著者
神谷 研二
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.167-168, 2014 (Released:2015-12-18)
被引用文献数
1
著者
神谷 研二
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.329-340, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
67

原爆被爆者には,急性障害のみならずがん等の晩発障害が発症し,現在も被爆者を苦しめている.原爆放射線の健康影響は,放射線影響研究所の長期疫学調査により明らかにされている.原爆被爆でリスクが増加したがんとしては白血病と膀胱がん,乳がん,肺がん,甲状腺がん,食道がんなどの固形がんがある.子どもは,大人より発がん感受性が高い.全白血病と全固形がんの罹患の過剰相対リスクは,30歳で被爆し70歳到達時にはそれぞれ1.74(ERR at 1 Gy)と0.47/Gyである.固形がんの発がんリスクは,被ばく線量の増加に伴い直線的に増加する.一方,低線量率被ばくではその影響が減少する線量率効果が知られている.国際放射線防護委員会は,この様なデータを基にLNTモデルを提唱し,放射線防護のための放射線リスク予測を行っている.原爆被災の経験と放射線影響や健康管理の知見は,福島原発事故後の復興支援に活かされた.福島県は,県民の被ばく線量と健康状態を把握し,将来にわたる県民の健康の維持,増進を図る目的で県民健康調査を実施している.事故後4か月間の外部被ばく線量は,99.7%の住民は5 mSv未満であった.甲状腺検査では,18歳以下の住民約37~38万人を対象とした.現在,検査4回目の最終段階にあり,甲状腺がん/がん疑いの子ども達が,各検査で116例,71例,31例,及び21例見つかった.県の検討委員会は,検査2回目までに診断された甲状腺がんについて検討し,甲状腺線量の低さ等から,放射線の影響とは考えにくいと評価した.一方,同委員会では,検査の利益と不利益や倫理的観点等も踏まえ,今後の甲状腺検査の在り方について検討を進めている.
著者
川野 徳幸 星 正治 神谷 研二
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.201-205, 2006-09

広島大学原爆放射線医科学研究所(以下,「原医研」と略称)は,1961年の設立以来現在まで,原爆・被ばくの実態解明に欠かせない様々な分野の学術資(試)料を収集してきた。これらの学術資料の収集・管理・解析は,現在の原医研附属国際放射線情報センターが中心に担当してきた(以下,「以下,「原医研センター」と略称)。原医研では,それら貴重な学術資料をデータベース化し,公開するために,広島大学図書館との共同プロジェクトを立ち上げ,「原爆・被ばく関連資料データベース」を作成した。本データベースで電子化した学術資料は,次の資料群である。(1)原爆・被ばくに関連する新聞切抜きを記事 (2)米国陸軍病理学研究所(AFIP)から返還された医学的写真資料 (3)原爆・被ばく関連の図書資料の書誌事項 (4)原爆・被ばく物理試料データ (5)米国及び旧ソ連核実験実施記録データ 本稿では,今般データベース化した各学術試料の概略,データベースの利用方法,加えて,データベース公開の意義について報告する。
著者
谷川 攻一 細井 義夫 寺澤 秀一 近藤 久禎 浅利 靖 宍戸 文男 田勢 長一郎 富永 隆子 立崎 英夫 岩崎 泰昌 廣橋 伸之 明石 真言 神谷 研二
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.782-791, 2011
被引用文献数
2 4

