著者
武井 秀夫
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.135-144, 1993-03-31 (Released:2016-12-01)
被引用文献数
2

Medical anthropological research in the last twenty years has shown clearly that medicine is a cultural system which can be studied in the same manner as kinship, religion, politics, and so forth. In this paper, basic medical anthropological notions about illness experience are presented, and the theoretical development of analytical frameworks for discourse of patients, their family members, and health practitioners is outlined, with additional commentaries by the author, in order to make it clear the relevance of these notions and frameworks for the modern biomedically-oriented medical practice. Fmphasized throughout the paper are the significance of the meaning of illness experience for the patients, and that helping them cope with their suffering is a primary function of medicine.
著者
中牧 弘允 SANTOS Anton MONTEIRO Clo COUTO Fernan ARRUDA Luiz 古谷 嘉章 原 毅彦 武井 秀夫 木村 秀雄 SANTOS A.M.de Souza COUTO F.de la Roque ARRUDA Luiz・
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

アマゾン河流域の開発は、ブラジル西部以西の西アマゾンにおいて、急速に進展しつつあり、本研究は環境問題と社会問題の鍵をにぎる人物として、シャーマン、呪医、民間祈祷師、宣教師などに焦点をあて、実証的な調査をおこなってきた。研究対象とした民族のいくつかは僻遠の地に居住し、そこへの到達は困難を究めたが、短期間ながらも調査ができ、実証的なデータを集めることができた。1.先住民(インディオ)社会(1)サテレマウエ族 日本側とブラジル側とで最初に共同調査をおこない、国立インディオ基金(FUNAI)やカトリック宣教団体の医療活動の概要を把握し、さらにアフ-ダが保護区内で薬草と保健衛生について調べ、中牧も近接する都市部においてシャーマニズムならびに先住民運動に関する聞き取り調査を実施した。(2)クリナ族(マディハ族) 中牧はジュルア保護区のクリナ族(マディハ族)のすべての集落(6カ村)を訪問し、家族・親族、村と家屋の空間的配置、国立インディオ基金(FUNAI)とブラジル・カトリック宣教協議会(CIMI)の活動などについて調査をおこなった。シャーマニズムに関しては治病儀礼、トゥクリメ儀礼、ひとりのシャーマンの事故死をめぐる言説と関係者の対応などについて、データを収集した。自然観については、子供や青年たちに絵を自由に描かせ、かれらの認識や関心のありようをさぐった。また、うわさ話やデマがもとで女たちの間に集団的喧嘩が発生したが、その推移と背景についても調査した。(3)パノ語系インディオ 木村はボリビア、ペル-と国境を接する地域に住むカシナワ族を中心にシャーマニスティックな儀礼の観察をおこない、儀礼歌を収録した。また、非パノ語系クリナ族や「白人」などとの婚姻をとおして進行する複雑な民族融合の実態についても基礎データを収集した。(4)東トゥカノ系インディオ 武井はサンガブリエル・ダ・カショエイラにおいて東トゥカノ系インディオの神話と民間治療師たちの呪文の収録をおこない、ポルトガル語への翻訳の作業をすすめた。その呪文のなかでは、熱の原因としてプラスチック製ないしビニール製の袋に魂がとじこめられることが言及され、近代的な要素も取り込まれていることが判明した。また、呪文自体も昔とくらべ短くなっているいことがわかったが、今では文字を通して暗唱できることがそうした変化の一要因となっていた。(5)カトゥキ-ナ族 古谷はジュタイ川の支流のビア川流域に住むトゥキ-ナ族の集落を調査した。ここではOPAN(カトリック系インディオ支援団体)が教育・医療活動に従事している。カトゥキ-ナ族にはシャーマニズムそれ自体はほとんど見られないが、クリナ族に呪いの除去を依存していることなどが判明した。また、OPANの活動を通じて、FUNAIとは異なる接触・支援のしかたについても、情報が入手できた。(6)マティス族、カナマリ族、マヨルナ族、クルボ族 アフ-ダはジャヴァリ川流域の諸民族について民族薬学的調査を実施し、マティス族においてはシャーマンがほとんど死亡したという情報を得た。(7)カンパ族 コウトはペル-国境のカンパ族の幻覚性飲料の使用実態、ならびにシャーマンとの聞き取り調査をおこなった。2.非先住民社会(先住民およびその子孫を一部含む)(1)アマゾン河本流域 原はタバチンガ、レティシアにおいて複雑な民族構成とをる社会の民間呪術師を調査対象とし、ジャガ-やアナコンダ(大蛇)のような先住民的表象と、イルカのようにカボクロ(混血住民)のこのむ表象との混合形態をあきらかにした。さらに上流のイキトスにおいても予備的調査をおこなった。(2)ネグロ川流域 サントスはネグロ川流域の住民が利用する薬用植物、とくにサラクラミラについての研究をすすめた。(3)ジュルア川上流域、プルス川上流域 モンテイロはクルゼイロ・ド・スルを中心に幻覚性飲料の摂取をともなうシャーマニスティックな民間習俗について調査し、コウトも幻覚性飲料(サントダイミ)をつかう宗教共同体において、その生活文化ならびに環境保護運動について調査を実施した。日本側研究者も幻覚性飲料を儀礼的に使用するいくつかの集団を訪問し、最新の動向についての情報を入手した。以上の調査をふまえ、サントスを日本に招聘し、ブラジルのCNPq(国立研究評議会)への報告書作成、ならびにポルトガル語による研究成果報告書の作成にむけての打ち合わせをおこなった。
著者
武井 秀夫 北森 絵理 ANDRES Felipe Ramirez MARIA Teresa Ramirez SAMUEL Melinao GREGORIO Perez EDUARDO Sarue 工藤 由美 内藤 順子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

途上国の対社会的弱者政策は標準化されたものになりつつあるが、各国の固有の歴史を背景に、そうした政策が社会的弱者に与える影響は異なってくる。本研究では、チリ、パナマ、ブラジルの大都市に居住する先住民、障害者、貧困層について調査を行った。過去の強制を伴う政策は人々に今も負の影響を及ぼし続けているが、現在の政策を利用して集団的としての力を強めている集団もあり、そうした集団では自己組織化を可能とする基盤の存在が重要な役割を果たしていた。

1 0 0 0 IR ケアを考える

著者
武井 秀夫 タケイ ヒデオ TAKEI Hideo
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-17, 2009-09

本稿はケアという現象を民族誌的に記述するとはどういうことなのか、という問いから生まれたものである。社会学領域でのケア研究に比し、文化人類学領域ではケアという現象への関心は最近になって形を成したものであり、また、文化人類学的なアプローチがどのような貢献をケア研究になしえるのかを考える上でも、この問いに答える必要があったからである。先行研究におけるケアのとらえ方には、ケアを行為に重点をおいて捉えようとするものと、ケアの関係性に重点をおいて捉えようとするものがあるが、それらは研究の場に存在する問題群に拘束されていると考えられ、またそうした場の既存の関係性を前提としているために、ケアの生成に焦点をあてるものはなかった。最終節では、むしろケアの生成を見ていくことで開かれる見通しを提示した。