著者
青山 猛 讃岐 徹治 増田 聖子 湯本 英二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.149-155, 2010 (Released:2010-05-21)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

披裂軟骨脱臼は全身麻酔の気管挿管の合併症として報告され, 外力のかかり方によって前方, または後方に脱臼する. 今回全身麻酔後に発症した前方脱臼症例と後方脱臼症例を経験したので各症例の臨床的特徴について報告する. 症例1:全身麻酔下の手術直後から高度嗄声を認めた. 初診時は右披裂部が固定し, 喉頭筋電図検査では発声時の両側甲状披裂筋に左右同等の活動電位を認めた. 右披裂軟骨前方脱臼と診断し全身麻酔下に整復術を行った. 術後右声帯の可動性と嗄声は徐々に改善し, 術後6ヵ月で声帯運動の左右差はなくなった. 症例2:全身麻酔下の手術直後より高度嗄声を認めた. 初診時は右披裂部の固定を認め, 発声時に左声帯は過内転していた. 右披裂部の固定位より右披裂軟骨後方脱臼と診断し整復術を予定した. しかし, 子供が背後から前頸部にぶらさがり, その直後より嗄声が改善, 再診時は右声帯の動き, 形態も正常となり予定していた手術は中止した. 本症例は後方脱臼が偶然ではあるが徒手整復されたものと考えた.
著者
山田 卓生 蓑田 涼生 三輪 徹 増田 聖子 兒玉 成博 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.283-289, 2011 (Released:2012-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
5

当科で施行した人工内耳埋込術 72 例について、「人工内耳埋込術後に何らかの追加の治療・処置を必要とした症状」を術後合併症と定義し、術後の合併症の有無について診療録の記載より調査を行った。72 例中 9 例(12.5%)に術後合併症を認めた。保存的治療もしくは経過観察のみで対処可能であった合併症(軽度合併症)は 4 例、観血的治療を必要とした合併症(重度合併症)は 5 例であった。軽度合併症の内訳は、味覚障害が 2 例、遅発性顔面神経麻痺が 1 例、人工内耳埋込部の感染が 1 例であった。また、重度合併症は、インプラント故障が 2 例、人工内耳埋込部の感染が 2 例、インプラントの露出が 1 例であった。このうち埋込部感染を認めた 2 例は、基礎疾患との関連が考えられた。インプラント故障を認めた 2 例においては、頭部打撲が原因であった。インプラントの露出を来した 1 例については、人工内耳埋込部と耳掛けの体外部との接触が原因と思われた。
著者
増田 聖子 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.203-206, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
5

88歳女性. 高度認知症のため食事の際に開口しない状態であり, 介護士がペースト食を経管栄養注入用プラスチックシリンジに充填して口腔内に押しだす方法で食事を与えていた. この時シリンジの先端が口腔底に当たり小さな裂傷が生じた. 数時間後に口腔底の血腫, 咽喉頭の浮腫が生じ, 急速に重篤な気道狭窄がおきた. 緊急気管切開および抗菌薬の投与を行ったが, 3日後に口腔底~顎下部の膿瘍形成がみられ, 切開排膿およびドレナージを行った.口腔底外傷は軽傷でも重篤な気道狭窄や深頸部膿瘍をきたすことがあり, 十分に注意する必要がある. また認知症患者の食事介護においては, 使用する器具に配慮が必要であると考えられた.