著者
横山 芳春 安藤 寿男 大井 信三 山田 美隆
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.54, pp.9-20, 2001-12-25 (Released:2010-05-27)
参考文献数
25
被引用文献数
2

茨城県石岡-鉾田地域における下総層群“見和層”を対象に詳細な堆積相解析, 侵食面・火山灰鍵層の追跡を行った結果, 2回の堆積サイクルの存在が確認できた. 下位のサイクル1は西部の大規模な谷地形を充填する開析谷埋積システムと, これを覆って調査地域全域に分布する外浜-海浜システムの堆積物からなる. サイクル2ではバリアー島・潟システムの堆積物が特徴的に発達し西部で厚く保存されているが, 東部では外浜-海浜システムの堆積物がこれを覆って分布している. 常総層は主に河川システムの堆積物からなるが, 調査地域東部では下部に海成層が認められた. シーケンス層序学的解釈を行った結果, サイクル1にはシーケンス境界 (SB1), 内湾ラビンメント面 (BRS1), 波浪ラビンメント面 (WRS1) の3枚の侵食面が認められ, サイクル2にはSB2, BRS2, WRS2, SB3の4枚の侵食面が認められた. それぞれの堆積サイクルにはTST, HSTが認められ, 2回の相対海水準変動に伴う堆積シーケンスを構成していることが判明した.
著者
横山 芳春 大井 信三 中里 裕臣 安藤 寿男
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.55, pp.17-28, 2002-11-20 (Released:2010-05-27)
参考文献数
34
被引用文献数
3

茨城県東茨城台地西部において下総層群“見和層”及び涸沼段丘礫層を対象に堆積相解析, 火山灰鍵層の対比および地形学的考察を行った結果, 以下のことが判明した. 本地域の層序は,“見和層”サイクル1,“見和層”サイクル2, 涸沼段丘礫層に区分することができる.“見和層”サイクル1は泥質なエスチュアリー成堆積物から形成され, 古涸沼川が形成した開析谷とその埋積物からなる.“見和層”サイクル2は, 上位段丘面を構成し. 東茨城台地西部で内湾成の堆積相が, 東部で外洋成の堆積相が発達することから, 潟・バリアー島システムによって形成された可能性が高い. 潟・バリアー島システムを反映した堆積相分布は, 離水後の微地形や水系発達に大きな影響を与えた. すなわち, バリアー島内湾側では潟の泥質堆積物が保存され, 広く浅い谷が形成された. さらに, 泥質堆積物は水系分布を制約し, 扇状の分岐や大きく屈曲する水系が形成された. 一方, 外洋側では浜堤平野を形成した浜堤列群が保存され, 北東から南西方向の浅い谷の凹地と微高地の凸地が発達したものと解釈される.
著者
大井 信三 横山 芳春
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S103-S120, 2011-09-01 (Released:2013-02-20)
参考文献数
49
被引用文献数
2 2

茨城県中・南部の常陸台地を構成する下総層群は,これまで房総半島の模式層序との対比が確立されておらず,地域内でも研究者によって様々な見解があり,異論が多かった.そこで新たに見いだされたテフラを広域に追跡することでテフラ層序を組み立てて,それを基準として堆積相解析やシーケンス層序学的解析を行った.その結果,下総層群を藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層,常総層の6層を区分した.さらに,最終間氷期の堆積物である木下層に2つの堆積サイクルを認め,剣尺(けんじゃく)部層,行方(なめかた)部層を新たに設定した.本巡検では常陸台地における下総層群の各構成層について,案内者らの見解を紹介し,模式層序との対応を解説,議論する.さらに,テフラと堆積相の分布から推定される,木下層の堆積過程について概説する.特に堆積物供給量の違いを背景として,涸沼(ひぬま)を境界として南北で異なる堆積システムの時空変化について,常陸台地を縦断して比較を行う.
著者
大井 信三 横山 芳春 西連地 信男 安藤 寿男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.488-505, 2013-07-15 (Released:2013-11-02)
参考文献数
47
被引用文献数
1 2

茨城県常陸台地を構成する下総層群の層序区分については,房総半島との対比が確立されておらず,研究者の意見の一致をみていない.本論では特に層序的な問題が多い木下層について,テフラの岩相と岩石記載,屈折率や火山ガラスの主成分化学組成を分析し,それらに基づいて給源火山域および鹿島沖海底コア(MD01-2421)中のテフラと広域対比を試みた.対比および対比の可能性のあるテフラは,ArPはNk-Yt,OiPはNk-Nm,ObはTAu-9,KtPと鹿島沖海底コアTephra20(1)である.広域対比の結果,ArP,TAu-9がMIS 5e前期,OiPがMIS 5e最盛期,KtPがMIS 5d初期に降灰したとみなされる.これによって,木下層剣尺部層の堆積年代がMIS 6~MIS 5e,行方部層がMIS 5d初期であると解釈される.
著者
七山 太 中里 裕臣 大井 信三 中島 礼
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

平成22-25年度に産総研・地質調査総合センターによって5万分の1地質図幅「茂原」の調査が実施された.このポスター発表においては,その試作版を提示し,各位から幅広く意見を徴収する予定である.茂原図幅の区画は,千葉県房総半島中東部に位置し,北緯35°20’ 11.8”-35°30’11.8”,東経140°14’48.2”-140°29’48.1”(世界測地系)の範囲を占める.本地域の全域が千葉県に属し,茂原市,千葉市,市原市,大網白里市,長生郡長南町,同長柄町,一宮町,長生村,いすみ市の各自治体が所轄している.図幅内の地形は大きく丘陵,台地及び低地に区分される.本図幅の西域を占める上総丘陵は,房総丘陵の北東部にあたる.台地は,図幅の北西端部に下総台地が小規模に分布している.両者の間は太平洋に注ぐ一宮川水系と東京湾に注ぐ村田川水系の分水界となっている.また,図幅の南東部には夷隅川水系が小規模に認められる.上総丘陵を構成する地質は下部-中部更新統の上総層群であり,下位から大田代層,梅ヶ瀬層,国本層,柿の木台層,長南層,笠森層および金剛地層に区分されている.本層群は深海-浅海成の泥岩砂岩互層,砂質泥岩,泥質砂層等の半固結堆積物からなり,下位は深海底,上位は陸棚で堆積したと解釈されている.地層は北東-南西方向の走向を持ち,北西方向に0-5°緩く傾斜し,北西に向かって地層が新しくなっている.一方,下総台地にはMIS5eに形成された上位段丘が分布し,下総層群木下層を段丘構成層として,その上位にHk-KlP群の軽石層より上位のテフラ群を挟む下末吉ローム層をのせる.また,木下層の砂層とローム層の間に常総粘土と呼ばれる粘土層が堆積している場合もある.この台地面は,本図幅内では60m前後から130m前後までの高度で分布し,台地の南端部で高く約130mを示し北に行くに従って高度を下げている.