東日本大震災は,これまでに経験したことのない規模の地震・津波による被害と福島第一原子力発電所の事故を特徴とした複合型災害である。3月11日に発生した地震と巨大津波により福島第一原子力発電所は甚大な被害を受けた。3月12日には1号機が水素爆発を起こし,20km圏内からの避難勧告が出された。14日には3号機が爆発,15日の4号機爆発後には大量の放射性物質が放出されるという最悪の事態へと進展した。一方,この間,原子力災害対応の指揮本部となるべく福島県原子力災害対策センターも損壊を受け,指揮命令系統が十分に機能しない状態となった。20km圏内からほとんどの住民が避難する中で,医療機関や介護施設には推定でおよそ840名の患者が残されていた。これらの患者に対して3月14日に緊急避難が行われた。しかし,避難患者の受け入れ調整が困難であり,重症患者や施設の寝たきり高齢患者などが長時間(場合によっては24時間以上)にわたりバス車内や避難所に放置される事態が発生した。不幸にも,この避難によって20名以上の患者が基礎疾患の悪化,脱水そして低体温症などで死亡した。一連の水素爆発により合計15名の作業員が負傷した。その後,原子炉の冷却を図るべく復旧作業が続けられたが,作業中の高濃度放射線汚染による被ばくや外傷事例が発生した。しかし,20km圏内に存在する初期被ばく医療機関は機能停止しており,被ばく事故への医療対応は極めて困難であった。今回の福島原子力発電所事故では,幸い爆発や放射線被ばくによる死者は発生していないが,入院患者や施設入所中の患者の緊急避難には犠牲を伴った。今後は災害弱者向けの避難用シェルターの整備や受け入れ施設の事前指定,段階的避難などを検討すべきである。また,緊急被ばくへの医療対応ができるよう体制の拡充整備と被ばく医療を担う医療者の育成も急務である。
著者
豊島 めぐみ 梶村 順子 渡辺 敦光 本田 浩章 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.150, 2007

Rev1はDNAポリメラーゼYファミリーに属する損傷乗り越えDNA合成酵素である。Rev1は損傷乗り越え修復において中心的な役割をしていると考えられているが、発がんへの関与は、未だ解明されていない。これまで、われわれの研究室ではRev1の生化学的解明を行ってきた。今回我々は、Rev1トランスジェニックマウスを作成し、発がんにおける役割について解析を行った。<BR>6週齢のC57BL/6の野生型、Rev1トランスジェニックマウスに、N-methyl-N-nitrosourea (MNU)50mg/ kgを二度にわたり、腹腔内投与した。その後、終生観察し、発がん頻度、生存率について、野生型と比較した。<BR>Rev1トランスジェニックマウス雌においては100日以内から胸腺リンパ腫がみられ始めた。トランスジェニックマウス雌では、野生型と比較して早期に、かつ高頻度で胸腺リンパ腫の発生がみられた。一方雄では、小腸腫瘍の頻度が有意に増加していた。<BR>これらの知見は、Rev1は発がんに関与していることを示唆するものである。現在、更なる機構解明を行っている。
著者
神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.4, 2011

平成23年3月11日に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故は、国際原子力事象評価尺度でレベル7に評価され、大量の放射性物質が環境中に放出された。人類が経験したことのない長期に渡る原子力事故における、住民への低線量・低線量率被ばくによる健康影響が危惧されている。しかし、きわめて低いレベルの低線量、低線量率被ばくによる発がんリスクを推定できる精度の高い疫学資料は乏しく、低いリスクの推定には不確実性が残されている。国際放射線防護委員会は、放射線防護の立場から、、低線量域での発がんリスクの推定は、高~中線量域で認められた被ばく線量と発がんリスクとの間の直線の線量・効果関係を低線量域まで外挿し、低線量域でのリスクの推定を行っている(LNTモデル)。その際に、低線量、低線量率被ばくによる発がんリスクを推定する場合は、LNTモデルを適用して推定された値を線量・線量率効果係数(DDREF)である2で除することで補正することを勧告している。最近の研究により、細胞は、日常的に起きているゲノム損傷に対し様々な細胞応答現象を誘導し、ゲノムの恒常性を維持する機構を発達させてきたことが明らかにされつつある。低線量被ばくによる人体影響では、微量なゲノム損傷に対する細胞応答現象による修飾を受けることが想定される。本シンポジウムでは、低線量放射線影響の人体影響に関し生物学的な観点から議論する
著者
神谷 研二 CLIFTON KELLY H. GOULD MICHAEL N. YOKORO KENJIRO
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.181-194, 1991
被引用文献数
2

