著者
友利 幸之介
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.57-67, 2019 (Released:2019-11-29)
参考文献数
24

作業療法のエビデンス構築は, 他領域と比べて明らかに遅れている. これは研究者の責任に依るところが大きいと猛省しているが, 臨床研究には臨床家の参画が欠かせない. 臨床家一人ひとりが, 研究を他人事とせず取り組むことが求められている. そこで本稿では, 作業療法研究のロードマップと題して, 1) まず研究論文を日々の臨床で活用することから始め, 2) 良質な事例報告とは何かを定義し, 3) 事例報告で生成された仮説を疫学研究へ発展させるための方法と, 4) 最後にエビデンスを構築するための仮説検証方法について論ずる.
著者
齋藤 佑樹 長山 洋史 友利 幸之介 菊池 恵美子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-308, 2017-06-15

要旨:本研究では,ADOCが作業療法面接に与える影響について検証した.ADOCは作業療法士とクライエントが協業的に面接評価を行い,作業療法目標を立案・共有するための面接ツールである.Webアンケート調査で,5名の予備調査インタビューから得た3つのカテゴリー(①セラピストの知識・技術,②セラピストの自信,③クライエントの状態)を基に,全34問の質問紙にて調査した.ADOCの使用経験者188名の回答を分析した結果,作業療法初心者には作業に焦点を当てた実践を追求したいと思う動機的側面にプラスに作用し,経験者では認知症や失語症など意思疎通が困難なクライエントと意味のある作業を共有する自信がついたとの回答が多いことが明らかとなった.
著者
長谷 龍太郎 高橋 香代子 友利 幸之介
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中片麻痺患者を対象に,ADOCを用いたトップダウン型作業療法の効果について,無作為化比較試験によって検証した.54名の脳卒中片麻痺患者をランダムにトップダウン群とボトムアップ群に振り分けた.成果指標は,2ヶ月目でSF-36,FIM,ブルンストロームステージ,退院時に患者満足度,入院日数とした.介入前後の比較では,両群とも多くの項目で有意な改善が認められたが,両群間の比較では有意差は認めれなかった.ただしトップダウン群では,SF-36の全体的健康感と日常役割機能(精神)において効果的である可能性が示唆された.
著者
西田 まどか 沖田 実 福田 幸子 岡本 直須美 中野 治郎 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.304-311, 2004-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
7

本研究では,関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルを用いて,持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維におよぼす影響を検討した。Wistar系雄ラット17匹を対照群3匹と実験群14匹に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で固定した上で後肢懸垂法を2週間行った。また,実験算は固定のみの群(固定群,4匹),固定期間中に麻酔下で毎日30分問,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群(持続群,6匹),同様に間歇的伸恨運動を実施する群(間歇群,4匹)に分け,実験終了後は足関節背面角度とヒラメ筋の組織病理学的変化を検索した。足関節背面角度は持続群,間歇群が固定群より有意に高値を示したが,この2群のヒラメ筋には著しい筋線維損傷の発生が認められた。よって,持続・間歇的伸張運動ともに本実験モデルの拘縮の進行抑制に効果的であるが,ヒラメ筋に対しては悪影響をおよぼすことが示唆された。
著者
出口 友喜 田平 隆行 友利 幸之介 長谷 龍太郎
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.123, 2004

