著者
多久島 寛孝 山田 照子 林 智子
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-62, 2004-03-15
被引用文献数
1

「お待ちください」という言葉に対する患者・家族,看護師の意識を明らかにすることを目的に,口頭および文書で同意の得られた患者・家族100名および看護師46名に調査を行った。患者・家族には面接による聞き取り調査を,看護師には自記式調査用紙を用いて調査を行った。分析は,患者・家族が「お待ちください」と言われ待てると返答した時間および看護師が「お待ちください」と考える時間については有意差検定を行い,その他の項目については質的に分析した。その結果,1.患者・家族が「お待ちください」と言われ待てる時間は平均12.98分,看護師が「お待ちください」と考える時間は平均4.27分であり有意差があった。2.患者・家族は「お待ちください」と言われ思ったことは,【普通のこと】【すぐに対応してもらえない不満】であった。3.患者・家族は「お待ちください」と言われ不安に思ったことは,【行き場のない怒り】【見通しのつかなさ】【一方的な関係】であった。4.「お待ちください」の後に看護師に望む対応は,【安心感を得たい】【見通し】【信頼を望む】であった。5.待たせる場面での看護師の声かけの仕方は,【見通しのつかない示唆】【見通しのつく示唆】であった。6.看護師は,「お待ちください」をどう思って使用しているかは,【信頼の提供につながる支援】【罪悪感】であった。7.「お待ちください」を患者・家族がどう感じていると思うかは,【不信感への変化】【答えの出ない待ち時間】【我慢の強要】【裏切り】であった。
著者
三村 孝俊 嶋田 かをる 多久島 寛孝 與座 嘉康 山鹿 敏臣 高橋 徹
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
no.6, pp.15-22, 2009-03-31

熊本保健科学大学では2010年より「敷地内全面禁煙」を実行することを決定し,目標実現のために平成20年度にプロジェクトチームが発足している。その行動支援として現在の状況を把握することが重要であると考え,学生の喫煙に対する実態調査を行なった。調査の内容は [1]回答者の属性,[2]喫煙の状況,[3]喫煙経験と今後の禁煙意向,[4]たばこに対する態度,[5]日本看護協会の「たばこ対策」の認知と賛同意向,の5項目に大別して行なった。その結果,全学生の喫煙率は8.3%であった。また喫煙経験者のはじめての喫煙経験は10〜15歳と低年齢から始まっているが大学に入学してからも喫煙を始める機会があり,大学での友人や周囲の影響が大きいことが判明した。彼らは喫煙行動の理由として緊張の緩和や気分転換をあげており,さらに酒席の機会も喫煙行動を促している。一方,喫煙者の禁煙に関する関心は低くない。禁煙の理由として「健康」,「たばこ代」そして「医療従事者としての自覚」がある。喫煙による健康被害として呼吸器や循環器疾患については認知されていた。そして,「たばこ」について知りたい情報としては「受動喫煙による疾病」と「禁煙したい人への支援組織」が多かった。なお,非喫煙者に「喫煙問題に対する対策について関心がない」という者が少なからずおり,禁煙プロジェクトチームとしては無関心層の啓蒙,具体的な禁煙支援の情報を伝えていかなければならない。
著者
角 マリ子 多久島 寛孝
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
熊本保健科学大学研究誌 = Journal of Kumamoto Health Science University (ISSN:24335002)
巻号頁・発行日
no.15, pp.109-120, 2018-03

本研究は,認知症カフェおよびサロンについて報告されている13件の文献を概観し,研究の動向,取り組みの実態と効果を整理して,今後の研究の方向性,認知症者およびその家族への支援についての示唆を得ることを目的とした。 その結果,以下の結論を得た。1.認知症カフェおよび認知症者に関連するサロンの開設の要素を明らかにすると,認知症者やその家族にどのような影響を及ぼすのか検証することができる。2.認知症カフェの効果については,家族の心情の吐露や家族の人生の回顧等,サロンの効果については,参加者の楽しみの増加や参加者の対人交流の増加等を参加者への効果から明らかにすれば,認知症カフェおよび認知症者に関連するサロンに繋がる継続要因を明らかにすることができ,認知症者とその家族が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けていくための支援の方策に繋げることができる。
著者
多久島 寛孝 山口 裕子 水主 いづみ
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-16, 2005-03-15

老人保健施設の痴呆性専門療養棟において,ケア・スタッフが痴呆性高齢者の訴えや行動に対応した場面を,参加観察法で収集した。収集した場面を質的に分析し,ケア・スタッフのケア提供へ影響しているものについて検討した。その結果,以下の点が明らかになった。1.ケア提供へ影響するものとして,【痴呆性高齢者の日常生活支援のあり方】【痴呆性高齢者の思いとのすれ違い】【否定的感情の表面化】の3つのコアカテゴリーが抽出された。2.【痴呆性高齢者の日常生活支援のあり方】には,〔基盤となる姿勢〕〔創造的な支援〕の2つのカテゴリーが抽出され,〔基盤となる姿勢〕には,『入所高齢者への気遣い』『信頼を壊さない』『安全の保障』『入所高齢者の感情への寄り添い』の4つのサブカテゴリーが含まれ,〔創造的な支援〕には,『探索』『入所高齢者の力を生かす』の2つのサブカテゴリーが含まれた。3.【痴呆性高齢者の思いとのすれ違い】には,〔個人的体験の優位さ〕〔個人の意識の差〕〔その場をしのぐ〕の3つのカテゴリーが抽出され,〔個人的体験の優位さ〕には,『体験的ルーティン化』『強引さ』の2つのサブカテゴリーが含まれ,〔個人の意識の差〕には,『優先順位』『見過ごし』『無意識』の3つのサブカテゴリーが,〔その場をしのぐ〕には,『説得』『関心を寄せない』の2つのサブカテゴリーが含まれた。4.【否定的感情の表面化】には,〔混乱〕の1つのカテゴリーが抽出され,〔混乱〕には,『困難感』『答えが出ない』『引きずられ』の3つのサブカテゴリーが含まれた。