著者
芝山 雄老 松本 和基 大井 玄 中田 勝次 筧 紘一 清水 修 茂在 敏司 榊原 茂樹 佐藤 久夫 小林 茂保
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.208-216, 1983

ヒトβ型インターフェロン(HuIFN-β)投与肝細胞癌の一症例を経験した.症例は62歳男,会社役員.入院時すでに肝右葉全域および左葉の一部に肝細胞癌が認められ,手術不可能と判断し,HuIFN-βの大量投与(筋注総量4,671×10<SUP>4</SUP>IU,静注総量2,866×10<SUP>4</SUP>IU,肝動脈内注入250×10<SUP>4</SUP>IU)が行われた.肝動脈内注入直後一過性にα-Fetoprotein値の低下が認められたが,筋注および静注では著効を示さず,癌は徐々に増大した.病理解剖学的には多核巨細胞化した癌細胞および原形質が泡沫化した癌細胞の出現および癌細胞の壊死に陥る傾向の乏しいことが注目された.これらの所見はHuIFN-β非投与肝細胞癌例にも多少認められるので,HuIFN-β投与による特異的変化であるとは言えないが,それらの程度が著しく高度であったことよりHuIFN-β投与と何らかの関係が存在するのではないかと考えられた.本症例では臨床的にも病理解剖学的にも肝細胞癌に対するHuIFN-βの著しい治療効果は認められなかった.