著者
辻内 琢也 扇原 淳 桂川 泰典 小島 隆矢 金 智慧 平田 修三 多賀 努 増田 和高 岩垣 穂大 日高 友郎 明戸 隆浩 根ケ山 光一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「帰還か移住か避難継続か」の選択を迫られる原発事故被災者が、今後数年間で安心して生活できる新たな居住環境をどのように構築していくのか、現状と問題点を明らかにし、「居住福祉」に資する心理社会的ケアの戦略を人間科学的学融合研究にて提言していくことにある。「居住は基本的人権である」と言われるように、被災者が安心・安全に生活できる基盤を構築するためには、内科学・心身医学・公衆衛生学・臨床心理学・発達行動学・社会学・社会福祉学・平和学・建築学・環境科学といった学融合的な調査研究が欠かせない。応募者らは2011年発災当時から被災者支援を目指した研究を継続させており、本課題にてさらに発展を目指す。
著者
桂川 泰典 松葉 百合香 飯島 有哉 千葉 一輝 原田 陸
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.148-158, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
32

COVID-19の世界的流行にともない,VCP (videoconferencing psychotherapy)が急速に普及しているが,日本におけるVCPの利用実態に関する研究知見は限られている。また,VCPにおけるドロップアウト要因の検討は不十分であり,特にドロップアウトリスクの高まる面接初期に関する研究はなされていない。本研究では,民間企業において実施されたVCPデータ(4,921–3,470名)を用いて,利用実態の記述を行うとともに,1–2回目のセッション間のドロップアウト/継続を予測する説明変数の探索を目的として階層的ロジスティック回帰分析を行った。その結果,セラピストの臨床経験年数が長いと継続しやすい傾向,クライエントがカウンセリングセッション終了時に「効果を実感」すると継続しにくく,カウンセリングに対する「効果の予感」を感じると継続しやすい傾向が示された。
著者
桂川 泰典 国里 愛彦 菅野 純 佐々木 和義
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-76, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
8

The present study developed a Japanese version of the Session Evaluation Questionnaire (J-SEQ), which was translated from the original version of the SEQ (Form 5), and examined its reliability and validity. The respondents were 103 counselors. Exploratory factor analysis (maximum likelihood estimation with varimax-rotation) and confirmatory factor analysis were used to examine the factorial structure of the J-SEQ. The results showed that the J-SEQ had substantial reliability (Cronbach's alpha) and factorial validity. The factorial structure, response tendencies, and the correlations of factors of the J-SEQ were consistent with the original SEQ (Form 5).
著者
元木 咲葵 桂川 泰典 飯島 有哉
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.42-52, 2023-06-07 (Released:2023-06-07)
参考文献数
33

近年,不登校の中でも「無気力型不登校」の生徒数が増加傾向にある。無気力型不登校は,葛藤を抱える情緒混乱型不登校とは区別されており,無気力の近接概念である「アパシー」の状態像を含むものであると予想される。本研究では,無気力型不登校へと至る生徒の心理的な状態像を捉えることを目的とした測定指標として,中学生におけるアパシー傾向を測定する尺度を作成し,登校回避行動および出欠席状況との関連から妥当性の検討を行った。その結果,研究1では「気力の低下」「他者への同化」「対人交流の回避」「将来展望のなさ」の4因子から成るアパシー傾向尺度が作成され,信頼性および収束的妥当性が確認された。研究2では,交差妥当性および基準関連妥当性(併存的妥当性,予測的妥当性)が確認された。以上より,無気力型不登校の前駆状態を説明する概念としてアパシーを用いる有効性が示された。
著者
中齋 美咲 大月 友 桂川 泰典
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.181-190, 2017-09-30 (Released:2017-10-31)
参考文献数
18

Acceptance and Commitment Therapy(ACT)では心理的柔軟性が精神健康の向上に重要だとされるが、ACTの基盤となる関係フレーム理論(RFT)の観点からこれを支持した実証研究は少ない。そこで本研究はルール制御下の行動変動性に着目し、ACTの心理的柔軟性モデルをRFTの観点から検討することを目的とした。実験参加者に質問紙と行動変動性測定用コンピュータ課題を実施した。分析対象者19名のデータで相関分析と階層的重回帰分析を行った結果、AAQ-IIと行動変動性指標間の相関が弱い一方で、AAQ-IIおよび行動変動性指標はそれぞれGHQ-60と相関がありGHQ-60を予測、説明できる可能性が示された。したがってルール制御下の行動変動性はAAQ-IIと異なり心理的柔軟性の一要素を測定する指標となりうる可能性が考えられ、ACTの心理的柔軟性モデルはRFTの観点から支持されると示唆された。
著者
飯島 有哉 上村 碧 桂川 泰典 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-114, 2021-03-15 (Released:2021-03-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study (1) developed the Japanese version of the Inventory of Statements About Self-injury (ISAS), a tool for assessing the functions of nonsuicidal self-injury (NSSI), and (2) classified NSSI in adolescents based on its functions. We administered a questionnaire to a community sample and gathered 592 responses, including those of 267 undergraduates who had experienced NSSI. The results of factor analysis indicated that the Japanese version of the ISAS was different from the original and was composed of three factors: “Distress coping functions,” “Interpersonal influence functions,” and “Identity maintenance functions.” Cluster analysis of the Japanese version of the ISAS scores indicated four clusters: “Habitual cluster,” “Distress coping cluster,” “Overlapped identity maintenance cluster,” and “Overlapped interpersonal influence cluster.” Each cluster’s clinical features indicated that the more the functions overlapped, the more severe were risks of suicide, anxiety, and depression. These results indicated that the significance of NSSI functions’ assessment was related to their overlap. These results suggested the usefulness of the functional approach to treatment.
著者
飯島 有哉 山田 達人 桂川 泰典
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.388-400, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
39
被引用文献数
3

本研究は,教師の生徒に対する賞賛行動が,生徒の学校生活享受感情および教師自身のワーク・エンゲイジメント(WE)に与える効果とそのプロセスについて検討することを目的とした。公立中学校教師4名に4週間の賞賛行動の自己記録を依頼し,介入に伴う生徒267名および教師自身の変化を測定した。生徒に対する質問紙調査および教師に対する生徒の学校生活の様子に関するインタビュー調査の分析結果から,教師の賞賛行動に伴うほめられ経験の増加がみられた学級において生徒の学校生活享受感情の向上が認められた。教師自身においては,単一事例実験法による検討およびインタビューデータの分析結果から,賞賛行動の増加に伴うWEの向上が認められ,その変化プロセスとして,賞賛行動の実行に伴う【効果の体験】が直接的に【WEの向上】に結びつくものと,【生徒認知の変化】を介するものの2種類のプロセスが見出された。本研究の結果から,教師の賞賛行動が生徒および教師双方の学校適応の促進に寄与することが示され,その効果プロセスにおける相互作用性および,教師の主観的な賞賛行動と生徒のほめられ経験の一致の重要性が考察された。