著者
深井 喜代子 新見 明子 大倉 美穂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.285-291, 2000

患者側から看護者を評価する心理社会的尺度, 対象一看護者関係評価尺度(Client-NurseRelationshipScale, CNRS)を新たに開発した.まず, 既成の文献と観察法から138の項目を抽出し, 表面妥当性と重複の有無を検討して52項目の初版CNRSを作成した.初版CNRSでは某有名タレントを288名の学生に評価させた.初版の再テスト法による信頼性係数は0.93(p<0.01), Cronbachα係数は0.89であった.ついで初版から因子負荷量の低い項目を除外して31項目の改訂版CNRSを作成し, 看護学生に理想の看護者を評価させた.因子分析の結果, 初版, 改訂版ともに「人間的信頼感」「専門性」「威圧感」の3因子が抽出された.改訂版による調査結果の因子分析から項目をさらに厳選し, 最終的に24項目からなる完成版を作った.完成版CNRSは患者一看護者関係だけでなく友人関係や学生一教師関係なども評価できる信頼性と妥当性の高い対人関係評価尺度であることが示された.
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。