著者
平野 康之 夛田羅 勝義 川間 健之介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

<b>【はじめに,目的】</b>近年,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の需要が拡大する一方で,訪問リハ従事者が経験する事故や病状急変などの件数は増加傾向にある。このような現状からサービス提供における安全管理の徹底が求められるが,訪問リハ従事者におけるこれらのアセスメント能力(技術)の実態については明らかではない。本研究の目的は,訪問リハ従事者が実施する健康状態や病状把握のために用いるアセスメント項目の知識(技術)の程度や実施の程度,必要性の認識などについての実態を把握することである。<b>【方法】</b>対象は,全国の訪問リハ事業所(病院)に勤務する訪問リハ従事者である。方法は都道府県ごとにランダムに抽出した540施設に対して,以下に示す訪問リハビリテーションアセスメント(以下,vissiting rehabilitation assessment:VRA)に関する自己記入式質問紙を郵送した。VRAは利用者の健康状態や病状把握に必要と考えられる①心理・精神に関する項目,②生命・身体に関する項目,③生活に関する項目の3領域からなるアセスメント(全42項目)で構成され,回答にあたっては知識(技術)の程度(以下,知識度),アセスメント実施の程度(以下,実施度),訪問リハ実施時における必要性(以下,必要性)について5段階のリッカート尺度により回答を得た。解析は,まず知識度,実施度,必要性についてアセスメント項目ごとに記述統計を行い,その傾向を検討した。次に知識度,実施度,必要性の関連性についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。なお,質問紙の作成にあたっては信頼性,妥当性を確認し,統計学的有意水準は5%未満とした。<b>【倫理的配慮,説明と同意】</b>郵送時に本研究の主旨に関する説明書を同封し,質問紙の返送をもって同意とした。なお,本研究は徳島文理大学倫理委員会の承認を得た。<b>【結果】</b>質問紙の回答は63施設:120名(11月11日現在,回収率:12%)から得られた。回答者属性は,男性:62名,女性:58名,年齢は20歳代:45名,30歳代:53名,40歳代:16名,50歳代:6名であった。職種は理学療法士:81名,作業療法士:38名,言語聴覚士:1名であり,経験年数は10年未満:77名,10年以上:43名であった。VRAの結果より,知識度に関して"知っている"と回答した者が最も多かった項目は「バイタルサイン(以下,VS)」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「経皮的酸素飽和度(以下,SpO2)」の順に多かった。実施度に関して"実施する"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「視診」,「運動に伴うVSの変動」の順に多かった。必要性に関して"必要がある"と回答した者が最も多かった項目は「VS」であり,次いで「意識レベル」,「転倒」,「SpO2」の順に多かった。次に知識度,実施度,必要性の関連性については,「VS」,「内服薬」,「認知機能」の一部以外のすべてにおいて弱い,または中等度以上の相関を認めた。知識度と実施度の関連において,相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目であった。必要性と実施度の関連において相関係数が0.6以上を示したのは「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」など12項目であり,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」は0.4未満であった。また,知識度と必要性の関連において相関係数が0.6以上を示した項目はなく,「VS」,「内服薬」,「認知機能」については相関を認めなかった。<b>【考察】</b>必要度の上位に位置した「VS」,「意識レベル」,「転倒」などは"必要である"と回答した者が約80%を超え,知識度や実施度においても知識を有し,いつも実施しているとの回答が得られていたことから,訪問リハサービスの提供において重要なアセスメント項目であると考える。また,知識度と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「心音聴取」,「がん性の痛み」など17項目については,知識量が多ければ多いほど実施度が高い傾向にある項目であると考える。また,必要性と実施度の関連が認められた「非がん性の痛み」,「食事」,「SpO2」などの12項目については,訪問リハの実践に必要であると認識しているほどよく実施している,またはよく実施しているほど訪問リハの実践に必要であると判断している項目であると考える。また,「うつ」,「頸静脈怒張」,「心電図変化」,「胸部打診」で相関係数が低かったことについては,訪問リハにおいて内部障害系のアセスメント項目の必要性や実施の程度に偏りや乖離がある可能性が示唆された。<b>【理学療法学研究としての意義】</b>本研究結果は訪問リハの教育カリキュラムや研修計画などの作成にあたっての有効な資料となり,訪問リハの質向上に寄与すると考える。
著者
池田 博昭 中妻 章 森 久美子 飯原 なおみ 芳地 一 二宮 昌樹 夛田羅 勝義
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【目的】2020年度授業は4月6日より対面授業を開始予定だったが、2週間遅れて4月20日から遠隔授配信授業を開始した。2ヶ月後の6月16日より対面授業を開始したため、学生は遠隔授配信授業と対面授業の2つの授業形態を経験した。学生に遠隔配信授業と対面授業のアンケートを実施し課題を抽出した。【方法】6年生と4年生に同じ質問内容のアンケートを実施した。内容は遠隔配信授業と対面授業のどちらが便利か、好むかなど13項目とした。6年生は筆記式、4年生は遠隔授配信授業で回答した。アンケートは無記名、成績評価に影響しない、結果を学会等で公表する同意を口頭で得た。【結果】6年生の56名中37名(66.1%, 男19名、女18名)が回答した。遠隔配信授業へのストレスは9名(24.1%)が感じ、その内容は通信量不足のためか遠隔配信の通知が遅れるなどWifi環境が原因だった(66.7%)。遠隔配信授業を有効としたのは29名(78.4%)、どちらでもない8名(21.6%)だった。遠隔配信授業に向いた授業は演習科目28名(75.7%)、スライド説明中心科目26名(70.3%)だった。遠隔配信講義の長所は通学時間がない28名(75.7%)、授業データ保存7名(18.9%)、卒業研究の実験しながら2名(5.4%)だった。37名中35名(94.6%)は遠隔配信授業が便利と回答、37名中21名(56.8%)は遠隔配信授業が好きと回答、16名(43.2%)は対面授業が好きと回答した。4年生32名中32名(男9名、女23名)が回答(100%)した。32名中30名(93.9%)は遠隔配信授業が便利と回答、32名中23名(71.9%)は遠隔配信授業が好きと回答、9名(28.1%)は対面授業が好きと回答した。【考察】学生は通学時間が不要などの理由で遠隔配信授業が便利と考える一方、遠隔配信授業は授業科目によると回答した。遠隔配信授業が好きと対面授業が便利に有意差はなく、授業科目に配慮して行えば通信量不足に悩む学生の満足は得られる。