著者
増田 一男 宮岡 礼子 小島 定吉 岡 睦雄 森田 茂之 丹野 修吉
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

多様体の葉層構造の葉の法方向に関しては色々な不変量が定義されて多くの研究があるが、葉の接方向に関する研究は余り多くない。接方向にアファイン構造を持つ場合には各葉がアファイン多様体になり、その上のアフィン関数が考えられるが、最も基本的なトーラスの場合、アフィン関数はコンパクト葉の上の値で完全に決定され、関数空間の次元がホロノミーによって決まる状況がほぼ完全に解明された。シンプレクティク多様体のラグランジ部分多様体による葉層構造の各葉は接方向にアフィンであり、任意のアフィン多様体はこのようにして実現される。又、コンタクト多様体のルジャンドル部分多様体による葉層構造の各葉は接方向に射影構造を持ち、任意の射影多様体はこのようにして実現される。これらのことが同次座標を使うことにより平行して見通しよく示された。コンタクト多様体の典型的な例であるリーマン多様体の単位接束はCR構造を持つがこれのある(1,3)型のゲージ不変量が消えるための必要十分条件は、リーマン多様体が定曲率-1であることが示された。葉層構造の不変量として最初に発見されたGodbillon-Vey不変量は位相不変が、又G-Vが0なら葉層構造が0に同境かという2大問題はC^<1+α>、P.L.葉層にまでGVを拡張し、かなり研究が進展した。一次元葉層構造と考えられる力学系に関しては、平面の位相同型写像が力学系(=流れ)にうめ込めるかという問題が、写像の非ハウスドルフ集合と関連して研究された。又3次元多様体上の法方向にアフィンである流れで完備であるものについて古典的なり一群を用いて多くの例を構成し、ほぼ分類が完成された。
著者
二木 昭人 吉田 朋好 本多 宣博 増田 一男 村山 光孝
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

今年度は,ケーラー・アインシュタイン計量の存在およびケーラー・リッチソリトンの存在問題において,モンジュ・アンペール方程式の近似解が収束しない場合に現れる乗数イデアル層についての成果を得た.これらの乗数イデアル層と二木不変量との関係を調べることは代数多様体の幾何学的不変式論の意味の安定性,特にスロープ安定性と呼ばれる性質とケーラー・アインシュタイン計量の存在との同値性に関する予想を証明する上で有用である.まず,ケーラー・アインシュタイン計量の存在問題から現れる乗数イデアル層については次の結果が得られた.XをトーリックFano多様体とし,Xはケーラー・アインシュタイン計量を持たないとする.GをXの自己同型群の極大コンパクト部分群,G^Cをその複素化とする.VをG-不変計量を初期計量とするG^C-不変乗数イデアル層の定める部分概型のサポートとする.もし,ある正則ベクトル場に対し二木不変量が正とすると,そのベクトル場が定める半空間とモーメントポリトープの共通部分にVのモーメント像が入ることはない.この結果を用いると2次元射影平面の1点blow-upの乗数イデアル層のサポートが決定できる.ケーラー・リッチソリトンの存在問題は二木不変量の代わりにTian-Zhuの不変量を用いると任意の正則ベクトル場について同様の主張が成立することがわかる.これを用いると2次元射影平面の1点blow-upにケーラー・リッチソリトンが存在することの別証明が得られる.