著者
讃岐 徹治 一色 信彦 中村 一博 湯本 英二
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.54-58, 2007
被引用文献数
1

Thyroplasty was performed under local anesthesia on male-to-female transsexuals (MTF/GID) as well as patients with adductor spasmodic dysphonia (AdSD).<BR>There were 31 patients with MTF/GID who underwent type 4 thyroplasty during the period from 1999 to 2006. Voice fundamental frequency (F<SUB>0</SUB>) rose in all patients. Mean preoperative F<SUB>0</SUB> was 135Hz, and postoperatively the mean value was 236Hz. Type 4 thyroplasty requires specialized skill, and was found to be effective for pitch elevation surgery in MTF/GID. <BR>Forty-one patients with AdSD underwent type 2 thyroplasty with Titanium Bridge between December 2002 and December 2005. These patients were followed up 1 year postoperatively with a questionnaire. 70% of the patients judged their voice as "excellent, " and the remaining patients as improved to "good" or "fair". Type 2 thyroplasty is a highly effective therapy for AdSD.
著者
青山 猛 讃岐 徹治 増田 聖子 湯本 英二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.149-155, 2010 (Released:2010-05-21)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

披裂軟骨脱臼は全身麻酔の気管挿管の合併症として報告され, 外力のかかり方によって前方, または後方に脱臼する. 今回全身麻酔後に発症した前方脱臼症例と後方脱臼症例を経験したので各症例の臨床的特徴について報告する. 症例1:全身麻酔下の手術直後から高度嗄声を認めた. 初診時は右披裂部が固定し, 喉頭筋電図検査では発声時の両側甲状披裂筋に左右同等の活動電位を認めた. 右披裂軟骨前方脱臼と診断し全身麻酔下に整復術を行った. 術後右声帯の可動性と嗄声は徐々に改善し, 術後6ヵ月で声帯運動の左右差はなくなった. 症例2:全身麻酔下の手術直後より高度嗄声を認めた. 初診時は右披裂部の固定を認め, 発声時に左声帯は過内転していた. 右披裂部の固定位より右披裂軟骨後方脱臼と診断し整復術を予定した. しかし, 子供が背後から前頸部にぶらさがり, その直後より嗄声が改善, 再診時は右声帯の動き, 形態も正常となり予定していた手術は中止した. 本症例は後方脱臼が偶然ではあるが徒手整復されたものと考えた.
著者
讃岐 徹治
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.1474-1478, 2018-12-20 (Released:2019-01-16)
参考文献数
23

音声障害は, 正常な声帯振動が生成できなくなるために生じるが, その原因は多岐に渡り, またその背景には年齢, 性差, 職業などさまざまな因子が関連している. 音声障害は健康に影響を与えるのみでなく, 通院治療や仕事の欠勤等により収入にも影響を及ぼし, 社会的にも経済的損失を招く. 運動麻痺を含めた器質的異常があれば器質性発声障害と診断し, 異常がなければ機能性発声障害と診断される. 機能性発声障害の本来の概念は, 発声障害を呈し器質的な異常がない疾患のことである. しかし総説等には過緊張性発声障害, 低緊張性発声障害, 変声障害, 心因性発声障害, 痙攣性発声障害, 音声振戦などの疾患が含まれている. 喉頭ファイバー検査上で器質的な異常がなく, かつ運動麻痺がない疾患群を臨床的な意味での機能性発声障害と呼ぶことが多く, それらの疾患について診療ポイントなどを述べる. 機能性発声障害の多くは過緊張である. 発声時に仮声帯は中央に寄り, 喉頭蓋喉頭面と披裂部の距離が短縮する. 声は粗糙性かつ努力性嗄声になる. また声を出すのに疲れるという発声困難症状が出現する. 低緊張性発声障害は, 声帯の内転運動が弱く, 発声時に声門間隙が生じる. 心因性発声障害は, 喉頭に器質的異常がなく, かつ患者が心因的問題を抱えていることが明らかな場合に, 心因性発声障害を疑い得るとされる. 痙攣性発声障害は, 大脳基底核や神経系統に何らかの異常によって起こる神経難病疾患の一種と考えられており, 喉頭筋の痙攣様異常運動により発声中の声の詰まりや途切れ, 震えを来す原因不明の疾患であり, 内転型, 外転型ならびに混合型に分けられる. 音声振戦症は, 喉頭をはじめとする発声器官の諸筋に起きる振戦, すなわち律動的な相反性反復運動に起因する音声の高さ, または強さの律動的な変動によって発症する.
著者
田中 伸和 江崎 伸一 讃岐 徹治
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-45, 2020

