著者
豊島 めぐみ 梶村 順子 渡辺 敦光 本田 浩章 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.150, 2007

Rev1はDNAポリメラーゼYファミリーに属する損傷乗り越えDNA合成酵素である。Rev1は損傷乗り越え修復において中心的な役割をしていると考えられているが、発がんへの関与は、未だ解明されていない。これまで、われわれの研究室ではRev1の生化学的解明を行ってきた。今回我々は、Rev1トランスジェニックマウスを作成し、発がんにおける役割について解析を行った。<BR>6週齢のC57BL/6の野生型、Rev1トランスジェニックマウスに、N-methyl-N-nitrosourea (MNU)50mg/ kgを二度にわたり、腹腔内投与した。その後、終生観察し、発がん頻度、生存率について、野生型と比較した。<BR>Rev1トランスジェニックマウス雌においては100日以内から胸腺リンパ腫がみられ始めた。トランスジェニックマウス雌では、野生型と比較して早期に、かつ高頻度で胸腺リンパ腫の発生がみられた。一方雄では、小腸腫瘍の頻度が有意に増加していた。<BR>これらの知見は、Rev1は発がんに関与していることを示唆するものである。現在、更なる機構解明を行っている。
著者
増田 雄司 神谷 研二
出版者
放射線生物研究会
雑誌
放射線生物研究 (ISSN:0441747X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.383-400, 2000-12
著者
朴 金蓮 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.175, 2006

損傷乗り越えDNA合成機構は、DNA修復機構とともに染色体の恒常性の維持に必要不可欠な生物機能である。酵母で同定された<I>REV1、REV3、REV7</I>遺伝子は、損傷乗り越えDNA合成反応に関与し、電離放射線からの生体の防御と突然変異の誘発に重要な役割を担っている。ヒトREV1タンパク質は、鋳型塩基に対してdCMPを取り込むデオキシシチジルトランスフェラーゼ活性を持つ。この活性は、進化的にとてもよく保存されていることから、生体の防御において生物学的に重要な活性であることが示唆されているが、その意義は不明である。<BR> 今回我々はヒトREV1タンパク質の構造解析から、dCMPの認識に重要と考えられるアミノ酸残基を同定した。それらのアミノ酸残基が実際にdCMPの認識に機能しているかどうかを実験的に証明するために、それらのアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体REV1タンパク質を精製し、その生化学的性質を詳細に解析した。その結果、たった一つのアミノ酸置換によってREV1の基質特異性と損傷乗り越えDNA合成活性が劇的に変化することが分かった。今後は、この変異型REV1タンパク質を培養細胞で過剰発現させ、dCMP transferase活性の生物学的意義を明らかにしたいと考えている。
著者
笹谷 めぐみ 徐 衍賓 本田 浩章 濱崎 幹也 楠 洋一郎 渡邊 敦光 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.44, 2011

放射線の重大な生物影響の1つに発がんがある。広島長崎の原爆被ばく者の疫学研究から、放射線が発がんリスクを増加させることが明らかにされているが、100mSv以下の低線量域においては有意な増加は得られていない。放射線発がんの分子機構の解明は、発がんのリスク評価につながると考えられているが、放射線照射後の細胞内で誘発された損傷がどのように発がんに結びつくかは明らかではない。我々は、放射線発がんの分子機構を解明するために、実験動物モデルを用いてより単純化した系での解析を行うことを試みた。実験動物モデルとして、修復機構の1つである損傷乗り越えDNA合成に着目し、その中で中心的な役割を担うRev1を過剰発現するマウスを作成し、発がん実験を行った。また、ヒト家族性大腸ポリポーシスのモデルマウスであるAPC<SUP>Min/+</SUP>マウスを用いて掛け合わせを行った。研究の先行している化学発がん実験結果や、放射線分割照射により誘発された胸腺リンパ腫を用いた解析から、がん抑制遺伝子であるikaros領域の欠失および、それに伴うikarosスプライシングバリアントの出現が放射線分割照射における特徴的な損傷として検出された。損傷乗り越えDNA合成機構の異常は、このikarosスプライシングバリアントの出現頻度に寄与していると示唆される結果を得ている。また、損傷乗り越え合成機構の異常は、APC<SUP>Min/+</SUP>マウスモデル系における自然発生腸管腺腫を有意に増加させる結果が得られ、損傷乗り越えDNA合成機構がゲノムの安定性を維持するために機能していることが明らかになった。今回はこれらの結果について報告したい。
著者
神谷 研二 増田 雄司 豊島 めぐみ 神谷 研二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

低線量放射線被ばくの健康影響を解明するためには高感度のバイオドシメトリーと発がん機構の解明に基づく発がんリスク評価が必要である。そのため,バイオドシメトリーを可能にする放射線高感受性マウスの開発とゲノム障害応答・修復蛋白質の機能解析とそれを利用した分子バイオドシメトリー法の開発を試みた。1.放射線に高感度なモニターマウスの開発と特性解析放射線に高感度なマウスを開発する為に,誤りがちな修復をする損傷乗り越えDNA合成遺伝子mRevlを過剰発現したトランスジェニックマウス(Revlマウス)を共同研究で作製した。このマウスは,発がん処理に対し発がん高感受性であることが明らかとなったので,このマウスの生物学的特性を解析した。さらに,REV1の過剰発現が細胞の特性に及ぼす影響を解析する目的で,テトラサンクリンでREV1の発現が誘導可能なヒト肉腫細胞を樹立した。この細胞の放射線感受性を検討した結果,この細胞は放射線照射後の生存率が対照群より上昇傾向にあることが明らかとなった。この様にREV1の過剰発現細胞は,放射線に抵抗性であることから,細胞が生き延びることで突然変異を蓄積しやすい特性を有することが示唆された。2.低線量放射線を測定する分子バイオドシメトリー法の開発に関する研究ゲノム損傷部位には、損傷応答に関連するタンパク質複合体が形成され、この複合体は免疫染色でドットとして可視化でき、その個数からゲノム損傷を定量できる。このような現象を利用した全く新しい分子バイオドシメトリー法を開発する一助としてゲノム損傷修復やDNA合成に関係するタンパク質の同定とその機能解析を進めた。そめ結果、幾つかのタンパク質因子の候補を同定した。それらのタンパク質因子について、分子バイオドシメトリー法に利用できるか否かの検討を行った。一方、ゲノム損傷に依存的なH2AXの修飾がクロマチンダイナミズムを増加させることを見出した。さらに、再構成系を用いて損傷乗り越えDNA合成機構の解析に成した。