【はじめに】<br> 線条体黒質変性症(以下、SND)を呈するK氏は、常に在宅復帰をしたいという希望があり、OTRはADL訓練や介護保険制度を活用しながら支援を行ってきた。しかし、進行性疾患を呈するK氏に対し、問題点に焦点を置いた関わり方に違和感を覚えはじめていた。そこで今回の入院を機に、OTRはK氏に対し自分の疾患に対しどう思い、これからどうしていきたいのか時間をとって共に検討していく必要があると考えた。そこで今回はK氏を主体とした対話を行いながら、作業選択を行ったのでここに報告する。<br>【K氏が5度目の作業療法にやってくるまで】<br> K氏は66歳で、6歳年下の妻と2人暮らしであった。4年前にSNDと診断され、症状は徐々に進行している。診断については告知を受け、現在構音障害のためコミュニケーションに時間を要し、 ADLについては食事以外は全介助の状態である。性格は穏やかであり、自宅ではパソコンで趣味の一つである囲碁ゲームや自分史を作成していた。しかし、今回IV度の褥創発生に伴い、座位どころか臥位でも体位変換を要し、趣味活動は全くできなかった。一方、主介護者の妻は「一度決めたことは、一生懸命する」と自ら語るほど、まっすぐで明朗活発な方である。また、K氏の介護を行いながらも、息抜きは必要と、月1回水彩画の教室には通っている。<br>【K氏の人生観・価値観の共有のための対話】<br> OTRは、これまで聴取していたK氏の生活史を、K氏の価値観を共有するために、傾聴しながら対話する姿勢をとった。K氏は、幼い頃に母を亡くし、小学校に入り父が再婚した。しばらくして、父の会社が倒産し継母の郷里で高校生まで過ごすこととなったが、移り住んでからの生活は楽ではなかった。高校卒業後、貨物船の船員として約40年間も働いており、1年間の2/3は海と外国で過ごしていた。異国を旅した話を楽しそうにしているK氏は、人との関わりを好む事に加え、好奇心旺盛で行動力もあったのだろう。<br>【提供する作業から共に考える作業へ】<br> その後、今後の生活の場や、できるようになりたいという作業についてK氏は「家に帰りたい。でも妻がきついと言えば施設に行かないと行けない」と述べた反面、「できれば自分で家の中を歩き回り、風呂に入ったり、顔を洗ったりしたい」という希望を述べた。これに対しOTRはK氏の今後に正面から向き合うために、それらの作業が将来的にも困難であることを説明した。すると、K氏は自分の病気が完治するものではなく、できなければ困るものではないことを答えた。K氏は自分の思いを自ら声に出してOTRと確認しあうことで、進行し続ける疾患への不安から解放されたかったのではないだろうか。その後、セルフケアに関して再度、具体的に聞いていくと「妻が車椅子へ移す時、少しでもいいから、足に力が入ればいいと思っている」と答えた。そこで、褥創の完治後に、スライディング式の移乗方法で練習を行うこととした。次に、新たに社会に対してやってみたい作業については、K氏は昔から「長崎の観光ガイドをやってみたい」という夢があることを教えてくれた。これまでの会話の中でセルフケアや趣味についてはよく話をしていたが「社会」というテーマで会話をしたことはなかった。ガイドについての具体的な計画は聞かれなかったため、実際にその場に行ってガイドを行うことは困難であると思い、パソコンでガイドマップを一緒に作ることを提案した。すると K氏は、「それはいいアイデアですねぇ」とはっきりとした声を出し、どの地域のマップを製作するのか、写真の取り込み方はどうしようかなどと、これまでにない主体的な姿勢をみせた。またこのことを妻に伝えると、「夫らしい一面を見れた」と喜び、K氏が見ず知らずの観光客のガイドをかって出て、一緒にお酒まで飲んで帰ってきていたというエピソードを教えてくれた。OTRがK氏の担当になってから4年が経過しようとしていた。<br>【考 察】<br> 今回OTRは、K氏との対話の中からK氏の価値観を共有し、K氏の夢であった長崎のガイドをするという作業を共に発掘することができた。この作業は、「夫らしい一面を見れた」という妻の言葉からも感じ取ることができるように、病気の中に埋もれていた本来のK氏を引き出しつつ、今後に関しても、これまでの医学モデル的視点にはなかった別の視点を提供していると考える。 F.Clarkは、「生存者(患者)が作業的存在としての感覚を取り戻すために、セラピストはその人が以前に構築してきた道や橋と確実に結びつくような支援を行う必要がある」と述べている。今回の支援では、K氏の物語を理解することこそ、K氏が作業的存在に気づくきっかけであり、作業療法において重要なリーズニングであると考える。
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20
被引用文献数
10

本研究では, 臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし, その進行過程で持続的伸張運動を行い, 拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け, 実験群は後肢懸垂法に加え, 両側足関節を最大底屈位で固定し, 2週間飼育した。そして, 実験群の内6匹は固定のみとし, 21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお, 実施時間は10分(n=8), 20分(n=7), 30分(n=6)とした。結果, 持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの, 20分, 30分では認められ, 実施時間が長いほど効果的であった。しかし, 30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず, 今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。