著者
大久保 篤 市川 寿 田中 強 河野 智一 藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.227-234, 2005-04-30

諏訪湖の沿岸では, 冬季夜間の著しい低温時に周期数十分, 変動幅数℃の大きな気温変動が観測されることがある.この現象を解明するため, 気象庁のルーチン観測資料を解析するとともに, 2003年1〜2月に諏訪湖周辺で野外強化観測を行った.気温変動は, 諏訪湖が全面結氷し積雪があり, 晴れて風が弱まった夜に発生していた.また, 気温変動はほぼ諏訪盆地内全域で発生しているが, 変動幅は湖岸に近い地点ほど大きく, 気温が急降下するタイミングは湖畔の方が早かった.気温変動に対応して風向も変動し, 湖からの風のときに前後の時間帯に比べて低温となる傾向があった.さらに, 気温変動の発生する時は, 地上から高度50m付近にかけて冷気層が存在し, 地上気温の変化と対応してその厚みが変動していた.これらは, 「諏訪湖上に現れる冷気層の崩壊・流出と再形成のサイクルが気温変動に関与している」可能性を示唆している.
著者
大久保 篤 市川 寿 田中 強 河野 智一 藤部 文昭
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.227-234, 2005-04-30
参考文献数
8

諏訪湖の沿岸では, 冬季夜間の著しい低温時に周期数十分, 変動幅数℃の大きな気温変動が観測されることがある.この現象を解明するため, 気象庁のルーチン観測資料を解析するとともに, 2003年1~2月に諏訪湖周辺で野外強化観測を行った.気温変動は, 諏訪湖が全面結氷し積雪があり, 晴れて風が弱まった夜に発生していた.また, 気温変動はほぼ諏訪盆地内全域で発生しているが, 変動幅は湖岸に近い地点ほど大きく, 気温が急降下するタイミングは湖畔の方が早かった.気温変動に対応して風向も変動し, 湖からの風のときに前後の時間帯に比べて低温となる傾向があった.さらに, 気温変動の発生する時は, 地上から高度50m付近にかけて冷気層が存在し, 地上気温の変化と対応してその厚みが変動していた.これらは, 「諏訪湖上に現れる冷気層の崩壊・流出と再形成のサイクルが気温変動に関与している」可能性を示唆している.
著者
大久保 篤 柴田 のり子 根口 光太郎 辻本 嘉大 橘田 重延 大石 喜仁 武井 康郎 水野 康隆 宮原 寿夫 仲居 史志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.363-369, 2004-05-31
参考文献数
4
被引用文献数
5

2003年10月13日に千葉県成田市と茨城県神栖町で発生した突風について,現地調査をもとに原因を推定した.突風は,強い雨の中である程度の広がりを持って一方向に向かって吹いた可能性が高かった.そして,日中にもかかわらず竜巻の目撃証言がなかった.これらから,突風の原因をダウンバーストと推定した.成田市の突風発生時の気象状況について,主にドップラーレーダーを用いて解析を行った.突風発生時はスパイラル状に組織化したエコーを伴った低気圧が,成田市付近に位置していた.そして,成田市宗吾で発生したダウンバーストは,スパイラル状エコーの通過時に発生した可能性が高かった.また,成田市赤荻で発生したダウンバーストの原因は,現地調査結果とあわせて考えることにより,低気圧の中心付近西側で発生したミソサイクロンを伴うストームによりもたらされた可能性が高いこともわかった.
著者
大久保 篤
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.705-714, 1995-10-31
参考文献数
15
被引用文献数
6

1990年1月23日夜から24日朝にかけて北陸地方に接近,上陸した二つの渦状擾乱は,水平スケールと移動方向が違っていた.この2種類の渦状擾乱の解析を行った.2種類の渦状擾乱は,共に700hPaより下層の擾乱で,温帯低気圧に似た構造をしていた.2種類の渦状擾乱は,1つの上層の擾乱(500hPaの気圧の谷)の下方に位置しており,日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)でつながっていた.事例数を増やして,帯状雲の初期状態からの変化を調べた.渦状擾乱は渦状となる前から,帯状雲の屈曲部として追跡可能であった.2種類の渦状擾乱は,日本海西部のJPCZ上で発生した小擾乱が,傾圧不安定により発達したものと考えた・傾圧性を増す要因として,上層の擾乱による下層での暖気移流と寒気移流の強まりを考えた.
著者
大久保 篤
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.241-250, 1997-04-30
参考文献数
9

1995年2月5日午後, 若狭湾沖で特別観測を行っていた啓風丸の近くを渦状擾乱が南東進した. この渦状擾乱について, 主に啓風丸の資料を用いて解析を行った. 渦状擾乱は水平スケール約100kmで, 700hPaより下層の擾乱であった. そして, 約半日前に北陸地方の沿岸を東北東進した渦状擾乱と2つで, 1つのメソαスケールの擾乱を形成しており, 上方には上層の擾乱が位置していた. 渦状擾乱は温暖前線, 寒冷前線の様相を示すシアーラインを伴っており, 温帯低気圧に似た構造をしていた. 啓風丸の10分間隔の海上気象観測値によると, これらと別のシアーラインが検出できた. シアーライン通過時の観測値の変化やレーダーエコー分布は「Tボーン構造をした温帯低気圧」に似ていた. なお, 海上風は渦状擾乱後面のシアーライン通過後が最も強く, その強風は下降してきた寒気によるものと考えた.