著者
松田 常美 竹村 茂一 大場 一輝 上西 崇弘 小川 雅生 市川 剛 高台 真太郎 新川 寛二 田中 宏 久保 正二
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.141-146, 2009-02-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
12

はじめに:肝切除施行例における腹腔ドレーンの管理法について検討した.対象と方法:肝切除術中に閉鎖式ドレーンが留置された104例を術後4日目以内腹腔ドレーン抜去72例(短期間留置群)と術後5日目以降抜去32例(長期間留置群)に分類し,ドレーン留置期間延長の要因や術後合併症の観点から肝切除術における適切な腹腔ドレーン抜去時期について検討した.なお,腹腔ドレーンは胆汁混入がみられない(総ビリルビン値5 mg/dL未満)場合,抜去した.結果:腹腔ドレーン長期間留置に関わる因子は,単変量解析によると腫瘍径(大型腫瘍),1区域以上切除,手術時間,術中出血量,術後4日目のドレーン排液量(200 mL以上)で,多変量解析によると手術時間,術中出血量およびドレーン排液量が独立因子であった.胆汁漏は短期間留置群の2例にみられ,そのうち1例に腹腔内感染が発症した.創感染は両群のそれぞれ1例に,難治性胸腹水は短期間留置群の2例にみられたが,両群のそれら術後合併症の頻度に差はみられなかった.まとめ:肝切除例において,手術時間,術中出血量および術後4日目のドレーン排液量が腹腔ドレーン長期留置に関わる独立した因子であった.胆汁混入がみられない場合,腹腔ドレーンの術後4日目以内抜去は妥当であると考えられた.
著者
首藤 太一 広橋 一裕 久保 正二 田中 宏 山本 隆嗣 竹村 茂一 大場 一輝 上西 崇弘 井上 清俊 木下 博明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1387-1394, 2001-09-01
被引用文献数
3

肝細胞癌(肝癌)切除後の他臓器転移(Distant metastasis:DM)例が増加し, 対応に苦慮することも多い.今回DM例の再発後生存率(R-SR)に関与する臨床病理学的因子の解析を行い, DM例に対する治療のあり方を検討した.対象と方法:1999年12月までの10年間に教室で初回肝切除の施された肝癌386例中227例が再発した.このうちDM例は61例(27%)であったが, DM例のR-SRに関与する臨床病理学的因子の単変量, 多変量解析を行った.結果:残肝単独再発166例およびDM例の再発後1, 3, 5年生存率はそれぞれ77, 48, 19%および61, 31, 15%(p=0.0042)であった.DM61例中43例に残肝再発が併存したが, DMの内訳は骨28例, 肺20例, リンパ節11例, 脳7例, 副腎7例, 胸腹壁4例, 腹膜3例であった.今回検討した因子中単変量解析でR-SRに関与する因子は初回肝切除時AFP陰性(n=39), Stage III以下(n=53), 再発時若齢(n=32), 残肝再発治療(n=34), DM巣切除(n=14)の5因子であった.多変量解析ではstage III以下, 残肝再発治療, DM巣切除が独立因子であり, 再発時肝機能因子や初回治療因子は関与しなかった.結語:DM例のR-SRは不良であるが, 残肝再発が治療可能な場合にはDM巣切除がR-SR向上に関与する可能性があるため, 切除も含めた他臓器転移の治療を継続すべきであると思われた.