著者
深井 喜代子 小野 和美 田中 美穂 關戸 啓子 新見 明子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.125-135, 1997
被引用文献数
1

人間関係が異なる複数の被験者群において, 痛みの感受性と痛み反応, 看護ケアの鎮痛効果がどのように相違するか, またそれらに性差はあるかを検討した.被験者は健康な大学生30名で, 実験者と既知の女子7名(A群), 初対面の女子12名(B群), 初対面の男子11名(C群)の3群に分けられた.ベッド臥床した被験者の心電図, 局所発汗量, 皮膚温を測定した.看護ケアとして温罨法, 冷罨法, マッサージ, 音楽療法, 会話に代わるものとしての連想ゲームの5種類を用いた.VisualAnalogueScale(VAS)で70〜80の強さに電圧を固定して電気刺激を行い, 実験中痛みをVASで表現させた.その結果, 耐痛閾値は男性が高いこと, 痛みの評価と痛み反応は男性においてのみ皮下脂肪率と関係すること, さらに, ケア毎の鎮痛効果は対人関係の程度に関係することが明らかになった.
著者
深井 喜代子 大名門 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_39-3_46, 1992-07-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
26

88名の健康な学生(男27名,女61名,18-37才)を被験者として,注射針刺入部としてよく選択されている三角筋,前肘,手背各部の皮膚痛覚閾値を,タングステン製(直径140μm)の刺激毛を用いて痛点分布密度を測定する方法で調べた。その結果,三つの皮膚領域とも,痛点分布密度(prick painとdull painの総数)は男性より女性の方が有意に大きかった(平均痛点数:男,7.6-11.0/4mm2,女,10.2-12.2/4mm2)。部位別では,手背部(男,7.6±4.7/4mm2,女,10.2±4.2/4mm2),三角筋部(男,9.1±5.0/4mm2,女,10.7±4.4/4mm2),前肘部(男,11.0±4.1/4mm2,女,12.1±3.3/4mm2)の順で痛点分布密度が小さかった。この傾向は注射針刺入時の鋭い痛みに相当するprick painのみの分布に着目しても同様であった。このような痛覚閾値の部位差,性差について考察した。本実験の結果から,看護者は,健康な青年層では,女性は男性より痛覚閾値が低いこと,そして手背部の閾値は比較的高いことを考察して注射や採血を行うべきであると結論した。
著者
"關戸 啓子 深井 喜代子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-80, 2004
被引用文献数
3

"欠食による空腹が,疲労の自覚症状に及ぼす影響を把握するために看護学生にアンケート調査を実施した.疲労の自覚症状調査は,午前中の授業の形式が,講義のみの日,演習(講義と実習)の日,実習のみの日を選んで,3日間実施した.調査用紙は58人に配付し,53人から提出があった.有効回答数は51(有効回答率96.2%)であった.調査の結果,講義のみの日に朝食を摂取していた学生は42人で,「あくびがでる」「眠い」「目がつかれる」「横になりたい」「頭がぼんやりする」「全身がだるい」という6項目において,授業後有意(p<0.05)に自覚症状が増強していた.朝食を摂取していなかった9人には,授業後増強した自覚症状はなかった.演習の日に,朝食を摂取していた学生は40人で,授業後増強した自覚症状はなかった.朝食を摂取していなかった11人にも,授業後増強した自覚症状はなかった.実習のみの日に,朝食を摂取していた学生は38人で,授業後「目がつかれる」という自覚症状のみが増強傾向を示した.朝食を摂取していなかった13人には,授業後「気がちる」「いらいらする」という自覚症状に増強傾向がみられた.学生が朝食を摂取している場合には,長時間座って講義を聞いている方が苦痛を感じており,自覚症状が増強していた.しかし,朝食を摂取していない場合には,よりエネルギーを消費する実習の授業の時に空腹の影響がみられ,精神的に授業に集中できなくなっている様子が示唆された."
著者
棚﨑 由紀子 深井 喜代子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.124-134, 2016-08-20 (Released:2016-09-30)
参考文献数
37