<p>小児気管支異物は,急性期症状が見逃された場合,難治性肺炎として治療されることがある。さらに異物反応の慢性化に伴い摘出に難渋する。今回われわれは,滞留期間の違いで治療経過の異なる小児気管支異物の2例を経験した。症例1は1歳2カ月女児。節分豆を誤嚥した直後から24時間以内に診断・摘出し,良好な経過をたどった。症例2は1歳7カ月男児。持続する咳嗽から肺炎を疑われ,近医で2週間治療され,後の病歴聴取からアーモンドチョコレートの誤嚥が契機だったと判明した。泣き止まないことを主訴に総合病院救急外来を受診し胸部CTで縦隔気腫,頸胸部皮下気腫,左主気管支の陰影と左肺野過膨張を認め,気管支異物が疑われ,当院へ救急搬送され緊急手術となった。硬性気管支鏡で異物の同定が困難なため気管切開術を施行した。経気管孔的に鼻咽腔内視鏡を挿入したが,気管内の炎症が強く異物を摘出できなかった。全身管理と抗菌薬による肺炎治療を行い,硬性気管支鏡下で異物を摘出し救命しえた。長期滞留の影響で気管内の炎症が強い場合,複数回の手術も視野に入れた治療選択を検討すべきと考えた。</p>
著者
讃岐 徹治
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual56, no.Abstract, pp.S5, 2018 (Released:2018-09-14)

痙攣性発声障害は、喉頭に器質的異常や運動麻痺を認めない発声障害の一つで、発声時に内喉頭筋の不随意的、断続的な痙攣による発声障害をきたす疾患であり、国内外ともに内転型痙攣性発声障害に対する根本的な治療はない。チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型は、発声時に不随意的、断続的に強く内喉頭筋が内転することで声門が過閉鎖し症状が発現することに着目し、発声時に声門が強く内転しても声帯が強く閉まらないように甲状軟骨を正中に切開し、両側甲状披裂筋の付着部を甲状軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式であり、京都大学名誉教授一色信彦先生により報告された。チタンブリッジは、世界に先駆けて開発された新規原理の医療機器で、本邦独自の医療技術である。本治療は、その有効性により患者のQOL向上に寄与し、標準治療になりうるものと考え、2014年より難治性疾患等克服研究事業でチタンブリッジの実用化に向けた研究「内転型痙攣性発声障害に対するチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型の効果に関する研究 」を開始した。チタンブリッジは、厚生労働省の先駆け審査制度指定品目医療機器第一号に2016年2月10日付けで指定を受け、翌年12月15日に先駆け指定品目の中ではじめて薬事承認された。我々がこれまで進めてきた医師主導治験による高度管理医療機器開発と先駆け審査指定後の開発について述べる。
著者
讃岐 徹治
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.1424-1426, 2018-11-20 (Released:2018-12-05)
参考文献数
11
被引用文献数
2
著者
中村 一博 一色 信彦 讃岐 徹治 三上 慎司
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.310-319, 2007-06-10
被引用文献数
10 15

Gender Identity Disorder (GID)は性同一性障害といわれ,生物学的性別と心理社会的性別が解離している病態である。<br>今回われわれはmale to femaleのGID (MTF/GID)症例に対し,話声位(SFF)の基本周波数を上昇させる目的でPitch Elevation Surgeryを施行した。その成績について報告する。<br>症例は1999~2006年に当院を受診し手術を施行したMTF/GIDの32例である。32例に対し甲状軟骨形成術4型(4型)を施行した。そのうち24例には喉頭隆起切除術を併せて施行した。<br>32例全例のSFFは上昇した。術前の平均SFFの基本周波数は133.8 Hz,術後は平均237.8 Hzであった。局所麻酔にて手術を施行しているため,全例ともに術中に患者の納得のいく基本周波数に調節することができ満足が得られた。<br>4型はMTF/GID症例におけるPitch Elevation Surgeryとして有用であると思われた。
著者
讃岐 徹治 一色 信彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.381-386, 2005-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

痙攣性発声障害は、まれな疾患で病態も全く不明といってよく、有効な治療もないと考えられてきた。現在、神経筋接合部に作用するボツリヌストキシンが痙攣性発声障害に応用され、外来で治療でき恒久的な障害も残さない利点があることから、世界的に普及している。しかし有効期間が3-6カ月であり再注射が必要という問題点もある。われわれは、内転型痙攣性発声障害患者に対して声門過閉鎖の防止を目的に喉頭枠組みを開大し、持続的で再発の可能性が少ない甲状軟骨形成術2型を1997年6月から行い、極めて良好な結果を得ている。そこで2004年10月までに得られた手術実績 (64症例、66件) をもとにそれらの症例をまとめ、その手術適応と手術のコツを中心に述べた。本手術の術式は決して難しくはないが、甲状軟骨の切開、剥離さらに開大幅の調節を慎重に正確に行うことが、手術成功に必要な条件であると考えられた。
著者
讃岐 徹治 一色 信彦 中村 一博 湯本 英二
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.54-58, 2007-12-01 (Released:2012-09-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

Thyroplasty was performed under local anesthesia on male-to-female transsexuals (MTF/GID) as well as patients with adductor spasmodic dysphonia (AdSD).There were 31 patients with MTF/GID who underwent type 4 thyroplasty during the period from 1999 to 2006. Voice fundamental frequency (F0) rose in all patients. Mean preoperative F0 was 135Hz, and postoperatively the mean value was 236Hz. Type 4 thyroplasty requires specialized skill, and was found to be effective for pitch elevation surgery in MTF/GID. Forty-one patients with AdSD underwent type 2 thyroplasty with Titanium Bridge between December 2002 and December 2005. These patients were followed up 1 year postoperatively with a questionnaire. 70% of the patients judged their voice as “excellent, ” and the remaining patients as improved to “good” or “fair”. Type 2 thyroplasty is a highly effective therapy for AdSD.