We have developed an in vitro-in vivo transplantation assay for measuring the concentration of clonogenic epithelial cells in cell suspensions of rat mammary tissue. Rat mammary clonogens from organoid cultures are capable of the same degree of PLDR as clonogens in vivo. The growth and differentiation of mammary clonogens to alveolar colonies or ductal colonies is regulated as follows: a) in the presence of E<SUB>2</SUB> and high prolactin (Prl), cortisol induces mammary clonogens to proliferate and differentiate to form alveolar colonies which secrete milk and begin losing clonogenic potential, b) in cortisol deficient rats, Prl and E<SUB>2</SUB> synergistically stimulate non-secretory ductal colonies, formation of which retain clonogenic potential, c) E<SUB>2</SUB> without progesterone stimulates alveolar colony formation in the presence of cortisol and high Prl, d) progesterone inhibits mammary clonogen differentiation to milk-producing cells and induces ductogenesis in a dose responsive fashion in the presence of E<SUB>2</SUB>, cortisol and high Prl. High prolactin levels coupled with glucocorticoid deficiency increases the susceptibility to mammary carcinogenesis following low dose radiation exposure by increasing the number of total mammary clonogens which are the presumptive target cells and by stimulating their proliferation after exposure.
著者
増田 雄司 神谷 研二
出版者
放射線生物研究会
雑誌
放射線生物研究 (ISSN:0441747X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.383-400, 2000-12
著者
朴 金蓮 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.175, 2006

損傷乗り越えDNA合成機構は、DNA修復機構とともに染色体の恒常性の維持に必要不可欠な生物機能である。酵母で同定された<I>REV1、REV3、REV7</I>遺伝子は、損傷乗り越えDNA合成反応に関与し、電離放射線からの生体の防御と突然変異の誘発に重要な役割を担っている。ヒトREV1タンパク質は、鋳型塩基に対してdCMPを取り込むデオキシシチジルトランスフェラーゼ活性を持つ。この活性は、進化的にとてもよく保存されていることから、生体の防御において生物学的に重要な活性であることが示唆されているが、その意義は不明である。<BR> 今回我々はヒトREV1タンパク質の構造解析から、dCMPの認識に重要と考えられるアミノ酸残基を同定した。それらのアミノ酸残基が実際にdCMPの認識に機能しているかどうかを実験的に証明するために、それらのアミノ酸残基をアラニンに置換した変異体REV1タンパク質を精製し、その生化学的性質を詳細に解析した。その結果、たった一つのアミノ酸置換によってREV1の基質特異性と損傷乗り越えDNA合成活性が劇的に変化することが分かった。今後は、この変異型REV1タンパク質を培養細胞で過剰発現させ、dCMP transferase活性の生物学的意義を明らかにしたいと考えている。
著者
笹谷 めぐみ 徐 衍賓 本田 浩章 濱崎 幹也 楠 洋一郎 渡邊 敦光 増田 雄司 神谷 研二
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.44, 2011

放射線の重大な生物影響の1つに発がんがある。広島長崎の原爆被ばく者の疫学研究から、放射線が発がんリスクを増加させることが明らかにされているが、100mSv以下の低線量域においては有意な増加は得られていない。放射線発がんの分子機構の解明は、発がんのリスク評価につながると考えられているが、放射線照射後の細胞内で誘発された損傷がどのように発がんに結びつくかは明らかではない。我々は、放射線発がんの分子機構を解明するために、実験動物モデルを用いてより単純化した系での解析を行うことを試みた。実験動物モデルとして、修復機構の1つである損傷乗り越えDNA合成に着目し、その中で中心的な役割を担うRev1を過剰発現するマウスを作成し、発がん実験を行った。また、ヒト家族性大腸ポリポーシスのモデルマウスであるAPC<SUP>Min/+</SUP>マウスを用いて掛け合わせを行った。研究の先行している化学発がん実験結果や、放射線分割照射により誘発された胸腺リンパ腫を用いた解析から、がん抑制遺伝子であるikaros領域の欠失および、それに伴うikarosスプライシングバリアントの出現が放射線分割照射における特徴的な損傷として検出された。損傷乗り越えDNA合成機構の異常は、このikarosスプライシングバリアントの出現頻度に寄与していると示唆される結果を得ている。また、損傷乗り越え合成機構の異常は、APC<SUP>Min/+</SUP>マウスモデル系における自然発生腸管腺腫を有意に増加させる結果が得られ、損傷乗り越えDNA合成機構がゲノムの安定性を維持するために機能していることが明らかになった。今回はこれらの結果について報告したい。