本研究の目的は, 冷え症の女性高齢者に対するフットマッサージの冷え症状の緩和ケア技術としての有用性を, 生理的 ・ 主観的指標によって検討することである. 被験者は冷え高齢者25名 (73.4±5.4歳) と対照としての健康高齢者27名 (71.3±4.3歳) とし, 無作為化によらない2群比較を行う準実験研究デザインで行った. フットマッサージは足部から下腿部を20分間, 両手掌で軽擦して行った. その効果を皮膚温, 血流量, 心拍変動等の生理指標とPOMS短縮版, 下肢の温かさの主観的指標により評価した. その結果, 両群ともに皮膚温, 血流量は介入前と比べて有意に上昇し, 心拍数は低下した. また, 右足への介入後に血圧は有意に低下し, HFは上昇, LF/HFは低下した (P<0.05). さらに, 両群の下肢の温かさの自覚も有意に増した (P<0.05). 以上のことから, 冷え高齢者に対するフットマッサージは, 冷え症状を緩和するケア技法として有用であることが示唆された.
著者
深井 喜代子 黒田 裕子 山下 裕美 池田 理恵
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.193-197, 2001-08-25

看護行為によって発生する音を実験室で再現し, それを聴いた被験者がどのような生体反応を示すのかを検討した.承諾の得られた健康な女性被験 : 者10名に, 「タオルを絞る音」「看護者の足音」「聴診器の音」「椅子を床に置く音」「椅子を引きずる音」「ドアノックの音」「吸引音」「ブラインドの開閉音」の8種類を聴かせ, 心電図, 血圧, 局所発汗量を連続記録した.その結果, 背景音であるチャイムの音では局所発汗量はほとんど変化しなかったが, 6種類の音で5例以上に発汗増加反応を認めた.また, 6種類の音で最高血圧が有意に上昇した.さらに8種類すべての音に対する一過性の交感神経活性の高まりが全例で確認された.これらの結果から, 看護行為によって生じる音は生体に一過性のストレス様反応を引き起こすことが明らかになった.
著者
"關戸 啓子 深井 喜代子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-80, 2004
被引用文献数
3

"欠食による空腹が,疲労の自覚症状に及ぼす影響を把握するために看護学生にアンケート調査を実施した.疲労の自覚症状調査は,午前中の授業の形式が,講義のみの日,演習(講義と実習)の日,実習のみの日を選んで,3日間実施した.調査用紙は58人に配付し,53人から提出があった.有効回答数は51(有効回答率96.2%)であった.調査の結果,講義のみの日に朝食を摂取していた学生は42人で,「あくびがでる」「眠い」「目がつかれる」「横になりたい」「頭がぼんやりする」「全身がだるい」という6項目において,授業後有意(p<0.05)に自覚症状が増強していた.朝食を摂取していなかった9人には,授業後増強した自覚症状はなかった.演習の日に,朝食を摂取していた学生は40人で,授業後増強した自覚症状はなかった.朝食を摂取していなかった11人にも,授業後増強した自覚症状はなかった.実習のみの日に,朝食を摂取していた学生は38人で,授業後「目がつかれる」という自覚症状のみが増強傾向を示した.朝食を摂取していなかった13人には,授業後「気がちる」「いらいらする」という自覚症状に増強傾向がみられた.学生が朝食を摂取している場合には,長時間座って講義を聞いている方が苦痛を感じており,自覚症状が増強していた.しかし,朝食を摂取していない場合には,よりエネルギーを消費する実習の授業の時に空腹の影響がみられ,精神的に授業に集中できなくなっている様子が示唆された."
著者
深井 喜代子 大名門 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.3_47-3_55, 1992

注射や採血などの針刺し時に生じる痛み(注射痛)を訴える患者に対処するために,三種類の看護的除痛技術実施中に,手背部痛点分布密度がどのように変化するかを調べた。被験者には88人の健康な学生(男27人,女61人,18-37才)を選んだ。痛点はタングステン製の刺激毛(直径140μm)を用いて測定した。反対側の手背マッサージにより,男の48.1%,女の60.7%で痛点数が減0少したが,男の48.1%,女の32.7%で逆に増加した。同側手背の蒸しタオルによる温罨法では,痛点は著しく減少し(男77.8%,女85.2%),氷嚢と冷やしたタオルによる冷罨法では,効果は更に大きかった(男85.2%,女91.8%)。以上の結果から罨法は注射痛に有効であること,またマッサージも一部の例では効果的であることが明らかになった。更にこのような看護的除痛のメカニズムについても考察した。
著者
深井 喜代子 新見 明子 大倉 美穂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.285-291, 2000

