著者
沖田 実 中居 和代 片岡 英樹 豊田 紀香 中野 治郎 折口 智樹 吉村 俊朗
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-69, 2004-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
26
被引用文献数
7

本研究の目的は,温熱負荷ならびに温熱負荷と持続的筋伸張運動を併用した場合の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を明らかにすることである。実験動物は,7週齢のWistar系雄ラットで,1週間の後肢懸垂によってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させるとともに,その過程で約42℃の温熱ならびに持続的筋伸張運動,両者を併用した方法を負荷し,筋湿重量とタイプI・II線維の筋線維直径の変化,Heat shock protein 70(Hsp70)の発現状況を検索した。温熱負荷によってHsp70の発現が増加し,タイプI・II線維とも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めた。そして,これはHsp70の作用によってタンパク質の合成低下と分解亢進が抑制されたことが影響していると考えられた。一方,持続的筋伸張運動でも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めたが,温熱負荷と併用した方法がより効果的であり,これはHsp70の作用と機械的伸張刺激の作用の相乗効果によるものと推察された。
著者
西田 まどか 沖田 実 福田 幸子 岡本 直須美 中野 治郎 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.304-311, 2004-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
7

本研究では,関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルを用いて,持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維におよぼす影響を検討した。Wistar系雄ラット17匹を対照群3匹と実験群14匹に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で固定した上で後肢懸垂法を2週間行った。また,実験算は固定のみの群(固定群,4匹),固定期間中に麻酔下で毎日30分問,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群(持続群,6匹),同様に間歇的伸恨運動を実施する群(間歇群,4匹)に分け,実験終了後は足関節背面角度とヒラメ筋の組織病理学的変化を検索した。足関節背面角度は持続群,間歇群が固定群より有意に高値を示したが,この2群のヒラメ筋には著しい筋線維損傷の発生が認められた。よって,持続・間歇的伸張運動ともに本実験モデルの拘縮の進行抑制に効果的であるが,ヒラメ筋に対しては悪影響をおよぼすことが示唆された。
著者
佐藤 聡 高島 秀敏 吉村 俊朗 迫 龍二 森 正孝 辻畑 光宏 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.39-42, 1984-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1年間にわたる抗生物質の長期投与で治癒した脳膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は55才,女性.昭和55年10月13日,右上下肢の脱力が出現, 15日からは発語障害も加わり, 19日には右完全片麻痺となり当科に入院した.入院時,右片麻痺,運動性失語を認めた. CT scanにて左頭頂葉に大きな等吸收を示すmassがあり,周囲に著明な脳浮腫を伴つていた. enhance CT scanでring enhancementを示した.脳膿瘍の診断のもとに,抗生物質,ステロイドホルモン,グリセオール,で治療を開始し, CT scanにて治療経過を経時的に観察した.経過中,臨床症状の増悪をきたし, CT scan上も病巣がさらに拡大しているのが認められたが,抗生物質の変更で,軽快し, 1年後,症状はほとんど消失,固定した. CT scan上もring enhancementが消失し小点状のenhancementのみとなつた時点で治療を中止したが現在まで再燃していない.従来,脳膿瘍の治療としては,外科治療の比重が大きかつたが, CT scanにて,病巣の状態を直接,経時的に観察できるようになつたため,治療の変更などがすみやかに行なえるようになり,内科的治療のみで治癒したとの報告がふえている.抗生物質の投与期間については,少なくとも症状がほとんど固定化し, CT scan上病巣がすみやかに縮小しており,脳浮腫が著明に減少または消失していることが条件と考えられた.ステロイドホルモンの投与は,脳浮腫の改善に有効であり,文献上も有効例が多く使用してさしつかえないと考えられた.
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
11

