が拡大し、ユーザ・インタフェースが変化する。 本研究は、携帯電話のユーザ・インタフェースデザインの変遷を明らかにすることを目的とし、操作キーの変容に着目する。調査対象は1987(昭和62)年から2015(平成27)年に発売された528 機種とする。初号機TZ-802B と2015(平成27)年モデルP-01H を比較し、削除された操作キー(電源キー、リダイヤルキー、音量調節キー、ロックキー)を抽出、その変容を調査した。電源キーは終了キーに統合され電源/ 終了キーとなった。リダイヤルキーは単独キーが削除され、カーソルキーに割り当てられた。音量調節キーとロックキーは削除された。これらの変化はP-01H で起きたのではなく、TZ-802B からP-01H に至る過程で起きた。音量調節キー削除を除き、いずれも標準的なユーザ・インタフェースとなりP-01H に至ることが確認できた。電源/ 終了キーの初出は1996(平成8)年で、2001(平成13)年以降はノキア端末を除き全機種電源/ 終了キーとなる。要因は、待受時間増加に伴う電源キー操作頻度の低下による電源キー削減と、誤操作時のリスク軽減の観点からの終了キー統合であると推測する。リダイヤルキーのカーソルキー割当の初出は1997(平成9)年で、2009 年以降は全機種カーソルキー割当となる。要因は、リダイヤル機能と対称的な着信履歴機能の追加に伴い、両機能の操作キーを対称的に配置し、かつワンタッチアクセス可能となる要件を満たすため、カーソルキー割当となったと推測する。ロックキー削除の初出は1989(平成元)年で、以降、二つ折り型やフリップ型など誤操作が起きにくい形状の端末においてロックキーが非搭載となる。また、音量調節キーに関しては通話中の音量調節操作のユーザビリティの観点から搭載も継続しており、P-01H における音量調節キー非搭載は標準的なUI ではないと推測する。
著者
増成 和敏
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.91-100, 2012-05-31
参考文献数
16
被引用文献数
1

本論は,松下電器における真野善一による初期のデザイン開発と製品デザインについて,主として意匠公報と文献史料より,以下の内容を明らかにした。<br>1)真野の意匠登録は,冷蔵庫,扇風機,蓄電池,ラジオ受信機,テレビ受像機から宣伝用バスまで多岐に亘っている。<br>2)真野は,松下電器に入社した1951(昭和26)年 7月から企業内デザイナーとして自ら多くのデザイン開発を行い,1955(昭和30)年末までに,確認できただけでも183件の意匠登録を取得している。<br>3)真野の意匠登録は,松下電器の多くの分野で製品化され,デザイン成果を上げた。<br>4)真野が松下電器入社後,最初にデザインしたとされる扇風機の意匠登録上の考案者は真野ではないが,デザインは真野によるものであると推定する。
著者
増成 和敏
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.99-108, 2011
参考文献数
12
被引用文献数
1

本論は,インターナショナル工業デザイン株式会社(IID)の設立経緯について,主として文献史料とヒアリング調査より,以下の内容を明らかにした。1)IIDは,松下幸之助の主導により氏のデザインに対する考えを実現するために設立された社外デザイン事務所である。2)竹岡リョウ一は,松下幸之助の指示によりIIDの設立準備をし,初代社長として経営を任された。3)初代副社長Y・アラン島崎を見出したのは中川電機社長中川懐春であり,アラン島崎の日本進出の意志を松下幸之助へ伝えたことが,IID設立に繋がった。4)IIDのデザイン活動は,松下電器の経営幹部からも期待されていた。IIDは家電製品の典型を創出し,製品評価を高め、販売に貢献した。
著者
増成 和敏 石村 眞一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.27-36, 2010-01-31

本論は,家具調テレビのデザイン成立過程を明らかにすることを目的として,家具調テレビ「嵯峨」に関し,主として文献史料とヒアリング調査より,以下の内容を明らかにした。1)「嵯峨」は,北欧デザインに影響されたが,同様に影響を受けた米国のテレビ受像機の模倣ではない。2)松下電器デザイン部門は,海外のデザイン情報を取り入れ,日本独自のデザイン開発を推進できる状況にあった。3)「嵯峨」のデザインは,ステレオ「宴」に影響され,「宴」は,ステレオ「飛鳥」に影響されている。4)「飛鳥」は,日本調を狙ってデザインされたのではなく,宣伝によって「校倉造り」の造形イメージが付けられた。5)「嵯峨」の形態特徴3要素を具備した最初の意匠出願は,三洋電機からであった。