患者側から看護者を評価する心理社会的尺度, 対象一看護者関係評価尺度(Client-NurseRelationshipScale, CNRS)を新たに開発した.まず, 既成の文献と観察法から138の項目を抽出し, 表面妥当性と重複の有無を検討して52項目の初版CNRSを作成した.初版CNRSでは某有名タレントを288名の学生に評価させた.初版の再テスト法による信頼性係数は0.93(p<0.01), Cronbachα係数は0.89であった.ついで初版から因子負荷量の低い項目を除外して31項目の改訂版CNRSを作成し, 看護学生に理想の看護者を評価させた.因子分析の結果, 初版, 改訂版ともに「人間的信頼感」「専門性」「威圧感」の3因子が抽出された.改訂版による調査結果の因子分析から項目をさらに厳選し, 最終的に24項目からなる完成版を作った.完成版CNRSは患者一看護者関係だけでなく友人関係や学生一教師関係なども評価できる信頼性と妥当性の高い対人関係評価尺度であることが示された.
著者
松村 千鶴 深井 喜代子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.243-246, 2014-12-20 (Released:2016-06-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究の目的は,感染予防の観点から綿タオルと化繊タオルのどちらが清拭素材に適しているかを比較することである.タオル素材には,市販の使用前の綿タオル (未使用綿タオル),清拭で使用したあとに洗浄・消毒した綿タオル (再生綿タオル),市販の未使用の化繊タオル (湿性不織布),そして湿性不織布から水分と含有成分を除去した化繊タオル (乾燥不織布) の4種類を選んだ.これら4素材の一般生菌,大腸菌,黄色ブドウ球菌の生存数を,ペトリフィルム法を用いて調べた.その結果,一般生菌は,湿性および乾燥不織布ではほぼ陰性であったが,未使用綿タオルからは約260cfu/100cm2 (衛生上問題なし),再生綿タオルからは未使用時の10倍もの約2,360cfu/100cm2がそれぞれ検出された.一方,大腸菌と黄色ブドウ球菌は4素材いずれからも検出されなかった.本研究の結果から,わが国の臨床の場で多用されている再生綿タオルには感染予防上,無視できない量の一般生菌が棲息する可能性が示唆された.未使用・再生にかかわらず綿タオルに一般生菌が検出されたことから,再生綿タオルは感染予防の観点から安全な清拭素材でないことが明らかとなった.
著者
深井 喜代子 阪本 みどり 田中 美穂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.99-106, 1996
被引用文献数
5

水の経口摂取や運動, 温罨法が揚音に及ぼす影響を, 健康女性20名(28.9±6.9歳)を被験者に検討した.被験者を仰臥位にし, 下行結腸下部付近の皮膚にマイクロフォンを装着して心音計で揚音を増幅し, スパイクカウンターを介して揚音波形の1分間当たりの出現頻度を計測した.また, 腹部皮膚温も記録した.7℃, 500mlの冷水を経口摂取させると, 摂取後30分間は揚音出現頻度が有意に増加した.階段昇降を含む10分間の歩行をさせた結果, その後45分間は揚音は有意に増加した.温枕貼用, 又は電気毛布による腹部温罨法では, 後者の揚音増加効果がより著明であった.また, 各刺激中, ほとんどの被験者が揚音亢進時に腸蠕動を自覚していた.以上の結果から, 水又は運動負荷と腹部温刺激は揚音出現頻度を増加させ, 腸蠕動を亢進させうることが確認された.
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。
著者
岡田 淳子 深井 喜代子 オカダ ジュンコ フカイ キヨコ
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
日本赤十字広島看護大学紀要 (ISSN:13465945)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-27, 2006

本研究の目的は、入院患者の手指汚染の実態を明らかにし、効果的な手指清潔ケアの方法を検討することである。研究対象は活動制限のある患者9名(活動制限群)と制限のない患者7名(自立群)とした。患者の生活時間を睡眠、午前、昼食、午後の4つに区分し、各区分開始前に手指消毒を実施し、区分終了時点の起床時、11時、昼食後、16時の計4回、手型寒天培地に患者の手掌付着菌を採取した。検体は37℃で24時間培養し、細菌コロニー数と菌種を調べた。その結果、活動制限群5名と自立群4名から黄色ブドウ球菌が検出された。両群とも起床時と昼食後にコロニー数が有意に増加していた。また、全区分において自立群より活動制限群の方が手指汚染の程度が高い傾向にあった。以上のことから、入院患者の手指清潔を強化する必要のあること(特に昼食後)、また、ベッド上生活で自ら手洗いができない活動制限のある患者の効果的な手指清潔ケアの方法を今後検討していく必要のあることが示唆された。