本研究では,臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし,その進行過程で持続的伸張運動を行い,拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け,実験群は後肢懸垂法に加え,両側足関節を最大底屈位で固定し,2週間飼育した。そして,実験群の内6匹は固定のみとし,21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお,実施時間は10分(n = 8),20分(n = 7),30分(n = 6)とした。結果,持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの,20分,30分では認められ,実施時間が長いほど効果的であった。しかし,30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず,今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
著者
吉村 俊朗 中野 治郎 本村 政勝
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)および抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体(抗MuSK抗体)共に陰性で筋無力症が疑われる患者の中に筋萎縮性側索硬化症もある。誘発筋電図でもWaningが認められ、テンシロンテストも陽性と判断されることがあり、抗体陰性の重症筋無力症の鑑別に重要と結論した。運動終板に補体C3の沈着が認められ、postsynaptic foldの減少も認められた。αバンガロトキシンの減少も認められる例もある。意義付けが困難であるが、眼筋型MGでは、AChR抗体が陰性のことが多く補体の沈着があることがある。測定感度以下のAChR抗体が関与する可能性や、AChR抗体以外の抗体の関与が考えられる。補体の沈着もなく、postsynaptic foldの減少があり、臨床像は、四肢近位筋の筋力低下があり、他の抗体もしくは、先天性の可能性など、今後の検討が必要である。ヒト抗MuSK抗体は、ラットの再生筋の運動終板においてもいても、ヒト運動終板と類似の変化をもたらす。 抗MuSK抗体は Postsynaptic areaの形成に影響を及ぼす。抗ラミニン抗体は抗体陰性の筋無力症の原因でありうる可能性を否定できないが、電気生理学的な検討も含めて、今後の検討が必要である。ラミニンも運動終板の形成に関与している可能性がある。
著者
本村 政勝 福田 卓 吉村 俊朗
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LDL受容体関連蛋白質4(Lrp4)抗体陽性重症筋無力症(MG)の臨床像と神経筋接合部病態を解明し「アセチルコリン受容体(AChR)抗体と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)抗体に次ぐ、第3番目の病因自己抗体になる」という理論仮説を検証した。我々はAChR抗体陰性MG患者から、Lrp4抗体を有する9症例を報告した(Ann Neurol. 2011)。その臨床像は、男女比4対5、発症平均年齢57歳、嚥下障害を主体とする全身型MGで胸腺腫の合併は無かった。神経筋接合部生検は、3例とも運動終板に免疫複合体の沈着は無く、電顕でも運動終板の破壊像は無くAChR抗体陽性MGとは異なるものであった。
著者
沖田 実 中居 和代 片岡 英樹 豊田 紀香 中野 治郎 折口 智樹 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-69, 2004-02-20
被引用文献数
9

本研究の目的は,温熱負荷ならびに温熱負荷と持続的筋伸張運動を併用した場合の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を明らかにすることである。実験動物は,7週齢のWistar系雄ラットで,1週間の後肢懸垂によってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させるとともに,その過程で約42この温熱ならびに持続的筋伸張運動,両者を併用した方法を負荷し,筋湿重量とタイプI・II線維の筋線維直径の変化,Heat shock protein 70(Hsp70)の発現状況を検索した。温熱負荷によってHsp70の発現が増加し,タイプI・II線維とも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めた。そして,これはHsp70の作用によってタンパク質の合成低下と分解完遂が抑制されたことが影響していると考えられた。一方,持続的筋伸張運動でも廃肝吐筋萎縮の進行抑制効果を認めたが,温熱負荷と併用した方法がより効果的であり,これはHsp70の作用と機械的伸張刺激の作用の相乗効果によるものと推察された。
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20
被引用文献数
10

本研究では, 臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし, その進行過程で持続的伸張運動を行い, 拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け, 実験群は後肢懸垂法に加え, 両側足関節を最大底屈位で固定し, 2週間飼育した。そして, 実験群の内6匹は固定のみとし, 21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお, 実施時間は10分(n=8), 20分(n=7), 30分(n=6)とした。結果, 持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの, 20分, 30分では認められ, 実施時間が長いほど効果的であった。しかし, 30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず, 今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。